フォルクスワーゲン・ポロGTI(FF/6AT)/up! GTI(FF/6MT)
これがGTIの流儀 2018.07.06 試乗記 日本において13年ぶりに出そろったフォルクスワーゲンGTI 3兄弟の中から、デビューしたての最新モデル「up! GTI」と「ポロGTI」に試乗。他のホットハッチとは一味違う、抑えのきいたGTIならではの妙味に触れた。フォルクスワーゲンにとって特別な名前
各ブランドには、無条件で特別な存在であることを納得させる伝統のネーミングがある。例えば「AMG」と聞けば、多少なりともクルマを知る人なら、それがメルセデスの中でも極めてエクスクルーシブな高性能モデルであることをすぐにも理解できる。BMWであれば「M」の称号を持つモデル、ポルシェであれば「GTS」、ランボルギーニであれば、「スーパーレジェーラ」がそれに当たる。今や独立して車種を示すネーミングになったが、日産(スカイライン)の「GT-R」やホンダの「タイプR」もまた、誰もが特別視する伝統のエンブレムだろう。
そうした特別なネーミングをフォルクスワーゲンの中で探せば、「GTI」がそれに該当する。ご存じのように、GTIシリーズは1976年に初代「ゴルフGTI」が欧州で登場して以来、途切れることなくゴルフの各世代で綿々と受け継がれてきたものだ。余談だがゴルフGTIはシリーズの総生産台数が220万台を超え、日本でもこれまでにシリーズ累計6万台を販売。このセールスは、世界市場でもトップ5に入る大いなる実績なのだという。
今回、日本市場において、カタログモデルとしてすでにラインナップされているゴルフを筆頭に、A、B、CセグメントのGTIシリーズ3モデルが約13年ぶりに出そろった。Aセグの限定車、up! GTIとCセグの特別仕様車「ゴルフGTIダイナミック」は2018年6月8日に、Bセグの新型ポロGTIはカタログモデルとして同年7月3日に発売。up! GTIは600台限定、「ゴルフGTIダイナミック」は、6段DSG仕様と6段MT仕様のうち後者が100台の限定販売となる。
ちなみに「GTI」とは「Gran Turismo Injection」の略で、今では当たり前すぎて何を言っているんだといわれそうだが、ゴルフの高性能モデルとして初めてフューエルインジェクションが採用されたことに由来する。そのワールドプレミアの場となったのは、1976年のフランクフルトショー。初代ゴルフの誕生から2年後のことであり、今から40数年以上も前のこととはいえ、そこに隔世の感はぬぐえない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
初代ゴルフGTIの再来
そうした注目のGTI 3モデルの中で、最もリーズナブルなプライスタグをさげているのがup! GTIである。日本仕様ではGTIを名乗るモデルで唯一の2ドアボディーであり、6段MTのみのラインナップ。全長わずか3625mmの中に大人4人がしっかりと乗れるスペースと、とてもAセグのエントリーモデルとは思えないほどのデザイン性と質感を備えたこのモデルは、都市生活者のファーストカーとして、あるいは2シータースポーツカーユーザーのセカンドカーとして、魅力的な存在だ。
赤いステッチを採用したDシェイプのレザーステアリングホイールや、GTIのアイコンともいうべきタータンチェックのシートファブリック、赤いブレーキキャリパーや17インチホイール、「GTI」のエンブレムなど、特別なモデルであることを示す装備は豊富。フロント左右席にはシートヒーターまで完備する。もちろん、ベースモデル同様に「シティ エマージェンシー ブレーキ」や「パーク ディスタンス コントロール(リア)」など、運転支援システムもAセグモデルとしては充実している。
最高出力116ps(85kW)、最大トルク200Nm(20.4kgm)を発生する直列3気筒1.0 TSIエンジン(直噴ターボ)は、排気量1リッター以下のカテゴリーで、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを受賞したパワーユニット。乗り始めや“パーキングスピード”での低速トルクこそもう少し厚みが欲しいと思わせるが、排気量を考えれば十分なパフォーマンス。しっくりくるドライビングポジションと適切なペダル配置もあって、6段MTのシフトレバーを駆使すればかなり元気な走りを楽しめる。
フォルクスワーゲンは「初代ゴルフGTIをほうふつとさせるホットハッチ」とup! GTIを紹介するが、初代ゴルフのボディーサイズ(全長3705mm)とパワー(110ps)を思い出せば、その説明もあながち的外れとはいえないだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
シャシー性能はAセグメント随一
いくつかリクエストをいわせてもらえれば、せっかくのMTモデル、シフトフィールはもう少しカッチリと節度感あるタッチであればよりGTIの称号にふさわしいように思えるし、エキゾーストサウンドもいささか平凡すぎる。そこにスポーティーモデルをアピールする何らかの演出があってもいい。
それでも、いかにもフォトジェニックなブラック&シルバーのコンビネーションデザインを持つ17インチホイール(タイヤは195/40R17)は、ルックス面のみならずしっかりと履きこなされており、スポーティーなアピアランスからは想像もできない快適な乗り心地をもたらす。快適性とシャープなハンドリングを両立させたup! GTIのシャシー性能は、迷わずAセグトップレベルだと紹介していい。
一方で、2018年3月に日本導入を果たした新型ポロをベースに、フォルクスワーゲンとしてはこれが初採用となる新世代の2リッター直列4気筒TSIエンジン(直噴ターボ)を搭載したのがポロGTIだ。最高出力200ps(147kW)、最大トルク320Nm(32.6kgm)を発生する、シリーズきってのホットモデルである。トランスミッションは6段DSGのみ。MTは用意されない。ただ、その6段DSGではシフトレバー脇のポジション表示や各種スイッチが、右ハンドル化に合わせてシフトノブの右側に移設されている。こうした日本市場に対する細かな配慮がフォルクスワーゲンらしく、うれしくなる。
ここも、あそこもGTI専用
