ヤマハMT-07 ABS(MR/6MT)
屈託のなさがまぶしい 2018.06.23 試乗記 「スポーティ&ファンライド」をキャッチコピーに掲げ、ジムカーナでも活躍を見せるヤマハのロードスポーツモデル「MT-07」。高い運動性能と、誰もが気持ちよいライディングを楽しめるドライバビリティーを身上とした一台に触れ、リポーターが感じたこととは?「ジムカーナで強いらしいのよ」
例によってこのヤマハMT-07もwebCG編集部のチョイス。中でもディレクターの近藤さんが一度乗ってみたかったのだという。まずはその理由からたずねた。
「何かね、二輪のジムカーナでMT-07が強いらしいのよ」
へぇ~。などと素直に感心してみたものの、「らしいのよ」情報を鵜呑(うの)みにすることはできないので後日調べてみたら、2015年のジムカーナJAPANという大会でキングオブジムカーナと呼ばれる方がMT-07で優勝した記述がウェブ上で見つかった。
「それから、ジムカーナにハマっている元格闘家の愛車もMT-07なんだって」
とまた、「なんだって」情報の裏を取ってみたら、元格闘家はそっち方面に疎い自分でもその名を知っている有名人だった。近藤さんの話は間違ってなかった。ただ、断片的だっただけだ。
「だからきっと、ジムカーナで強いってことは俊敏性に長(た)けてるってことじゃないの? このオートバイは」
おそらく近藤さんはそのあたりを自ら確かめたかったのかもしれない。でも、彼は原稿を書かない。「きっと」だの「じゃないの?」を確認するのは自分の仕事だ。
“痛快ツール”的な乗り味と操作性
それにしても、「ジムカーナ」という先入観を与えられるとイメージに偏りが生じてしまうので困る。いや、まったく。
できるだけフラットな感覚でMT-07を試して頭に浮かんだのは、小気味よく使える工具だった。例えばドライバー。自分の腕力とドライバーの太さや長さのバランスがちょうどいいと、気持ちよくネジを回せるじゃないですか。その痛快さをMT-07から感じ取ったわけです。
肩の力が自然に抜けるライディングポジション。まずそこが痛快ツール的。688ccで並列2気筒のエンジンは、数値以上にトルク感に満ちているというか、小さめのハンマーで手際よくクギを打ち付けるような的確さを感じた。つまり、ピックアップがいいということです。意外に旧来のツインっぽいフィーリングがあって、スロットルのオンオフを繰り返すとゴンゴンきたりもするし、ブレーキレバーやシフトペダルの操作感もカチカチと小気味いい。そうした乗り手側のアクションに対してしっかり反応してくれるところは、ごく短い距離で急加速&急制動を繰り返すジムカーナに合うのかもしれない。
無論、ハンドリングも素直。ライディングポジション同様に無駄に力を入れずとも車体のほうから曲がってくれる感じ。だからおそらく、乗り手が無用に頑張らずともMT-07に体を預ければ、ジムカーナに出てもある程度のタイムは稼げるかもしれない……。
って、バカ。すっかりジムカーナに引っ張られちゃったじゃないか!
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汚れっちまった悲しみに……
誰でも気持ちよく操れそう。これがMT-07の乗り味に関する総合的な感想。しかし裏を返せば万人的ということでもある。そこはヤマハも心得ているのか、ルックスは相当に挑戦的だ。特にフューエルタンクまわり。実際のタンクは奥にしまい込んでいるらしいのだが、カタログ上で「タンクカバー」と呼ばれる複雑な段を形成しているパーツや、その下を走る「エアスクープ」などなど、手触りが異なる素材を複合的に組み合わせることで、マッシブというよりマッスルな印象を強めている。まぁ、トガっていますね。デザインに関して好き嫌いは語りません。そこだけでプロダクトの全体は語れないし、何より好みの問題だから。
ひとつ感じ取れるのは、ヤマハは07を含むMTシリーズで新しいオートバイ像を提案したいというメッセージだ。それくらい、ほかとの違いに意識が向いているように思った。
でもなぁ。と、ここからは個人の意見ですが、とても扱いやすくて、それなりにチャーミングなのは魅力的と言って間違いないのだけど、いろんな女の子と、いやオートバイと付き合う人生の中で、ともすればその名前を忘れてしまうような気もしているのだ。没個性的だからというわけではなく、あまりに良すぎるから。
「なら、最初の彼女にすればいいんじゃない?」。これは近藤さんの発言だ。確かに、それなら必ず忘れないし、自分の女性観、いや二輪観を屈託のない明るいほうへ導いてくれるだろう。さすがwebCGディレクター、名言の宝庫だな。そして理解したのは、すっかり汚れちまった自分にはMT-07の素直さがまぶしすぎるということだった。その辺、果たして近藤さんはどう感じたのだろう。
(文=田村十七男/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2085×745×1090mm
ホイールベース:1400mm
シート高:805mm
重量:183kg
エンジン:688cc 水冷4ストローク直列2気筒DOHC 4バルブ
最高出力:73ps(68kW)/9000rpm
最大トルク:68Nm(6.9kgm)/6500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:38.4km/リッター(国土交通省届出値 定地燃費値)/23.9km/リッター(WMTCモード)
価格:77万7600円

田村 十七男
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