フォルクスワーゲン・ザ・ビートル 2.0TSI(FF/6AT)【海外試乗記】
ドライバーズ・ビートル 2011.08.02 試乗記 フォルクスワーゲン・ザ・ビートル 2.0TSI(FF/6AT)2011年7月に欧州で発売されたフォルクスワーゲン「ザ・ビートル」。先代より、スポーティになり、かつ室内は広く。さらにスタイリッシュになった新型について、ベルリンでの試乗会からリポート。
ゴルフVIをベースに開発された新型
「ザ・ビートル」と名付けられた新型は、「原点回帰」がうたわれている。1997年に登場したニュービートルを進化・改良するのでなく、1938年に発表され、戦後豊かさに向かう1950年代の(西)ドイツを中心に多くのひとに愛されたオリジナルのよさを、現代的に再解釈したのだという。
ベースになっているのは現在のゴルフ(6世代目)で、プラットフォームを共用。同時に、デザイン志向が強かったニュービートルにつきまとった室内の狭さなどは、乗員の着座位置の見直しなどで、大きく改善されている。
パワープラントは1.2リッターターボをはじめ、1.4リッターツインチャージャー、2リッターターボ、それに北米と中米向けの2.5リッターのガソリン仕様に加え、欧州では1.6リッターと2リッターのディーゼルターボが用意される。トランスミッションはエンジンに応じて6段湿式あるいは7段乾式DSGが用意される。
スポーティなキャラクターを強調
旧・東ベルリンのポツダム広場に近いところに設置された、その名もビートルセンターが国際試乗会会場。壁面には、ザ・ビートルのコンセプトをつづったパネルが並べられていた。そのうち1枚は「Flower power」(ビートルがよく売れた1967年と68年ごろ、米国サンフランシスコを中心に若者たちが唱えた一種のスローガン)と書き、その上からFlowerを削除している。残ったのは「power」という単語。このように、ザ・ビートルがセリングポイントにしているのは、パワフルさ、運転しての楽しさだ。
「今回ここでお見せするのは、新しいキャラクターです。それは男性性。デザインは、オリジナルのシルエットを生かしながら、パワフルさを強調する表現方法を採用しました」。ベルリンの試乗会会場でそう語ってくれたのは、プロダクトマーケティング担当のアーニャ・シュタインメッツ氏だ。
シュタインメッツ氏の言葉を裏付けるようにデザインを担当したヤン・ハアケ氏が「男性性を強調する手段」としてあげたのは、「フロントオーバーハングを長めにしたこと、フラットに見える長いルーフ(実際には車高はプラス12mm)、大径タイヤ」などだ。
ニュービートルでは「ダッシュボードの奥行感がありすぎてクルマとの一体感に欠けるという不満があった」(インテリアデザイン担当のヤン・ハアケ氏)という点も考慮して、ウインドシールドの傾斜角はやや立ちぎみに、ドライバーの着座位置も見直し、同時に、運動性能の向上に努めたという。
リラックスモードで走れる2リッター
実際に試乗したのは、ゴルフGTIと同じ200psの2リッターターボエンジン搭載モデルだ。これに6段DSGトランスミッションの組み合わせ。オプションで用意される19インチサイズのタイヤが装着されていた。これは米国を中心に販売予定のモデルとのことだが、「スポーティに」というフォルクスワーゲンのコンセプトを判断する参考には十分になるはずだと思う。
走らせた印象は、意外にマイルドだった。19インチという大径サイズのタイヤにもかかわらず路面からの突き上げは上手に抑えられ、市街地でもアウトバーンでも乗り心地は快適だ。200psエンジンはぐいぐいと引っ張るというより、十分なトルクでもって、気持ちよいドライブを味わわせてくれる。ゴルフでいうと、GTIというより、コンフォートライン(1.4リッター+シングルターボ)とハイライン(1.4リッター+ツインチャージャー)の中間という印象だった。
日本に入ってくるのは、1.2リッターが予定されているというが、どのエンジンにも共通するだろう特徴としては、フォルクスワーゲンのエンジニアが意図したとおり、自然な着座位置からくる人車一体感、すなおなハンドリングによる操縦性の高さ、それに100km/h近辺での騒音の低さなどだ。ただし2000rpmの下あたりで排気音のうち低音がややこもりがちに。ひょっとしたら、レゾネーターを調整して、昔のフラット4のサウンドを実現しているのだろうか。
とくにハンドルを切ったときの車体の反応のよさは、「男性的」とフォルクスワーゲンが表現するエンジニアリングの結果かもしれない。基本的にはパワーアシスト量は多く軽めの設定だが、中立付近で振ったときもタイヤと車体のレスポンスはよく、軽快感は強くなっている。エンジンのトルクバンドを有効に使えるのは、DSGギアボックスの恩恵だ。これも先代から進歩した点。
ちなみにSモードが設けられていて、これを選択するとスロットルレスポンスがよくなり、運転しての楽しさが強調される。日本仕様に装備されるかどうか不明だが、楽しさをよりよく味わえるモードだ。
ニュービートルで一時期議論を呼んだリアスポイラーだが、おそらく操縦安定性を高めるためだろう、今回は「1.4TSI」と「2.0TSI」で標準装備になっている。その恩恵か、アウトバーンでの走行は安定していた。いかなる場面でも安心感が高い。
ニュービートルのファンも吸収
ザ・ビートルが作り手の意図どおり、スポーティに見える最適の角度は側面だろう。前から後ろに流れるような一体感のあるボディラインが、ニュービートルとまったく違うクルマに生まれ変わったことを示している。ボディサイズは、全長4278(ニュービートル+152)×全幅1808(同+84)×全高1486(同+12)mm。ホイールベースは22mm延長されて2537mm、トレッドは前で63mm、後ろで49mm拡大された。これによって「筋肉を張り詰めたような力強い外観が誕生」とフォルクスワーゲンではする。
もうひとつ、ザ・ビートルで話題は、メキシコ工場で作られ米国をおもな市場としているせいだろう、ロックミュージック好きをターゲットにして、フェンダーのオーディオシステムを搭載している点だ。パナソニックとの共同事業で、フォルクスワーゲンブランドに独占的に提供されるという。
「ライブコンサートの雰囲気を車内で再現したい。開発にあたって意識したのは、小音量時でも明瞭な音で聞こえること、ミッドレンジのニュアンスの細かさ、それにはっきりした低音です」(米パナソニックの担当者)。
クルマであってクルマでないようなキュートなコンセプトがおもしろかったニュービートル。デザインコンセプトの楽しさに引かれて買った層には、ザ・ビートルは「クルマ」になりすぎているかもしれない。
「だからといって、これまでの層を無視しているわけではない。従来のオーナーにも魅力的になっているはず。ザ・ビートルでマーケットをより拡大していきたい」。プロダクトマネジャーを務めたマティアス・グロッサー氏はそう語る。新しいビートルの歴史がここからスタートする。
(文=小川フミオ/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

小川 フミオ
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