三菱アウトランダーPHEV Sエディション(4WD)/アウトランダーPHEV Gプラスパッケージ(4WD)
エンジニアの意地 2018.07.23 試乗記 「三菱アウトランダーPHEV」がビッグマイナーチェンジを受けた。そのハイライトは、主要構成部品の9割に手を入れたというプラグインハイブリッドシステムの刷新だ。デビューから5年間の集大成ともいうべき、三菱自慢のシステムの出来栄えを試した。燃費性能が悪くなった!?
よりEV(電気自動車)らしさを強めるためにエンジン排気量をアップしました――。最初に説明を聞いたときには意味がよく分からなかった。2年ぶりに大幅な部分改良をした三菱自動車のアウトランダーPHEVのことだ。同社としては初めてのプラグインハイブリッド車(PHEV)であるアウトランダーPHEVが登場したのは2013年のこと。それからもきめ細かく改良を重ねてきたが、同社が「2019年型」と呼ぶ最新モデルが間もなく発売となる。
外観上の変更点はグリルやヘッドランプ、バンパー形状の変更などそれほど大きくはないのだが、中身はかなり手が入っている。改良の最大の目玉は、搭載エンジンがこれまでの2リッター直列4気筒から、0.4リッターアップの2.4リッター直列4気筒に換装されたことだ。従来のアウトランダーでは、ガソリンエンジンモデルが2.4リッター、PHEV仕様は2リッターという使い分けがなされてきた。
PHEVモデルはエンジンのほかに前後輪にそれぞれ駆動モーターを備えているので、加速が必要なときなどは駆動力を補うことができる。環境性能を重視するPHEV仕様では、そのぶんエンジンの排気量を小さくして燃費性能を向上させるのがその目的だったと記憶している。
それが今回は、エンジン排気量を大きくしたことで、ハイブリッド燃費(バッテリーの残量ゼロの状態でハイブリッド車として走った場合の燃費、JC08モード)は従来型の19.2km/リッターから18.6km/リッターへとわずかながら低下している。環境性能が売り物のはずのPHEV仕様で環境性能を悪化させるような変更をあえてしたのはなぜなのか? 三菱のエンジニアに疑問をぶつけてみた。
エンジンをなるべくかけたくない
説明してくれたのは同社EV・パワートレインシステム開発部CPE(チーフ・パワートレイン・エキスパート)の石井大六(いしい・だいろく)氏である。石井氏の説明によれば、アウトランダーPHEVのオーナーに調査をすると「なるべくエンジンをかけたくない」「エンジンがかかるとちょっとがっかりする」という声が多いのだそうだ。それは分かる。モーターだけで走るEV走行の静かさ、滑らかさを経験すれば、エンジンがなるべくかかってほしくないというのは人情だろう。
そこでこれまでの部分改良でも、遮音性能を上げるなどしてエンジンがかかったあとも静粛性をなるべくEV走行に近づけるようにしてきた。今回は「エンジン始動後でさえもEVらしくあり続けたい」との狙いの下、従来の改良よりも一歩踏み込んで、エンジンの排気量アップに踏み切った。排気量を拡大したことで、低回転から大トルクを発生させられるようになり、発進加速時や追い越しなど中間加速時のエンジン回転数を下げることできた。同様に、30km/h程度の低速走行時や電池の残量が少ない状態でのアイドリング発電時の回転数も下げることができ、それぞれ3dB程度音圧を低くすることができた。
EV走行領域も拡大
もちろん、エンジンがなるべくかからないようにする改良も盛り込んでいる。
バッテリー容量は従来の12.0kWhから13.8kWhへと15%アップさせ、あわせて出力(単位時間当たりに取り出せる電力の量)も10%向上させている。リアモーターの最高出力も従来の82ps(60kW)から95ps(70kW)に増大させた。この結果、バッテリーだけで走行可能な距離が従来の60kmから65kmに伸びたほか、モーターだけで出せる最高速度も従来の125km/hから135km/hになった。つまり、EV走行が可能な速度領域が従来よりも拡大し、そのぶんエンジンがかかりにくくなったわけだ。
こうした「EVらしさ」向上のほかに、今回、パワートレインには走りの楽しさを向上させる改良も施された。従来モデルでは燃費を向上させる「ECO」と通常走行用の「NORMAL」、滑りやすい路面を走行する場合の「LOCK」の3つの走行モードを備えていたが、今回の部分改良では新たに「SPORT」と「SNOW」の2つのモードが加えられた。SPORTモードはスポーツ走行時の加速性能やコーナリング性能を向上させるモードで、SNOWモードは氷雪路を走行するときに安定性やコントロール性を高めたモードである。
明らかに向上した静粛性
今回、市販モデルの発売に先立って新型アウトランダーPHEVのプロトタイプをサーキットで試乗できたので、そのインプレッションを紹介しよう。最初に従来型のスポーツグレードである「Sエディション」に試乗したのち、新型の「Gプラスパッケージ」に乗り換えた。走りだしてすぐ分かるのが静粛性の向上である。
