第525回:スゴ腕テスターの走りを体験!
助手席で知った新型メガーヌ ルノースポールの魅力と実力
2018.08.31
エディターから一言
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新型「ルノー・メガーヌ ルノースポール」(以下、メガーヌR.S.)の日本導入に合わせ、ルノースポールの“走り”を決めるキーマンが来日。驚きのドライビング技術を持つ2人の運転を通し、新しいメガーヌR.S.の実力を体験した。
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R.S.の実力をスゴ腕ドライバーの走りで知る
例えばスポーツカーなんかだと、いくら取材で借りたとしても公道では……というか、レーサーでもテストドライバーでもないぺーぺー編集部員の私では、実力を引き出せる範囲に限度ってものがある。メーカーのブランドイメージをけん引するハイパフォーマンスモデルともなれば、なおのことだ。
だからこそ、今回ルノー・ジャポンが開いたイベントは、個人的にもホントに興味深いものだった。タイトルは「新型メガーヌ ルノースポール ワークショップ」。いよいよ日本で発表&発売された新型メガーヌR.S.の実力を、同車を鍛えた2人のキーマンのドライビングで体感できるというものだ。しかもステアリングを握るのは、かつてニュルブルクリンク北コースで“FF車最速タイム”を記録したテストドライバーのロラン・ウルゴン氏と、ルノースポールのキモ中のキモであるシャシーのチーフエンジニア、フィリップ・メリメ氏である。記者は普段の試乗会とはまた違う緊張感をもって、会場である日本サイクルスポーツセンターへと向かった。
早速、助手席で感じたメガーヌR.S.の走りと、ウルゴン氏&メリメ氏のドラテクについて語りたいのだが、その前に新型メガーヌR.S.のおさらいをさせていただく。
2代目ルノー・メガーヌの時代に誕生したメガーヌR.S.は、今回の新型で3代目。2017年9月のフランクフルトショーで世界初公開され、日本でも同年の東京モーターショーでお披露目された。それから実に10カ月。ルノーファンをジラしにジラして日本導入が開始された新型メガーヌR.S.は、業界随一のハンドリングオタク軍団として誉れ高い(失礼!)、ルノー・スポールの面目躍如なクルマに仕上がっていた。ポイントはもちろん、マニアックな足まわりだ。
高い運動性能を支えるこだわりの足まわり
まず注目すべきなのが、「メガーヌGT」にも採用される4輪操舵の「4コントロール」。高速域では最大1°で前輪と同位相に、低・中速域では最大2.7°で逆位相に後輪をステアさせるこの機能により、メガーヌR.S.は低速コーナーでは鋭い回頭性を示しつつ、高速コーナーはドッシリ安定した挙動で駆け抜ける。ルノーがこのシステムの開発に要した時間は実に3年。その間は試行錯誤の連続で、4カ月もかけて製作したパラメーターを、わずか1日で廃棄する羽目になったこともあるのだとか。
ちなみに、というか当然ながらというか、今回R.S.に採用される4コントロールは、GTのそれとは制御が違う。特にドライブモードセレクターでR.S.専用の「レース」モードを選んだときには、リアステアが逆位相から同位相になる速度が引き上げられる。具体的には、車速が100km/h未満の状態では後輪は逆位相のままなのだ。99km/hでコーナーに突っ込んでも逆位相。この制御の理由は「各サーキットにおける高速コーナーと低速コーナーの境目が、だいたい100km/hだったから」とのこと。「飛ばさなければ、サイクルスポーツセンターのコーナーは全部逆位相だね(笑)」というメリメ氏に、ルノー・スポールの神髄を見た。
そんな専用チューンの4コントロールと並んで特筆すべきなのが、「HCC」と呼ばれるこれまた凝ったダンパーだ。このダンパーは、筒内の底部にセカンダリーダンパーが仕込まれている。路面から大きな入力が入ってメインダンパーが大きく縮むと、セカンダリーダンパーが減衰力を発生し、バンプストップラバーの代わりにストロークを抑制するという仕組みだ。
利点はいくつかある。まずはバンプストップラバーのようにストロークをはね返したり、振動をホイールに伝えたりしないので、大きな入力があってもタイヤが容易にグリップ力を失わない。また資料によると、減衰のリニアな制御による快適な乗り心地も魅力として挙げられていた。
踏襲されたR.S.伝統のフロントサス
最後に紹介するのが、ルノー・スポールのファンなら記者以上に詳しいだろう、「ダブルアクシスストラットサスペンション」(DASS)である。釈迦(しゃか)に説法で恐縮だが、初代メガーヌR.S.から採用されているこのフロントサスペンションは、ストラットの外側に、ホイール内に押し込むようにして転舵軸を設けた構造が特徴だ。コーナーの出口などで発生するトルクステアを抑制し、またサスペンションの上下動に影響されることのない正確なステアリング操作を可能にするという。
