第4回:これぞ紳士の国の乗り物
輸入車チョイ乗りリポート~イギリス編~(その1)
2018.03.12
JAIA輸入車試乗会2018
出展ブランドの多さもあってか、今年のJAIA取材で最も試乗台数が多かったのが“みんな大好き”英国のクルマである。まずはMINIの「クラブマン」と「クロスオーバー」、「ロータス・エリーゼ」「レンジローバー イヴォーク コンバーチブル」の魅力をリポートする。
華と色にあふれたワゴン
MINIクーパーSクラブマンALL4……430万円
家族は妻と、子どもが2人。ありふれたフツーのクルマじゃ、ちょっと寂しい。かといって、あまり目立ちすぎるのも嫌だ。たまにクルマで遠出もするから、荷室の広さはそこそこ欲しい。
内装は、地味ぃ~じゃないほうがいいな。特にメーターとかシートとか照明とか、華のある感じだとうれしい。ボディーカラーなんかも、多くの中から選びたい。
運転するのは好きなので、乗り心地は多少硬くてもいいから、キビキビと動くのがいい。思い通りに走らせたいから、パワーやトルクも大事。家族が一緒のときは飛ばさないけど、たまにはひとりで、運転そのものを楽しみたい。
駐車場の関係で、全高1550mm以下のクルマじゃないと選べない。あと、冬はスノボに行くので、四駆がいいかな。
そんな(注文の多い)ヒトが選ぶべきMINIが、「MINIクーパーSクラブマンALL4」である。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4270×1800×1470mmで、ホイールベースは2670mm。前席も後席も荷室も、スペースにはゆとりがある。参考までに、「ゴルフGTI」の3サイズが4275×1800×1470mmで、ホイールベースが2635mmだから、ほとんど同じ。7代目でようやく(?)ここまで拡大したゴルフに、2代目にして肩を並べたのだから、大型化のスピードはすさまじい。
エクステリアでは、観音開きのリアドアと前後に長~いルーフが、好きモノにはたまらない。リアから見ると、MINIとしては珍しい横長のライトが、ボディーをロー&ワイドに見せている。
インテリアでは、センターディスプレイの存在感がすごい。往年のセンターメーター風の円形で、その周囲が赤や青や緑や紫や……とにかくいろんな色に妖しく光る。キャラの濃さは抜群だ! シートの位置は低めで、ドライビングポジションはスポーティーに決まる。これぞゴーカートフィーリング!(って今でも言うんですかね?)
2リッター直4ターボエンジンは最高出力192ps、最大トルク280Nmというスペック。驚くほどのパワーではないけど、1550kgのボディーを機敏に走らせる。四駆システム「ALL4」は、山坂道などでのスポーツ走行や、雪道でのドライブにも効果を発揮する。
運転好き、MINI好きのためのワゴンの価格は、オプション込みで561万3000円。問題があるとすれば、ここですかね。
(文=webCG こんどー/写真=峰 昌宏)
気分は500円玉貯金!?
MINIクーパーS EクロスオーバーALL4……479万円
「MINIクーパーS EクロスオーバーALL4」は、1.5リッターガソリンターボエンジンと走行用のモーターを備えた、MINI初のプラグインハイブリッド車である。走行用バッテリーの容量は7.6kWhで、「日産リーフ」(40kWh)の5分の1ほど。一充電での走行可能距離は42.4km(JC08モード)なので、(実走行だと)すぐに底をつく。試乗を開始したときは残量が30%ほどだったのだが、6~7kmほど走ったらバッテリーのみでの走行可能距離が0kmと表示された。
器が小さいからすぐになくなるわけだが、逆もまた真(しん)なり。バッテリーを充電しながら走行する「SAVE BATTERY」モードを使っていると、10%……20%……と、わりとすぐ(5分とかでは無理ですが)に電気がたまっていく。
この“使ってためて”が楽しい。信号待ちで停止するたびに、メーターパネルでバッテリー残量を確認してしまう。オーナーだったらどうだろうか。「スーパーマーケットまでの往路で電気をためて、復路はどこまでバッテリーだけで走れるか試す」とか、小さな目標を立てることで、メリハリのあるドライブを楽しめると思う。どこか“500円玉貯金”のようだ。
このクルマは、モーターのみで走っているときと、エンジンがかかっているときの音の差がとても小さい。試乗中も、エンジンが始動したことがほとんど分からなかった。「ピレリPゼロ」のタイヤノイズがエンジン音をかき消してくれる(?)のだ。もしも“そういう風につくっている”としたら、目からウロコの発想だと思う。
(文=webCG 藤沢/写真=峰 昌宏)
お金をかけて、よりロータスらしく
