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第513回:日本にクラシックカー文化を根付かせるか?
「ヤナセクラシックカーセンター」が秘めた可能性

2018.06.30 エディターから一言
ヤナセが保有する1951年式「メルセデス・ベンツ170S カブリオレB(W136)」。
ヤナセが保有する1951年式「メルセデス・ベンツ170S カブリオレB(W136)」。拡大

長年にわたり輸入車ビジネスを手がけてきたヤナセが、ついにクラシックカー事業をスタート。メーカー、ユーザーともに信頼を寄せる巨人の挑戦は、日本にクラシックカー文化が根付くきっかけになるか? 開所式の様子から、彼らのポテンシャルを探った。

クラシックカーのレストア事業を担うヤナセクラシックカーセンターは、関東地区のアフターサービス事業の拠点である、神奈川のヤナセ横浜ニューデポー内に開設された。
クラシックカーのレストア事業を担うヤナセクラシックカーセンターは、関東地区のアフターサービス事業の拠点である、神奈川のヤナセ横浜ニューデポー内に開設された。拡大
クラシックカーセンターの前に並べられたレストア車両。同所では“オールドタイマー”と呼ばれるクラシックカーはもちろん、ここ20~30年で生産された“ヤングタイマー”と呼ばれる世代の車両についても、レストアを行っている。
クラシックカーセンターの前に並べられたレストア車両。同所では“オールドタイマー”と呼ばれるクラシックカーはもちろん、ここ20~30年で生産された“ヤングタイマー”と呼ばれる世代の車両についても、レストアを行っている。拡大
吉田 茂元首相も愛用したという1963年式「メルセデス・ベンツ300SEラング(W112)」。現在はエアサスペンションの修理などで入庫しているという。
吉田 茂元首相も愛用したという1963年式「メルセデス・ベンツ300SEラング(W112)」。現在はエアサスペンションの修理などで入庫しているという。拡大
開所式に参加した、ヤナセの関係者と報道関係者。
開所式に参加した、ヤナセの関係者と報道関係者。拡大

対象車種は“ヤナセ取り扱い”に限らない

いつもは整備を待つクルマが整然と、しかし殺風景に並んでいる場所に、今日は着飾ったように磨き上げられたクルマが展示されている。その顔ぶれは1951年式の「メルセデス・ベンツ170S(W136)」を筆頭とするクラシックカーだ。ガレージの奥には祝いの花。梅雨の合間の、夏のように強い日差しの2018年6月22日、ヤナセは「ヤナセクラシックカーセンター」の開所式を実施した。

私たちは、同センターが開設されたヤナセ横浜ニューデポーを訪れた。第三京浜道路・港北インターの最寄りに位置する横浜ニューデポーは、関東地区のヤナセのアフターサービスの中核拠点であり、すぐ隣には、横浜の誇る崎陽軒の工場がある。また、ヤナセの販売拠点である「ヤナセブランドスクエア横浜」も直近。ただし住宅街というよりも工場や自動車販売店が並ぶエリアで、クルマ通りは多いけれど、近隣住民は少ない。普段は、どちらかといえばひっそりとした場所だろう。しかし開所式ということで、その日のクラシックカーセンターのガレージは人がひしめきあっていた。軽く見積もって150名。その半数がメディアで、残りがヤナセと取引のある関係者たち。祝いの席ということもあり、みなスーツをきちんと着用しており、凛(りん)とした雰囲気が漂う。暑かったがジャケットを忘れずに持ってきてよかったと、ほっと胸をなでおろすほどだ。

ヤナセクラシックカーセンターは、古い輸入車の修復・復元を目的に、同年4月5日にオープンしている。驚くべきは、扱うのがヤナセの取り扱い車種に限らないこと。できるものであれば、なんでもレストアするという。また、将来的には輸入車のクラシックカーの売買も行いたいというから、さらに驚かされる。

クラシックカービジネスに乗り出す4つの理由

「レストアビジネスは、今までも行ってきましたが、専門の組織を設立して行うのは初めてのこと。(設立に踏み切った)その理由は、4つあります」
主催者あいさつに立ったヤナセの井出健義社長は、そう説明した。

井出社長の言う4つの理由のひとつは、「クルマはつくらない。クルマのある人生をつくっている。」というヤナセのコーポレートスローガンだ。“足グルマ”ではない、人生を彩るクラシックカーは、「クルマのある人生」そのもの。それを支えるのがヤナセクラシックカーセンターだという。2つ目の理由は、創業100年を超えるその実績である。海外自動車メーカーとの付き合いは長く、ユーザーからの信頼も得ている。ヒストリックカー文化の日本導入を担う資格を、ヤナセは備えるという。3つ目は技術の伝承だ。クラシックカーのレストア作業には、普段の修理とは異なる技術が求められる。古い技術を持ったエンジニアがヤナセに在籍している今こそ、若い世代にそうした技術を伝承しておかねばならぬという。そして最後の理由が社会貢献。ヒストリックカーを支えることが、クルマのファンを増やすことにつながるとヤナセは考えている。

