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第4回:スズキ・ジムニー/ジムニーシエラ(後編)

2018.09.19 カーデザイナー明照寺彰の直言
「スズキ・ジムニーシエラJC」
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「スズキ・ジムニー/ジムニーシエラ」のデザインを“完成している”と評した、現役カーデザイナーの明照寺氏。スズキが誇るもう1台の「デザイン的傑作」の話題も交えつつ、軽自動車のデザインの難しさ、ジムニーの造形の“すごさ”を語った。

2013年のクリスマスイブに発表、翌年1月に発売された「スズキ・ハスラー」。スタイリッシュな軽クロスオーバーとして、今でも根強い人気を保っている。
2013年のクリスマスイブに発表、翌年1月に発売された「スズキ・ハスラー」。スタイリッシュな軽クロスオーバーとして、今でも根強い人気を保っている。拡大
「ハスラー」の凝ったデザインを象徴するボディーサイドの処理。フェンダーパネルをふくらませつつ、ホイールアーチの縁に沿ってへこませることで、ホイールアーチが張り出しているように見せているのだ。
「ハスラー」の凝ったデザインを象徴するボディーサイドの処理。フェンダーパネルをふくらませつつ、ホイールアーチの縁に沿ってへこませることで、ホイールアーチが張り出しているように見せているのだ。拡大
今回のテーマはあくまで「スズキ・ジムニー/ジムニーシエラ」だが、スズキがいかに軽自動車のデザインに卓越しているかを知るためにも、しばらくは「ハスラー」にまつわるトークをお楽しみください。
今回のテーマはあくまで「スズキ・ジムニー/ジムニーシエラ」だが、スズキがいかに軽自動車のデザインに卓越しているかを知るためにも、しばらくは「ハスラー」にまつわるトークをお楽しみください。拡大

今日のスズキを代表するもう1台の“傑作”

プロも絶賛の新型ジムニーのデザインだが、その裏には「ハスラー」の成功もあると聞く。つまり、ハスラーで新しい軽SUV像を打ち出せたからこそ、ジムニーは思い切って原点回帰できたと、スズキの開発陣は語っていたのだが……。

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明照寺彰(以下、明照寺):僕も、スズキといえば個人的にはハスラーです。ハスラーのデザインは、軽自動車の中でも一番かなと思っています。

永福ランプ(以下、永福):同感です。新しいのに奇をてらってない。シンプルでかわいくて力強い。

明照寺:ハスラーの何がすごいかというと、軽自動車はドア断面とかフェンダー部分に、寸法の余裕がまったくないわけですよ。その中で、わずかな寸法をうまく使って、結構丸みや厚みを感じさせているんです。

永福:そういうところですか!

明照寺:フェンダー部を見ると、上側のブリスターがしっかり付いて、その下に黒のクラッディング(樹脂部分)をこう回しているじゃないですか。だから、断面でいくと、1回出て引っ込んで、また出てって感じで、2段になっている。こういうことは、普通のクルマではしないです。「軽自動車を知りつくしてるな」って思いますね。

永福:実際には、オーバーフェンダーは出っ張ってないけど、出っ張っているように見せているということですか?

明照寺:そうです。

スズキ の中古車

唯一の弱点はステアリングホイール

明照寺:ドアも、上下のほぼ真ん中をへこませて分断していますけど、普通に考えると真ん中というのは、あまりよろしくないんです。デザインって、2対1とか、どちらかに偏らせて主従関係をつけるのが鉄則なんですけど、ハスラーは真ん中でぶった切ってる。

永福:デザイナー的にはこれは、ぶった切っているんですね(笑)。

明照寺:ただこれも、へこみの下側のエッジを極力シャープに、上側をなだらかにしている。軽の寸法の中で、すごくいろんなことをやってるなと感心します。一見、そういうワザ的なところは見えないんですけど。

ほった:なるほど。……今のところ、ジムニーも、スズキの軽デザイン全般についても、本当に大絶賛なわけですけど、弱点はないんでしょうか。

明照寺:ジムニーに関しては、強いて言えばインテリアですね。ステアリングホイールだけ表情が違うじゃないですか。多分、別のクルマに付いているものだと思うんですけど。これはもったいなかった気がします。

永福:それくらいの部品の共通化は、仕方ない気がしますけどね~(笑)!

ほった:それと、自分はこのクルマ、まずシエラありきでデザインしたんじゃないかと思ったんですけど。

明照寺:それはあるかもしれません。

ほった:軽のジムニーだと、真正面から見たときに、とにかく顔がデカく見えるんです。ただ、シエラのオーバーフェンダーが付くと、すごくバランスが取れて、まとまって見える。

明照寺:多分いろいろ考えたんじゃないでしょうか。確かに軽のジムニーは、顔の左右幅が少し長すぎる。ボディーの端の端まで顔で使っています。その分、足元の踏ん張り感は足りないですね。でもサイドから見るとオーバーハングは短いので、これくらいは許容範囲かな。

