フォルクスワーゲン・ザ・ビートル デザイン(FF/7AT)
幸せを呼ぶクルマ 2016.10.24 試乗記 「フォルクスワーゲン・ザ・ビートル」が日本上陸から4年半ぶりにマイナーチェンジ。デザインや走りに磨きをかけ、安全面や機能面を充実させたという新型の走りとは? 内装の一部に外装色をあしらった「ザ・ビートル デザイン」に試乗した。進化した現代版「ワーゲン」
幼少期に「ビートルを見ると幸せになる」という言い伝えがあった。「ビートルを3台見たら……」だったかもしれない。当時はビートルではなく「ワーゲン」と呼んでいた。なぜ幸せをもたらすのがビートルだったのか、当時は考えたこともなかったが、今考えると、きっと独特の丸いフォルムは特徴的で、親しみやすく、子供にも認識しやすかったのだろう。それに多すぎず少なすぎず、ちょうどよい頻度だったのもあるのではないか。日本車だとどれも似通っていて子供には見分けがつかない。「『カローラII』を見たら幸せになれる」だったとしても、カローラII と思って近づいた子供が「ターセル」や「コルサ」というエンブレムを見て、悲嘆に暮れることになるのではないか。
日本以外にもそういう言い伝えがあったかどうかわからないが、世界中で売れまくって老若男女に愛されたビートルの現代版が、ザ・ビートルだ。もはや物理的にその必要はまったくないにもかかわらず、昔のクルマと今のクルマの過渡期にあるような、タイヤを覆うフェンダーが残ったスタイリングを踏襲している。そして全体のフォルムは丸い。これはもう約束事なので変えるわけにはいかない。とはいえ大きくデフォルメされた先代のニュービートルよりは、なんというかまじめにクルマしていて、男性も「おっ、これなら乗りたいな」と思えるスタイリングをまとっている。2012年の日本上陸から4年半たって、このたびマイナーチェンジした。
細かいスペックを含め、1.2リッター直4ターボと7段AT(デュアルクラッチ・トランスミッション)、2リッター直4ターボと6段AT(同)という2種類のパワートレインに変更はない。2リッターターボ版は従来「ターボ」というグレード名だったが、新型では「2.0 R-Line」に変更された。従来は水平に大きく開いていたフロントバンパーの開口部が、新型では3分割されたほか、リアバンパーの形状もわずかに変わった。ただ全体的に見れば、すでに持っている人がほぞをかむほど大きく変わったわけではない。
ベーシックなエンジンに萌える
「デザイン」の試乗車を借り出し、山梨県側の富士山麓の山道を3人乗車で走りだす。最高出力105ps/5000rpm、最大トルク17.8kgm/1500-4100rpmと地味なスペックの1.2リッターターボエンジンは、しかし“クルマは乗ってみなけりゃわからない”の典型で、登坂路をグイグイと駆け上がっていくことができた。なんだろう、このベーシックなエンジンであればあるほど萌える感覚は。持てる力を余すとこなくすべて使っている気になれるのがよいのだろうか。ストップ&ゴーを繰り返す街中でも、7段ATのきめ細かい変速によって、限られたトルクが有効に使われていて、加速力に不満はない。車重は1300kgとクラス標準的。
クラシカルなインテリアデザインに合わせて大径で細身のステアリングホイールが装着されている。それを右へ左へと切ってハンドリングを確かめる。特別にスポーティーでもなければダルな感じもなく、どこまでも素直で扱いやすい。不整路面を走らせた時の乗り味は「ゴルフ」に近い。つまり硬すぎず柔らかすぎず、快適だ。フロントシートは座面長、左右幅ともにたっぷりあって、かけ心地良好。丸くスラントしたリアスタイルにもかかわらず、リアシートに座っても頭上が窮屈ではないのが不思議だ。フロントシートほどではないにせよ、長時間過ごしても平気なだけのスペースと掛け心地が備わっている。
カラーコンビネーションは豊富な32通り
ザ・ビートル デザインの場合、ダッシュパネル、ドアトリム、ステアリングホイールの一部がボディーと同色となる。シートはブラックかベージュのファブリックが標準で、オプションでレザーシート(同様にブラックかベージュ)を選ぶことができ、全8色のボディーカラーと掛け合わせ、全部で32通りのコンビネーションから選ぶことができる。「ベース」だとシートはブラックのファブリックのみ、2.0 R-Lineだとブラックのファブリックかレザーとなる。
試乗車のボディーカラーはボトルグリーンメタリックという絵の具でいうビリジアンみたいな典型的な緑で、オプション装着されたベージュのレザーシートがよく似合っていた。グリーンとベージュの相性のよさは普遍的で、どんなクルマでもその組み合わせにしておけばまず間違いないが、ザ・ビートルの場合、特別似合っているので、買うなら絶対このコンビネーションにしたいと思う。
“そこそこ”がもたらす幸福感
新型にはドライバー疲労検知システムが全車に標準装備されたほか、後方死角検知機能(ブラインドスポットディテクション)と後退時警告・衝突軽減ブレーキ(リアトラフィックアラート)が、最上級グレードの2.0 R-Lineに標準装備、「ベース」と「デザイン」にオプション装備されるようになった。
現代のザ・ビートルを見かけても幸せになれるかどうかはわからない。あなたに信じる気持ちがあればなれるかもしれない。ただ、2ドアながら大人4人が快適に過ごせ、そこそこの容量をもつラゲッジスペースがあり(310リッター、リアシートを倒せば905リッター)、1.2リッターエンジンならJC08モード17.6km/リッターとそこそこ燃費もよく、ボトルグリーンメタリック以外にもハバネロオレンジメタリック、ストーンウォッシュドブルーメタリック、それに従来「デューン」専用色だったサンドストームイエローメタリックなど、美しいボディーカラーが8色もそろったザ・ビートルに自分で乗れば、きっと幸せなカーライフを送ることができるはずだ。
(文=塩見智/写真=池之平昌信)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ザ・ビートル デザイン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4285×1815×1495mm
ホイールベース:2535mm
車重:1300kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 SOHC 8バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:105ps(77kW)/5000rpm
最大トルク:17.8kgm(175Nm)/1500-4100rpm
タイヤ:(前)215/60R16 95V/(後)215/60R16 95V(ブリヂストン・トランザER300)
燃費:17.6km/リッター(JC08モード)
価格:269万9000円/テスト車=304万9460円
オプション装備:バイキセノンヘッドライトパッケージ(15万1200円)/716SDCWパッケージ(19万9260円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:1200km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(0)/山岳路(6)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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塩見 智
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