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ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン(4WD/8AT)

イメージリーダーかくあれかし 2018.09.10 試乗記 塩見 智 「Gクラス」と「ジムニー」ばかりが目立っているが、本格オフローダーといえば「ジープ・ラングラー」を忘れてはいけない。世界有数の悪路といわれるアメリカ・ルビコントレイルで、新型の出来栄えをチェックした。

四角い見た目はそのまんま

2018年新春のデトロイトショーで実物を見てホッとした。新型ジープ・ラングラーがこれまでと見た目がほとんど変わっていなかったからだ。だれもこのクルマの姿が大きく変わることを望んでいない。「ポルシェ911」みたいなものだ。911が角目になったら皆怒るはず。このクルマもそう。丸く流麗なラングラーなどあり得ない。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)よ、ありがとう。あとはCAFE(企業別平均燃費基準)を満たすべく、他のモデルで効率アップを図っていただきたい。「フィアット500」をすべて電気自動車にしてでもラングラーを将来にわたって四角のまま保ってほしい。

ラングラーは2007年発売の現行JK型で初めて4ドアの「アンリミテッド」が設定された。これが大当たりし、(特に日本では)アンリミテッドばかりが売れた。これを受け、今度のJL型は、本国アメリカでは2ドア、4ドアともに販売されるものの、日本にはアンリミテッドのみが導入される。まあ、ラングラーは長く販売されるモデルなので、どこかのタイミングで2ドアも特別限定車として入ってくるだろう。この度の国際試乗会では両方試乗したが、ここではアンリミテッドに限って報告したい。

新型のアンリミテッドは全長4785mm、全幅1875mm、全高1868mm、ホイールベース3008mmと、現行型よりも全長が80mm、ホイールベースは63mm長くなった。幅と高さはほぼ変わらない(ただし現行の日本仕様と新型の本国仕様との比較)。ホイールベースの延長はすべて後席足元空間の拡大に充てられた。新型でも後席は広々というわけではないが、現行よりは過ごしやすくなった。また、現行の後席は背もたれの角度が立ち過ぎていて長時間乗車するのはつらかったが、新型ではいくぶん改善された。

2017年12月のロサンゼルスモーターショーでデビューした新型「ジープ・ラングラー」。筆者は2018年初頭のデトロイトモーターショーで実車を初めて目撃した。
2017年12月のロサンゼルスモーターショーでデビューした新型「ジープ・ラングラー」。筆者は2018年初頭のデトロイトモーターショーで実車を初めて目撃した。拡大
日本には4ドアの「アンリミテッド」のみがカタログモデルとして導入される見込みとなっている。
日本には4ドアの「アンリミテッド」のみがカタログモデルとして導入される見込みとなっている。拡大
7スロットグリルやシンプルな丸目のヘッドランプ、オーバーフェンダーといった特徴的なディテールはしっかりと踏襲されている。
7スロットグリルやシンプルな丸目のヘッドランプ、オーバーフェンダーといった特徴的なディテールはしっかりと踏襲されている。拡大
インテリアでは、奥行きがなく切り立ったダッシュボードや助手席手前のバーハンドルといったディテールを先代から受け継ぎながら、全体をよりモダンなデザインとしている。
インテリアでは、奥行きがなく切り立ったダッシュボードや助手席手前のバーハンドルといったディテールを先代から受け継ぎながら、全体をよりモダンなデザインとしている。拡大
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エンジンのラインナップは2種類

冒頭で見た目は変わらないと書いたが、変わらないように見せているものの、実際には微妙にアップデートが図られている。フロントグリルの上半分がわずかに折り曲げられてスラントしたほか、トップは前後が絞り込まれた形状が採用された。いずれも空力性能および静粛性の向上のため。全体では空力性能が約9%向上したという。四角いことで実現しているワイルドさを保ちつつ、うまくやったといえるのではないか。歴代ラングラー同様、ハードトップとすべてのドアを取り外せるほか、フロントウィンドウを前へ倒すことができるが、日本ではその状態で公道を走ることは許されない。

世界有数の悪路として知られ、アメリカのカリフォルニア州とネバダ州の境にあるルビコントレイルで試乗した。ラングラーの最上級グレードには「ルビコン」という名が付くが、これはルビコントレイルに由来する。ここを走破できればどこでも走破できるということから、歴代ラングラーはここを開発拠点に据えているのだ。ややこしいが、今回試乗したのもすべて(グレードとしての)ルビコンだ。