パフォーマンスに関わるパートでいえば、トルクベクタリング機能の「XDS」や、前述のシフトレバー脇のスイッチひとつでエンジンやトランスミッション、ステアリングやダンパー(スポーツ/ノーマルの2段階切り替え)などの特性を変更できるドライビングプロファイル機能「スポーツセレクト」などが標準装着となる。こちらも、赤いブレーキキャリパーや、ブラック&シルバーのコンビネーションデザインを採用した17インチホイール(タイヤは215/45R17)、専用スポーツサスペンションなどが足元を引き締める。
そのほか、エクステリアでは、ハニカムパターンに赤いラインの入ったラジエーターグリルや大型ルーフスポイラー、2本出しのエキゾーストパイプでスポーティーな印象を見る者に与える。インテリアも“GTIの流儀”でコーディネートされ、赤いステッチのステアリングホイールやタータンチェック柄のシートに加え、赤でまとめられたダッシュボードパネルやドアトリムも最新モデルのセリングポイントだ。
装備面での見どころも多く、「ポロ」シリーズとして初めて3つの表示パターンを選べるフルデジタルメーターの「アクティブ インフォ ディスプレイ」と「Qi(チー)」規格のスマートフォンワイヤレス充電機能を「テクノロジーパッケージ」としてオプション設定。歩行者検知機能付きのプリクラッシュブレーキシステムやACC(アダプティブ クルーズ コントロール)の標準装備に加え、駐車支援システム「パーク アシスト」や「パーク ディスタンス コントロール(フロント/リア)」、「リア トラフィック アラート」などの運転支援システムは「セーフティパッケージ」として選択が可能だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“あえての中辛”がGTIのセオリー
装備やタイヤサイズからも想像できるように、ポロGTIはラインナップ中最もハードな仕様であるはずだが、up! GTIもそうであったように、GTIという称号からは考えられないほど、乗り心地は洗練されている。それこそ「快適だ」と言っても決して大げさではない。大径タイヤにありがちなバタつきや不快な突き上げ、脳が揺さぶられるような振動もない。ロードノイズも程よく抑えられており、加速シーンでのエキゾーストサウンドと小気味よいDSGの変速フィールが、シートを介してドライバーに伝わる。
フォルクスワーゲンは、実用とスポーツ性のバランスこそがGTIシリーズの白眉(はくび)だと訴えるが、高級感さえ抱かせるライドフィールは、ボディーの軽さの中にも重厚さを感じさせる、Dセグのプレミアムスポーツモデルもかくやという印象だ。とてもBセグのコンパクトハッチというプロフィールから想像するそれではない。
一方で、軽いアンダーステアを伴いながらコーナーをヒラリヒラリとこなす旋回能力は、スポーツモデルのGTIの名にふさわしいと感じる。XDSはほとんど介入を意識させることなく、ステアリングフィールもごく自然。これらは間違いなく腕利きのテスターが決めた制御アルゴリズムであり、楽しさと安全性を見事にバランスさせた設定だ。旧ゴルフGTIユーザーに、「これが新型ゴルフのGTIだ」と言って乗せたとしても、十分通じそうな出来である。
ただ、こちらもup! GTIと同様に、刺激は少なめだ。あくまでもベースモデルの延長上にあるスポーティネスであり、ハンドリングであり、サウンドなのだ。ホットハッチという成り立ちとGTIの称号から、もう少しエモーショナルな何かを期待してしまうが、ことさらに扇情的なものではないのはゴルフを含めた3シリーズに共通する。
もっとも、例えばゴルフでいえば、この上にさらに辛口な「R」が控えているわけだから、実用性とスポーツ性のバランスを考慮すれば“中辛”程度の刺激でも十分なのだろう。子供にも分かりやすい刺激を増やすことは簡単なのだろうが、そこをオトナの控えめな辛さに抑えるさじ加減が、GTIのセオリーなのだ。
(文=櫻井健一/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
フォルクスワーゲンup! GTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3625×1650×1485mm
ホイールベース:2420mm
車重:1000kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:116ps(85kW)/5000-5500rpm
最大トルク:200Nm(20.4kgm)/2000-3500rpm
タイヤ:(前)195/40R17 91V/(後)195/40R17 91V(グッドイヤー・エフィシエントグリップ パフォーマンス)
燃費:21.0km/リッター(JC08モード)
価格:219万9000円/テスト車=219万9000円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1538km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
フォルクスワーゲン・ポロGTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4075×1750×1440mm
ホイールベース:2550mm
車重:1290kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:200ps(147kW)/4400-6000rpm
最大トルク:320Nm(32.6kgm)/1500-4350rpm
タイヤ:(前)215/45R17 91W/(後)215/45R17 91W(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:16.1km/リッター(JC08モード)
価格:344万8000円/テスト車=374万5000円
オプション装備:Discover Proパッケージ(22万6800円)/テクノロジーパッケージ(7万0200円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1638km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。






















