このほかにも、279psを発生する1.8リッター直4直噴ターボエンジンに、大トルクに対応した6段デュアルクラッチ式AT、専用チューニングの「ブリヂストン・ポテンザS001」などなど、すくい上げるべきポイントは山ほどあるのだが、恐れながら紙面の都合で割愛である。気になる人は、間もなく公開される試乗記をぜひご覧ください。
ここからは、いよいよ同乗体験である。もろもろの説明を受けた記者を運転席で迎えてくれたのは、まずはシャシーの開発を統括するフィリップ・メリメ氏だった。
「サイクルスポーツセンターは、本気で走ったことある?」
「コーナー数の多さとアップダウンの激しさが特徴のコースだと理解しています(走ったことがあるとは言っていない)」
「OK、コースを知っている人の方が理解しやすいと思うからね」
メリメ氏はそう言うと、ウエット路面もどこ吹く風で第1コーナーへと突っ込んでいった。
運転の仕方が全然違う
「このハンドル舵角を見てくれよ。急なコーナーも少ない操作量でクリアできるんだ」
そう話しながら(厳密には、そう話しているのは後席の通訳さんだが)喜々としてコーナーをクリアしていくメリメ氏。4コントロールの説明で聞いていた通り、メガーヌR.S.は小さなステアリング操作でズバンズバン旋回する。しかも、メリメ氏は「アクセルを踏んでる時間でタイムを稼ぐ」主義のようで、コーナー出口では床も抜けよとスロットルペダルを踏みつける。しかしやはり、トルクステアを腕力で押さえつけているそぶりは見られない。クルマ自体は前後左右にどっすんばったんだが、運転するメリメ氏は実にリラックスしたものだ。
「昨日はピーカンで今日は雨。コースのコンディションは全然違うけど、メガーヌR.S.ならこうして安心して走れるんだ」
それに関しては、昨日のサイクルスポーツセンターを体験していない記者には比較検証はできない。そんなことより、リアシートで気持ち悪そうにしている通訳さんの様子が心配でならなかった。
メリメ氏の運転による2周の同乗体験を終え、続いてロラン・ウルゴン氏の乗るメガーヌR.S.へ移動。まず驚かされたのが、(クルマの話ではなくて恐縮だが)メリメ氏との運転の違いだった。ともに素晴らしいドライビング技術を持つおふたりだが、助手席での印象は本当に真逆。ウルゴン氏はとにかく運転がスムーズ。狭いサイクルスポーツセンターをとんでもない速度で走っているのに、不思議と速度感がない。
もちろん、この速度感(というか、それに伴う不快な緊張感)のなさは、クルマそのものの特徴にも起因しているのだろう。同乗前の説明によると、4コントロールとHCC、DASSの組み合わせにより高いコーナリング性能を確保したメガーヌR.S.は、過度にサスペンションを締め上げる必要がなかったのだとか。そんな事情とHCCの特性により、このクルマはゴリゴリのハイパフォーマンスカーなのに乗り心地がいい。先ほど述べたトルクステアのなさとも相まって、ドライバーにとっても同乗車にとっても、走り味がスムーズなのだ。……と思う。すいません。記者は運転していないので。
ハイテクに頼り過ぎないハイパフォーマンスカー
「メリメさんもそうでしたけど、ウルゴンさんもとてもリラックスして運転して見えますね」
「そうだよ。メガーヌR.S.はとてもイージーに、ハイレベルな運転を楽しめるんだ」
このときの同乗では通訳さんがいなかったので細かい部分はあやしいが、記者のつたない英語のコメントに、ウルゴン氏はやはり英語で、そんな風に答えていた。
最後に、そんなウルゴン氏.が唯一急なハンドルさばきを見せたのが、広いストレートでの疑似ダブルレーンチェンジである。公道では試せない速度域での急ハンドルだったが、メガーヌR.S.とポテンザS001のコンビは、ウエット路面にもかかわらず、グリップを失ったり挙動を乱したりするようなそぶりを見せなかった。走行モードは「レース」だったので姿勢制御は切れていたはず。人もクルマも、本当にお見事でした。
ルノー・メガーヌR.S.は、きっとすさまじいハンドリングマシンなのだろう。そして同時にユニークなのが、こうした高い運動性能をアナログというか、メカを磨き上げて追求していることだ。駆動方式は複雑怪奇な四駆ではなくシンプルなFFだし、駆動トルクのアクティブ可変制御もない(ブレーキ制御によるトルクベクタリングはあるが)。可変構造や電子制御ではなく、内部の“からくり”でパフォーマンスを出そうとしたダンパーなどは最たる例だろう。
職人が走り込んで「これでどうや!」と走りを決めた、今どきちょっと珍しいハイパフォーマンスカー。それが、いろいろな人から話を聞き、同乗体験を通して記者が感じた新型メガーヌR.S.の印象である。
(文と写真=webCGほった)

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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