新型には従来の3.6リッターV6エンジン(最高出力284ps/6400rpm、最大トルク353Nm/4800rpm)に加え、2リッター直4ターボエンジン(同270ps/5250rpm、同400Nm/3000rpm)が追加された。両エンジンは特性は違うが、出力などの数値はあまり大きな差がない。おそらく複数用意することで幅広い仕向け地に適合させるのが本来の目的ではないだろうか。

歴代モデルと同様、新型でもハードトップとすべてのドアを取り外し、フロントウィンドウを前に倒すことができる。しかし、日本ではこの状態で公道を走ることはできないのでご用心。
歴代モデルと同様、新型でもハードトップとすべてのドアを取り外し、フロントウィンドウを前に倒すことができる。しかし、日本ではこの状態で公道を走ることはできないのでご用心。拡大
今回の試乗は、歴代「ラングラー」が開発拠点に据えている、アメリカはルビコントレイルで行った。ロックセクションが続く、世界でも有数の悪路として知られる地域だ。
今回の試乗は、歴代「ラングラー」が開発拠点に据えている、アメリカはルビコントレイルで行った。ロックセクションが続く、世界でも有数の悪路として知られる地域だ。拡大
「ルビコン」は「ラングラー」のグレード名としても用いられており、オフロードタイヤを標準装備する“本格派”グレードとなっている。前後のデフロック機構が備わるのもルビコンのみ。
「ルビコン」は「ラングラー」のグレード名としても用いられており、オフロードタイヤを標準装備する“本格派”グレードとなっている。前後のデフロック機構が備わるのもルビコンのみ。拡大

前後リジッドアクスルは守られた

まずは新エンジンのアンリミテッドから試乗した。ターボなので街乗りでもう少し力強いかなと思ったが、2034kgの車重が響いているのか、さほど力強さは感じない。実用上不満が出るほど非力なわけでもない。主張せず縁の下の力持ちに徹している感じ。ルビコントレイルのようなロックセクションの連続では、副変速機をローに入れ、極低回転で、歩くよりもゆっくりと走らせることが多いのだが、ターボエンジンの気難しさを感じさせず、頼もしく感じた。3.6リッターV6に乗り換えると、悪路ではさほど違いを感じなかったが、V6ならではのスムーズな回転フィーリングのおかげで、オンロードでは直4ターボよりも気持ちよく走らせることができた。とはいえ、決定的な差はないので、排気量によって税金が変わらないアメリカならV6を選ぶが、小排気量のほうが自動車税が安い日本なら直4ターボを選びたい。従来の5段ATから3段飛びで進化した8段ATは、どちらのエンジンであれ快適性を高めてくれた。

感動するのは、前後リジッドアクスルを含むフレームシャシーの頑強さと足の長さだ。リジッドアクスルというのは左右輪が1本の梁(はり)でつながっているため、一方が縮めば反対側は伸びる。両輪に同時に大きな入力が入っても両輪が同時に大きく縮むことがないので、ボディー底部を打ち付ける心配が少ない。車高を上げてロードクリアランスを増やすのも簡単だ。半面、オンロードで目地段差を通過する時など、左右輪に同時に入力があると乗員はガツンと大きな衝撃を受けるというデメリットがある。重くもなりがち。

最近では例えば「レンジローバー」のようにエアサスによって(前後リジッドの反対語といえる)4輪独立懸架でも悪路走破性を高めることができるようになった。前後リジッドアクスルは伝統的な手法であり、採用するのはラングラーのほかには「ジムニー」くらいになった(「ラーダ・ニーヴァ」や「UAZ」あたりがどうなのかは知らない)。ラングラーは新型もその伝統的な足まわりを継続し、もともと他のどのクルマにも負けないレベルの悪路走破性の高さを受け継いだ。メディア一行が分乗した17台のラングラーは、歩くのも大変な岩場を、接地面積を増やすために空気圧を減らしたオフロードタイヤでつかみ、ゆっくりと前進し、時にボディー底部を岩に当ててギギーッといやな音を立てながらも1台もスタックすることなく、全車が全行程を走破した。

