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ジャガーFタイプ400スポーツ クーペ(FR/8AT)

逆境に映える 2018.03.28 試乗記 下野 康史 「Fペース」に「Eペース」、さらには発売が待たれる電気自動車の「Iペース」と、いよいよもって充実してきたジャガーのSUVラインナップ。この潮流の中における、ピュアスポーツカー「Fタイプ」の“立ち位置”とは? 2018年限定グレードに試乗した。

ボディーの内外を飾る「400」のロゴ

ガレージに出る階段を下りて引き戸を開けると、Fタイプがお尻を見せて止まっていた。巨大な手でギュッとしぼり上げたようなこのリアスタイル、いつ見てもほれぼれする。

特徴的な細いリアランプの下に「400」という黄色いエンブレムが見える。試乗車は「400スポーツ」。3リッターV6スーパーチャージドエンジンの最高出力を400psに高めた2018年限定モデルだという。ひとめでわかる外観上の違いは、すごみのあるつや消しグレーの5スポーク20インチホイールである。

リモコンキーの解錠ボタンを押すと、ドアハンドルがポップアウトする。Fタイプの“見もの”のひとつだ。ドアを閉めて走りだせば、自動的に引っ込む。山型に出っ張ったハンドルを無理に押し込もうとすると、「やめて!」というかわりにクラクションが小さく鳴る。

ドアを開けたサイドシルには、「400 SPORT」と刻まれたアルミプレートが貼られている。ステアリングホイールのボトムにも黄色い400の数字が入る。内装やシートを覆うレザーの黄色いステッチも専用装備だ。そうやってちょいちょい自己主張してくる期間限定3リッターFタイプの価格は、この2WDモデルで1291万円。ひとつ下の380ps版「R-DYNAMIC」より167万円高い。

「ジャガーFタイプ400スポーツ」は、2018年限定で販売されるスペシャルグレード。特別な400psバージョンの3リッターV6スーパーチャージドエンジンを搭載するほか、内外装に多くの専用装備をまとっているのが特徴だ。
「ジャガーFタイプ400スポーツ」は、2018年限定で販売されるスペシャルグレード。特別な400psバージョンの3リッターV6スーパーチャージドエンジンを搭載するほか、内外装に多くの専用装備をまとっているのが特徴だ。拡大
リアをギュッとしぼり込んだスタイルとしたため、ラゲッジルームが縦に長くなっている。容量は310リッター。
リアをギュッとしぼり込んだスタイルとしたため、ラゲッジルームが縦に長くなっている。容量は310リッター。拡大
同門の「ランドローバー・レンジローバー ヴェラール」などにも搭載される「デプロイアブルドアハンドル」。走行中は自動的に格納されるが、停車中に押し込もうとするとホーンで警告(?)されてしまう。
同門の「ランドローバー・レンジローバー ヴェラール」などにも搭載される「デプロイアブルドアハンドル」。走行中は自動的に格納されるが、停車中に押し込もうとするとホーンで警告(?)されてしまう。拡大
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英国車らしいディテールが満載

試乗したのは、エンジンをかけると計器盤の中に雪マークが出る寒い日だった。冷間スタートのひと吠えは大きいが、すぐに回転が落ち着いて静かになる。少し前に乗った「ポルシェ911 GT3」ほど人騒がせではない。

末端冷え性なので、こういう日はステアリングヒーターがありがたい。ボタンも右手親指ですぐ押せる位置にある。Fタイプでこの即暖ハンドヒーターを標準装備するのは、ほかには最上級の「SVR」(1787万円より)だけである。

アルミのシフトパドルもSVRから降りてきた400スポーツのキャラクターだ。右側がシフトアップ。黒い「+」の文字はペイントかと思ったら、凝った“抜き”加工で、そこから向こうのブラックレザーが見えていた。

センターパネルの真ん中にはMTのシフトノブのようなATセレクターが突き出す。シフトパドルなんてものは使わんよ、という「Eタイプ」直系ドライバーはこのジョイスティックでシーケンシャルシフトができる。

