第512回:トップを目指す若手プレーヤーたちが競う
男子テニスの国際大会「ポルシェ軽井沢フューチャーズ」とは?
2018.06.27
エディターから一言
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ポルシェ ジャパンから軽井沢にテニスの試合を見に来ないかとお誘いをいただいた。世界男子テニスツアーの上位トーナメントを目指す若手選手が出場する大会「軽井沢フューチャーズ2018」だ。これはポルシェが取り組んでいる若手スポーツ選手をサポートする活動の一環で、2016年より協賛しているのだ。
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優勝賞品は「ポルシェ・マカン」?
「この大会って、優勝するとポルシェがもらえるんですか?」
観光人力車に乗った上品な奥さまがストレートな質問を投げかける。ここは、旧軽井沢銀座通りと呼ばれるメインストリートからほど近い場所にあるテニスコート。若き日の天皇陛下と美智子妃が出会ったことでも知られている場所だ。ポルシェのエンブレムを掲げた横断幕がかかり、入り口には「ポルシェ・マカン」が展示されている。奥さまがそれを賞品だと考えたのはもっともなことだ。
残念ながら、優勝してもマカンはもらえない。このテニス大会はエントリーレベルで、参加するのは武者修行中の若手たち。上を目指して世界中を駆けめぐっているから、クルマに乗っている暇はない。今は高級車をもらうより、賞金を獲得して遠征費用の足しにしたいのだ。活躍してトップ選手になれば、何台でもポルシェを買えるようになる。
6月9日、10日の2日間にわたって開催されたテニス大会は、軽井沢フューチャーズ。2005年に始まり、2016年からポルシェのスポンサードを受けるようになって正式名称が「ポルシェ軽井沢フューチャーズ」に。それまで賞金総額が1万ドルだったのが2万5000ドルになり、選手にとっての魅力が上がった。単に賞金がアップしただけでなく、獲得できるポイントが増えたことが大きい。
ウィンブルドン、全米、全仏、全豪のグランドスラムを頂点として、テニス大会にはランク付けがある。グランドスラムの次にランキング8位以上の選手だけが出場できるATPファイナルズがあり、マスターズ1000、500、250と続く。ここまでがツアー公式戦で、若手はその下のチャレンジャーやフューチャーズに参加してポイントを稼いでいく必要がある。
若手のテニスプレーヤーにとって貴重な大会
グランドスラムで優勝すると2000点を得ることができるが、フューチャーズでは最大でも35点。地道にポイントを積み上げていくと世界ランキングが上がり、格上の大会に参加できるようになる。2018年6月18日の時点で男子の1位はフェデラーで、ポイントは8920。日本人の最高位は27位の錦織 圭で、1530ポイント。100位以内には、ほかに杉田祐一とダニエル太郎がいる。
世界には約600のフューチャーズ大会があるが、日本で開催されるのは10に満たない。錦織に続くスター選手を育てるには、いささか寂しい環境である。軽井沢フューチャーズは、日本の若手にとって貴重な機会なのだ。参加できるのは日本人選手だけではなく、国籍を問わず誰でもエントリーできる国際大会である。
ただし、ポイント上位者が優先されるので、まったくの初心者が出場するのは不可能だ。フェデラーや錦織なら確実に出られるが、さすがに細かいポイント稼ぎをすることはないだろう。現実的には、ランキング300位以上の選手が出場することはなさそうだ。
今回の軽井沢フューチャーズで注目された選手の1人が野口莉央。19歳の新鋭で、1433位だった昨年から597位までランクアップしている(2018年6月18日現在)。5月にはベトナムフューチャーズのシングルスで優勝しており、勢いづいた中での登場だ。軽井沢フューチャーズでは、シングルスとダブルスにダブルエントリーしている。
真剣な鋭いまなざしにも納得
野口選手は順調に勝ち進み、6月9日にはシングルスの準決勝とダブルスの決勝が重なる厳しい日程に。シングルスでは第2シードの越智 真選手が相手となった。野口選手は第5シードだから、格上相手との戦いとなる。第1セットを2-6で失ったが反撃し、6-2、6-4と連続でセットを取って決勝に歩を進めた。
ハードな試合で消耗してしまったのか、乾 祐一郎選手と組んだダブルス決勝では精彩を欠き、5-7、4-6と2セットを連取されて敗北。優勝したのは福田創楽選手と奥 大賢選手のコンビだった。
翌日は雨が予想されていたため、決勝開始時刻を11時から10時に変更。それでも間に合わず、インドアコートで行われることになった。この試合は見に行けなかったのだが、野口選手は斉藤貴史選手にストレート負けだったとのこと。直前にコートが変わるという変化に対応できなかったのは、経験不足ということになるのかもしれない。
野口選手は翌週に行われた昭和の森フューチャーズでは見事シングルスで優勝。597位まで順位を上げたのは、ここで得たポイントが大きい。このくらいのクラスだと、10ポイント違えば何十位もランクが変動する。1ポイントしか持っていない選手が何百人もいるのだ。200位より上にいかなければ、テニスの試合だけで食べていくことはできないといわれている。大会に参加していた選手の目が真剣なのは当然のことなのだ。
ジュニアゴルファーの育成も
テニスの試合が行われている間、コートの近くに試乗会受付が設けられていた。「ポルシェ・パナメーラ4 E-ハイブリッド スポーツツーリスモ」「マカン」「718ケイマン」が用意され、予約制で誰でも試乗することができる。係員が同乗し、街なかからちょっとした山道まで、30分ほどのコースでポルシェを楽しめるのだ。
せっかくテニス大会をサポートするのだから、ポルシェを知ってもらうのにいい機会だと考えたようだ。東京などの都市で試乗しても、交通事情が悪くて真価を知ることは難しい。軽井沢なら森の中の道を気持ちよくドライブできるから、観光客にとってもありがたいイベントだろう。来年も行われるなら、テニス観戦と試乗をセットで楽しみに行ってもいい。
ポルシェが若手レーシングドライバーの育成を目的にした「PCCJスカラシッププログラム」を実施していることは知られているが、ポルシェが支援する対象はモータースポーツにとどまらない。軽井沢フューチャーズをサポートするのも、若手スポーツ選手の育成に取り組むプロジェクトの一環なのだ。テニスだけでなく、ジュニアゴルファー育成ラウンドという取り組みもある。世界で活躍する若手日本人アスリートを応援する仕組みも整えた。サッカーの南野拓実選手、カヌーの羽根田卓也選手を「Porsche Driving Athlete」に任命し、アンバサダー契約を結んでいるのだ。
ポルシェ軽井沢フューチャーズが始まってまだ3年だが、早くも旧軽井沢のクラシックな街並みに自然に溶け込んでいるように見えた。テニスで世界を目指す若者のためにも、続けてほしい大会である。何年かすれば、軽井沢の初夏を告げるフレッシュなスポーツイベントとして定着しているかもしれない。
(文=鈴木真人/写真=郡大二郎、ポルシェ ジャパン/編集=渡辺 忍)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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