ラダーフレームシャシーや前後のリジッドアクスル式サスペンションといった、悪路走破性を高めるディテールはきっちりと守られている。
ラダーフレームシャシーや前後のリジッドアクスル式サスペンションといった、悪路走破性を高めるディテールはきっちりと守られている。拡大
トランスミッションは6段MTに加えて、従来型から一気に3段増えた8段ATが採用される。写真右がシフトセレクターで、左はパートタイム4WDの操作レバー。
トランスミッションは6段MTに加えて、従来型から一気に3段増えた8段ATが採用される。写真右がシフトセレクターで、左はパートタイム4WDの操作レバー。拡大
新たに設定された2リッター直4直噴ターボエンジンは、最高出力284ps、最大トルク400Nmを発生。ブロックとヘッドにはアルミニウムを採用する。
新たに設定された2リッター直4直噴ターボエンジンは、最高出力284ps、最大トルク400Nmを発生。ブロックとヘッドにはアルミニウムを採用する。拡大
ルビコントレイルを行く新型「ラングラー」の隊列。メディア一行が分乗した全17台は、1台もスタックすることなく、約22マイルの行程を走破した。
ルビコントレイルを行く新型「ラングラー」の隊列。メディア一行が分乗した全17台は、1台もスタックすることなく、約22マイルの行程を走破した。拡大

ラングラー初のフルタイム4WDも登場

もうひとつどうしても報告すべきことがある。もしかすると今回のモデルチェンジの、一番のトピックはこのことかもしれない。この試乗会では試すことができなかったのだが、「サハラ」グレードに新しい4WDシステムが採用されたのだ。標準装備されるのは「スポーツ」グレードと同じ「コマンドトラック」というパートタイム4WDなのだが、「グランドチェロキーSRT8」などにも備わるフルタイム4WDの「セレクトラック」がオプションとして設定される。フルタイム4WDはラングラー(と呼ばれる前の「MB」「CJ」時代を含め)史上初のこと。日本仕様のサハラの標準装備がどちらになるかわからないが、フルタイム4WDといえどもローレンジを備える本格的システムなので、ルビコントレイルに挑むのでもない限り、先進国のほとんどのユーザーに適しているのはこちらだろう。特に悪路に挑む機会の少ない日本市場では、これが新型ラングラーの本命になるのではないだろうか。早く試してみたい。

7月に亡くなったFCAのセルジオ・マルキオンネ前CEOが死の直前に後継に指名したのはジープ責任者のマイク・マンリー氏。これはFCAはこの先もジープブランドを重視していく、あるいはしていくべきだというマルキオンネ氏の遺志といえよう。そのためにも、新型ラングラーはアイコニックなスタイリングと必要以上の悪路走破性をもってして、ブランドのイメージをブーストしなければならない。ルビコントレイルを楽々走行できたことで、少なくとも私の中でジープのヒロイックなイメージはブーストしまくったのであった。

(文=塩見 智/写真=FCA/編集=藤沢 勝)

今回は試すことができなかったが、「サハラ」グレードには「ラングラー」史上初となるフルタイム4WDがオプション設定されている。
今回は試すことができなかったが、「サハラ」グレードには「ラングラー」史上初となるフルタイム4WDがオプション設定されている。拡大
ホイールベースの延長分は、すべて後席の足元空間の拡大に充てられる。後席については、背もたれの角度も従来型よりも(少し)後ろに寝かされ、快適性がアップしている。
ホイールベースの延長分は、すべて後席の足元空間の拡大に充てられる。後席については、背もたれの角度も従来型よりも(少し)後ろに寝かされ、快適性がアップしている。拡大
計器類のデジタル化も進められており、メーターパネルの中央にはカラーのマルチインフォメーションディスプレイが備わる。
計器類のデジタル化も進められており、メーターパネルの中央にはカラーのマルチインフォメーションディスプレイが備わる。拡大
ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン
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ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン(4WD/8AT)【海外試乗記】の画像拡大

テスト車のデータ

ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1875×1868mm
ホイールベース:3008mm
車重:2021kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:284ps(209kW)/6400rpm
最大トルク:353Nm(36.0kgm)/4800rpm
タイヤ:(前)LT285/70R17C/(後)LT285/70R17C(BFグッドリッチKO2オールテレイン)
燃費:シティー=18mpg(約7.7km/リッター)、ハイウェイ=23mpg(約9.8km/リッター)、複合=20mpg(約8.5km/リッター)(米国EPA値)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン
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ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1875×1868mm
ホイールベース:3008mm
車重:2034kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:270ps(200kW)/5250rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/3000rpm
タイヤ:(前)LT285/70R17C/(後)LT285/70R17C(BFグッドリッチKO2オールテレイン)
燃費:シティー=22mpg(約9.4km/リッター)、ハイウェイ=24mpg(約10.2km/リッター)、複合=22mpg(約9.4km/リッター)(米国EPA値)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

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