スポーツモードへの切り替えもこのフロアセレクターで行う。スポーツに入れたままエンジン停止ボタンを押したら、プシュッとエアの音がして、左に倒れていたレバーがポコンと中立の位置に戻った。電気接点のATセレクターにそんなアナログメカを残している。実に“英車”っぽい! と思った。

ボディー全幅は1.9m以上あるのに、2シーターのコックピットはむしろタイトだ。外から見ても、長いノーズに対してキャビンは小ぶりだ。これもブリティッシュスポーツカー伝統のプロポーションである。

「Fタイプ400スポーツ」には、テストした「クーペ」以外に「コンバーチブル」も用意されるほか、さらにそれぞれにFR車と4WD車が設定されている。
「Fタイプ400スポーツ」には、テストした「クーペ」以外に「コンバーチブル」も用意されるほか、さらにそれぞれにFR車と4WD車が設定されている。拡大
インテリアでは、レザーのステッチや各所に配された「400」のロゴなど、イエローのアクセントが主張する。
インテリアでは、レザーのステッチや各所に配された「400」のロゴなど、イエローのアクセントが主張する。拡大
シフトセレクターの周辺には、ドライブモードの切り替えスイッチや可変リアスポイラーの操作スイッチ、可変エキゾーストサウンド機構の操作スイッチなどが整然と配置されている。
シフトセレクターの周辺には、ドライブモードの切り替えスイッチや可変リアスポイラーの操作スイッチ、可変エキゾーストサウンド機構の操作スイッチなどが整然と配置されている。拡大
ステアリングホイールはフラットボトムタイプを採用。ホーンボタンが円の中心よりもかなり下にオフセットされている。
ステアリングホイールはフラットボトムタイプを採用。ホーンボタンが円の中心よりもかなり下にオフセットされている。拡大

“芯”に軽さを感じる乗り心地

最高出力は380psモデルの20ps増しだが、460Nmの最大トルクは発生回転数(3500rpm)も含めて変わっていない。以前乗った380psモデルとの差はよくわからなかったが、380psでも0-100km/hを4秒台でこなすのだから、いずれにしても力は十分である。

センターパネルのチェッカードフラッグボタンを押すと、トラクションコントロール、変速機、アダプティブダンパー、操舵力などの制御がよりスポーティーなダイナミックモードになる。といってもサーキットオンリーというほど激変するわけではなく、普段使いもできる。

ダイナミックモードで変速機をスポーツモードにすると、スーパーチャージド3リッターV6を6800rpmのレブリミットまで引っ張れる。回転はかろやかで、しかもハイレブではなかなかの快音を聞かせる。ZF製ATは、100km/h時の回転数を8速トップで1700rpmまで下げる。3速まで落とすと、5600rpm。さすがに音量は大きくなるが、でも、4速よりイイ音がする。

乗り心地はスポーティーに硬い。硬いが、ズシンとした“おもがたさ”はない。乗り味の“芯”に軽さを感じるのはFタイプに共通する印象だ。オールアルミボディーのなせるわざだろうか。

「400スポーツ」には、テスト車の「インダスシルバー」のほか、「サントリーニブラック」「ユーロンホワイト」と全3色のボディーカラーをラインナップ。イエローのアクセントとのマッチングを考慮して設定されている。
「400スポーツ」には、テスト車の「インダスシルバー」のほか、「サントリーニブラック」「ユーロンホワイト」と全3色のボディーカラーをラインナップ。イエローのアクセントとのマッチングを考慮して設定されている。拡大
「400スポーツ」専用のプレミアムレザーパフォーマンスシート。表皮の柔らかな質感が心地いい。
「400スポーツ」専用のプレミアムレザーパフォーマンスシート。表皮の柔らかな質感が心地いい。拡大
ダークサテングレー仕上げのアルミホイールは、「400スポーツ」専用装備のひとつ。スポークの間に見えるブレーキキャリパーにも「400 SPORT」のロゴが。
ダークサテングレー仕上げのアルミホイールは、「400スポーツ」専用装備のひとつ。スポークの間に見えるブレーキキャリパーにも「400 SPORT」のロゴが。拡大