従来型だと加速していくときにエンジンの騒音が高まるのが明らかに分かるが、新型ではそのエンジン音が「あれ?」と思うほど低くなっている。アクセルを踏み込んでいってもその印象は変わらない。全開加速時には新型であってもエンジン音は高まるが、同じ騒音レベルなら、当然だが加速力は上である。
サーキットを1周して、走行モードをNORMALからSPORTに切り替えると、アクセルの踏みはじめから、得られる加速力が段違いなのが分かる。また、SPORTモードでは、コーナリング中の前後の荷重配分を後輪寄りにして前輪の荷重を軽くし、そのぶんタイヤの摩擦力をクルマの向きを変えるために振り向けられるので、ステアリングの操作に対するクルマの応答性が向上し、コーナリング中のクルマの姿勢をコントロールしやすい。これには、今回の部分改良で実施された、構造用接着剤による車体の補強や、フロントとリアのショックアブソーバーの大径化、ステアリングギア比をクイックにしていることなども寄与しているだろう。
最新のライバル車にも十分太刀打ちできる
次に乗り換えた新型のSエディションでは、コーナリングでの安心感がさらに高まる。従来モデルと同様に、ビルシュタイン製のショックアブソーバーを採用しているのだが、他の仕様に比べて減衰力を上げて、コーナリング中のロール速度を低くしている。このため車体の姿勢が安定し、より高いコーナリング速度でも安心してステアリングを切ることができるのだ。今回はサーキットのみの試乗なので乗り心地についての評価は控えたいが、少なくとも減衰力アップによる悪影響は感じなかった。
現行型のアウトランダーが登場してから約5年が経過し、その間に同じクラスのSUVでは相次いで新型の競合車が登場している。国産車では「マツダCX-5」や「日産エクストレイル」などがそれに当たるし、外国車では「フォルクスワーゲン・ティグアン」や「アウディQ3」「BMW X1」「ボルボXC40」など枚挙にいとまがない。そうした中にあって、アウトランダーは内装デザインに若干の古さを感じないでもないが、PHEV仕様を用意しているという明確な違いがある。パワートレイン以外の部分でも、走行性能に関しては十分に対抗できる水準を維持していると感じる。新しいプラットフォームでなくてもいいクルマはできるというエンジニアの意地を、今回の試乗では感じた。
(文=鶴原吉郎<オートインサイト>/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
三菱アウトランダーPHEV Sエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4695×1800×1710mm
ホイールベース:2670mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:128ps(94kW)/4500rpm
エンジン最大トルク:199Nm(20.3kgm)/4500rpm
モーター最高出力(前):82ps(60kW)
モーター最大トルク(前):137Nm(14.0kgm)
モーター最高出力(後):95ps(70kW)
モーター最大トルク(後):19.9kgm(195Nm)
タイヤ:(前)225/55R18 98H/(後)225/55R18 98H(トーヨー・プロクセスR44)
ハイブリッド燃料消費率:18.6km/リッター(JC08モード)/16.4km/リッター(WLTCモード)
価格:--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
三菱アウトランダーPHEV Gプラスパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4695×1800×1710mm
ホイールベース:2670mm
車重:1890kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:128ps(94kW)/4500rpm
エンジン最大トルク:199Nm(20.3kgm)/4500rpm
モーター最高出力(前):82ps(60kW)
モーター最大トルク(前):137Nm(14.0kgm)
モーター最高出力(後):95ps(70kW)
モーター最大トルク(後):19.9kgm(195Nm)
タイヤ:(前)225/55R18 98H/(後)225/55R18 98H(トーヨー・プロクセスR44)
ハイブリッド燃料消費率:18.6km/リッター(JC08モード)/16.4km/リッター(WLTCモード)
価格:--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鶴原 吉郎
オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。
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