ドアパネルを横断するプレスラインに注目。通常は上か下に寄せて施すものだが、「ハスラー」ではほぼ中央を、ドアパネルを2分するようにして走っている。また、ラインの上下でパネルの凹凸を逆にするなど、一見シンプルに見えて、実は非常に凝った処理となっているのだ。
ドアパネルを横断するプレスラインに注目。通常は上か下に寄せて施すものだが、「ハスラー」ではほぼ中央を、ドアパネルを2分するようにして走っている。また、ラインの上下でパネルの凹凸を逆にするなど、一見シンプルに見えて、実は非常に凝った処理となっているのだ。拡大
永福:「このステアリングホイール、どこかで見覚えが……」
ほった:「多分『スイフト』ですね。真円形のリムは別ですが、スポークやセンターパッドは恐らく共用です」(写真=田村 弥)
永福:「このステアリングホイール、どこかで見覚えが……」
	ほった:「多分『スイフト』ですね。真円形のリムは別ですが、スポークやセンターパッドは恐らく共用です」(写真=田村 弥)拡大
「ジムニー」を真正面から見たところ。黒い樹脂パーツで一体化された“顔”に注目。ボディーの端から端まで、ボディーめいっぱいの幅を使っているのが分かる。(写真=荒川正幸)
「ジムニー」を真正面から見たところ。黒い樹脂パーツで一体化された“顔”に注目。ボディーの端から端まで、ボディーめいっぱいの幅を使っているのが分かる。(写真=荒川正幸)拡大
真正面から見たら、いささか踏ん張り感が不足して見える「ジムニー」だが、前後のオーバーハングが極端に短いため、そのほかの角度から見ると、そうした印象はほとんど感じられない。(写真=荒川正幸)
真正面から見たら、いささか踏ん張り感が不足して見える「ジムニー」だが、前後のオーバーハングが極端に短いため、そのほかの角度から見ると、そうした印象はほとんど感じられない。(写真=荒川正幸)拡大

線を引いたデザイナーがうらやましい

ほった:開発の人たちは、フロントマスクの角を丸めたら、見切りが悪くなると考えたのかもしれませんね。

明照寺:なるほど。こういうクルマですし、実用性も考えてるのかもしれません。ただ、シエラのオーバーフェンダーを付けると実際こんなにしっかり見えるじゃないですか。デザイナーとしては、「こういうやり方もアリだな」と思いました。

永福:こういうやり方というのは?

明照寺:われわれの仕事って、車幅が最初に決められていて、その中でどうしようかなと考えるわけですけど、ジムニーとジムニーシエラを見ると、最初の条件よりも幅の狭いデザインをしてやれば、最後にこんなにボーナスが付けられるということです。全然踏ん張り感が違いますから。

永福:まさにデザイナーならではの感想ですね!

ほった:そろそろまとめたいのですが、ジムニーはデザイン的には傑作なんですか?

明照寺:このタイプでやるんだったら、もうこれしかないんじゃないでしょうか。前のジムニーに比べても、サイドビューがスポーティーでしょう。これだけでもオッケーですよ。「箱だけどスポーティー」という。ラングラーに近い比率ですね。

永福:それにしても、スズキのデザインには傑作が多いですよね。

明照寺:多いです。

永福:最後に、ジムニーのデザインをひと言で表すと? 僕は「おふくろの味」だったんでが。

明照寺:難しいですね。細部までやり切っていて、今回は同じデザイナーとして、ただただ「うらやましい」としか言えないですね。

ほった:「作り手がうらやましくなるデザイン」ということで、よろしいでしょうか。

永福:見方がまるで違うな~(笑)。

(文=永福ランプ<清水草一>)

四角く、はっきりと角のあるフロントまわりの形状は、運転席からの“見切りのよさ”を重視したもの。障害物の多いオフロードを走ることを想定したものだ。(写真=田村 弥)
四角く、はっきりと角のあるフロントまわりの形状は、運転席からの“見切りのよさ”を重視したもの。障害物の多いオフロードを走ることを想定したものだ。(写真=田村 弥)拡大
1475mmという「ジムニー」の全幅に対し、「ジムニーシエラ」のそれは1645mm。左右のオーバーフェンダーで、実に17cm(!)もボディーが“かさ増し”されているのだ。(写真=向後一宏)
1475mmという「ジムニー」の全幅に対し、「ジムニーシエラ」のそれは1645mm。左右のオーバーフェンダーで、実に17cm(!)もボディーが“かさ増し”されているのだ。(写真=向後一宏)拡大
小型車バージョンの「ジムニーシエラ」ですら、新型「ジープ・ラングラー」(3ドア、本国仕様)と比べると、幅が23cm、ホイールベースが21cmも小さい。限られた寸法の中で、この存在感をかなえたデザイナーには、本当に拍手である。
小型車バージョンの「ジムニーシエラ」ですら、新型「ジープ・ラングラー」(3ドア、本国仕様)と比べると、幅が23cm、ホイールベースが21cmも小さい。限られた寸法の中で、この存在感をかなえたデザイナーには、本当に拍手である。拡大
「ジムニー/ジムニーシエラ」は、スポーティーな全体のフォルムからこだわりの感じられるディテールまで、とにかく“やり切った”感のあるデザインに仕上がっていた。
「ジムニー/ジムニーシエラ」は、スポーティーな全体のフォルムからこだわりの感じられるディテールまで、とにかく“やり切った”感のあるデザインに仕上がっていた。拡大
明照寺 彰

明照寺 彰

さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。

永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。

webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。

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