ワインディングでこそ持ち味を発揮

山梨県の甲府で開かれた新型「フォルクスワーゲン・ポロ」の試乗会に駆けつけて、帰りは東京までずっと下道で帰った。国道20号ではない、柳沢峠から奥多摩へ抜ける峠ルートだ。眼前に立ちはだかる標高1500mの山塊を越えていこうと思ったのは、Fタイプだからこそである。ハイソな高級クーペと思ったら大間違いで、Fタイプでいつも一番カッコイイのはワインディングロードである。大柄でも、身のこなしは軽い。スポーツカー小僧が、そのまま大人になったようなクルマである。平日夕方の柳沢峠、10km近い峠道を400psで駆け上がるあいだ、1台も対向車とすれ違わなかった。

奥多摩へ出て、最初のコンビニに止まる。すっかり日が暮れていたが、バックギアに入れると、モニターのなかはまだ昼間だった。超高感度なリアビューカメラは、リアウィンドウが小さくて後ろが見にくいFタイプ クーペにぜひ付けたいオプション(5万5000円)である。

3リッターシリーズには380psのほかに340psモデルもある。2018年からは300psの2リッター4気筒も加わった。一方、5リッターV8スーパーチャージドモデルも健在で、550psと575psの2チューンがある。数売れるクルマではないのに品ぞろえ豊富なのはFタイプの魅力である。

ジャガーもSUVをつくり始め、販売は好調だという。葬式にFペースなら行けるが、Fタイプはむずかしい。だからSUVのほうが売れるにきまっている。そんな逆境でも、ジャガースポーツカーここにあり! と声を上げるのが2018イヤー限定の400スポーツというわけだ。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

ワインディングロードでこそ持ち味が生きる「ジャガーFタイプ」。山梨から東京までの帰途で、筆者は山越えルートを選択せざるを得なかった。
ワインディングロードでこそ持ち味が生きる「ジャガーFタイプ」。山梨から東京までの帰途で、筆者は山越えルートを選択せざるを得なかった。拡大
「400スポーツ」に搭載される3リッターV6スーパーチャージドエンジンは、最高出力が400psへと強化される。最大トルクは他のV6モデルと同じ460Nm。
「400スポーツ」に搭載される3リッターV6スーパーチャージドエンジンは、最高出力が400psへと強化される。最大トルクは他のV6モデルと同じ460Nm。拡大
フロントマスクを飾る「400 SPORT」ロゴ入りのリップスポイラー。せり出しは10cm以上におよぶ。
フロントマスクを飾る「400 SPORT」ロゴ入りのリップスポイラー。せり出しは10cm以上におよぶ。拡大
サイドブレードのせり出しもご覧の通り。乗り降りの際には注意されたし。
サイドブレードのせり出しもご覧の通り。乗り降りの際には注意されたし。拡大

テスト車のデータ

ジャガーFタイプ400スポーツ クーペ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4480×1925×1315mm
ホイールベース:2620mm
車重:1730kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
最高出力:400ps(294kW)/6500rpm
最大トルク:460Nm(46.9kgm)/3500rpm
タイヤ:(前)255/35ZR20 97Y/(後)295/30ZR20 101Y(ピレリPゼロ)
燃費:10.6km/リッター(JC08モード)
価格:1291万円/テスト車=1461万8000円
オプション装備:メタリックペイント<インダスシルバー>(0円)/Meridianデジタルサウンドシステム(37万2000円)/電動テールゲート(6万7000円)/フロントパーキングコントロール(5万5000円)/リアビューカメラ(5万5000円)/パークアシスト(10万5000円)/InControlセキュリティー(9万7000円)/InControlプロテクト(4万6000円)/パノラミックグラスルーフ<ブラック、手動式ブラインド>(14万3000円)/デジタルTVチューナー(12万9000円)/エクステンデッドレザーパック(33万円)/InControlコネクトプロパック(5万7000円)/コールドクライメイトパック(25万2000円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:3831km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(3)/山岳路(3)
テスト距離:304.8km
使用燃料:50.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.1km/リッター(満タン法)/6.6km/リッター(車載燃費計計測値)

 

ジャガーFタイプ400スポーツ クーペ
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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