ロータス・エリーゼ スプリント220……745万2000円
2018年モデルのロータス車は、「LESS MASS MEANS MORE LOTUS」というテーマのもと、原点回帰ともいえる軽量化が図られている。
エリーゼでは、ベースグレードがエアコンやオーディオなどを徹底的に剝ぎ取ることで軽く仕上げられたのに対し、今回の「スプリント220」は、カーボンファイバー製バケットシートやエンジンフード、鍛造アルミホイール、ポリカーボネート製リアウィンドウなどの軽量素材を多用、つまり“お金をかける”ことで、従来の「スポーツ220」より26kgも軽い878kgの車両重量を実現している。
エリーゼ スプリント220に乗り込んでまず驚くのが、内部構造丸見えのギアレバーだ。軽量化への貢献は微々たるものかもしれないが、気分をアゲる効果はかなりのもので、「アバルト695ビポスト」の完全むき出しドグミッション並みのインパクトだった。それ以外の見晴らしは、従来のエリーゼと変わらない。足を前に投げ出して小径のステアリングホイールを握れば、自然と気持ちが高ぶってくる。
エリーゼでいつも好印象なのは、澄み切ったステアリングフィールだ。ノンパワーなので据え切りでこそ少し手応えを感じるけれど、タイヤひと転がりでスッと重さは消え去って、路面の感覚をリアルに手のひらに伝えてくる。
エンジンは、おなじみのトヨタ製1.8リッター直4+スーパーチャージャー。最高出力220ps、最大トルク250Nmを生み出す。軽量な車体にはもちろん十分なアウトプットで、望んだときに望んだだけの加速を得ることができる。タイヤが巻き上げる小石だけでなく、車内のあちこちからもガチャガチャ音がして、運転中は常ににぎやかだけど、剛性感あふれるシャシーとよく動くサスペンションのおかげで、乗り心地は望外に快適だ。キツめの目地段差をターン、ターンと乗り越えていくその走りは、波を切って走るモーターボートのようでもある。
エリーゼは、まぁ言ってみれば、楽しく走れる以外には何の能もないクルマ。けれどいまどき、安全で実用的で、快適なクルマなんて、そこら中にあるわけで……。ここから先も自動運転にカーシェアリングなどなど、そんなクルマが増える一方。
そろそろ買いどきじゃないですか?
(文=webCG こんどー/写真=田村 弥)
ナンバーワンよりオンリーワン
ランドローバー・レンジローバー イヴォーク コンバーチブルHSEダイナミック(ディーゼル)……788万円
平昌五輪、過去最多となる13個のメダル獲得おめでとう! ということで(?)、レンジローバー イヴォーク コンバーチブルは、毎日が祝賀パレードみたいなクルマである。
とにかく目立つ。特に今回の試乗車は、コンバーチブル専用色の「フェニックスオレンジ」で、その華やかさがまた人目を引く。ちなみに、外板色は12色から、内装は7種類から選ぶことができる。オープンカーではインテリアもエクステリアの一部といえるわけで、オーナーにとってはセンスの見せ所でもある。
そんなイヴォーク コンバーチブルに、待望のディーゼルモデルが加わった。ジャガー・ランドローバーの誇るインジニウム2リッター直4ターボディーゼルユニット(最高出力180ps、最大トルク430Nm)が搭載される。ディーゼルとはいっても、回転の上昇がスムーズで、スポーティーな印象のエンジンだ。
乗って感激したのは、眺めがいいこと。オープンカーなので開放感があるのは当たり前だけど、「ロータス・エリーゼ」のように低いところから見上げるのと、このクルマのように高い着座位置から見下ろすのとでは、その景色がまったく違う。これぞコマンドポジション(って今でも言うんですかね?)って感じで、なんとも気分がいい。周りの人やクルマから、車内をのぞき込まれる感じにならないのも、またいい。
屋根を下ろしていても、サイドウィンドウさえ上げておけば70km/hくらいまでは実に快適。風の巻き込みも、そよ風程度だ。ただし、後席の乗員は40km/hくらいが限界だろう。
……とか書いてて言うのもなんですが、“屋根の開くSUV”を選ぶのに、客観的な情報って要りますかね?
イヴォーク コンバーチブルは、「この存在感とオリジナリティーの高さは何物にも代え難い。これぞプレミアム!」ってポンとハンコ押せるヒト、だけのためのクルマです。
(文=webCG こんどー/写真=田村 弥)

webCG 編集部
1962年創刊の自動車専門誌『CAR GRAPHIC』のインターネットサイトとして、1998年6月にオープンした『webCG』。ニューモデル情報はもちろん、プロフェッショナルによる試乗記やクルマにまつわる読み物など、クルマ好きに向けて日々情報を発信中です。
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