また、そうしたヤナセの意気込みを後押しするかのように、開所式ではテュフ ラインランド ジャパンによる「クラシックガレージ認証」取得の認証授与式も行われた。テュフ ラインランドは145年の歴史を持つ世界的な第三者検査機関だ。自動車関連では整備工場の監査・認証サービスを提供しており、クラシックカーの評価・査定サービスも行っている。その中には、クラシックカーガレージ認証もあり、修理・整備の技術や品質、運営・管理など、11カテゴリー150項目の基準に基づいた監査を行っている。そんな認証システムにおいて、ヤナセクラシックカーセンターはメルセデス・ベンツのクラシックカーガレージとして、基準をクリアしていると認定されたのだ。

ヤナセクラシックカーセンターの開所を祝う、テープカットの様子。
ヤナセクラシックカーセンターの開所を祝う、テープカットの様子。拡大
開所式であいさつに立つ、ヤナセの井出健義社長。同センターのゴールドのロゴマークは、「『Classic Car Center』の3つのCをタイヤで表現したもの」とのこと。
開所式であいさつに立つ、ヤナセの井出健義社長。同センターのゴールドのロゴマークは、「『Classic Car Center』の3つのCをタイヤで表現したもの」とのこと。拡大
開所式では、レストア作業に携わるサービス部のスタッフも紹介された。熟練したメカニックからの技術の伝承も、同センターの役割のひとつとしてあげられている。
開所式では、レストア作業に携わるサービス部のスタッフも紹介された。熟練したメカニックからの技術の伝承も、同センターの役割のひとつとしてあげられている。拡大
所有するテュフ ラインランド ジャパンからの依頼で、ヤナセが管理している1958年式「メルセデス・ベンツ220S(180 II)」。
所有するテュフ ラインランド ジャパンからの依頼で、ヤナセが管理している1958年式「メルセデス・ベンツ220S(180 II)」。拡大

蓄えられたリソースを存分に生かす

4月にオープンしたばかりのヤナセクラシックカーセンターであるが、すでに全国からの問い合わせは100件を超えており、作業に入っている車両も数台あるという。

「ヤナセの、世界へのネットワークを利用してパーツを集めて修理を行います。内容はお客さまのご要望次第ですし、予算についてもご相談いただけます。また並行車でも可能であればレストアします」とヤナセのスタッフは言う。つまり、100万円で限定的に直すのもありだし、気のすむまでピカピカに仕上げることも可能ということだ。具体的な板金塗装やエンジン、トランスミッションなどのオーバーホールは、横浜ニューデポーにあるユニット部門や板金・塗装部門が担当する。つまり、関東全域のヤナセの重整備を受け持ってきた横浜ニューデポーの整備力を土台に、ヤナセのコネクションを使ってレストアが進められるというのだ。

きれいにリフレッシュしたクラシックカーを売買するというビジネスのスタートは「市場がどれだけあるのかわからないが、数年以内というのが目標」とのこと。設備と人員、技術があり、コネクションも看板も申し分ない。ヤナセのクラシックカービジネスは、想像していた以上にポテンシャルが高そうであり、欧州のようにクラシックカー市場が日本にも生まれる可能性を感じさせた。

(文=鈴木ケンイチ/写真=webCG/編集=堀田剛資)
 

レストア作業中の1969年式「メルセデス・ベンツ600プルマン(W100)」。
レストア作業中の1969年式「メルセデス・ベンツ600プルマン(W100)」。拡大
ヤナセ横浜ニューデポーのユニット工場にて、オートマチックトランスミッションのバルブボディーを組み立てるスタッフ。ヤナセクラシックカーセンターでのレストア作業には、部品の調達から実際の作業に至るまで、アフターサービスにまつわるヤナセのリソースが総動員されている。
ヤナセ横浜ニューデポーのユニット工場にて、オートマチックトランスミッションのバルブボディーを組み立てるスタッフ。ヤナセクラシックカーセンターでのレストア作業には、部品の調達から実際の作業に至るまで、アフターサービスにまつわるヤナセのリソースが総動員されている。拡大
ゆくゆくはクラシックカーの販売も手がけたいというヤナセ。同社の取り組みが、日本にクラシックカービジネスを根付かせるきっかけになるかもしれない。
ゆくゆくはクラシックカーの販売も手がけたいというヤナセ。同社の取り組みが、日本にクラシックカービジネスを根付かせるきっかけになるかもしれない。拡大
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