アストンマーティンDBSスーパーレッジェーラ(FR/8AT)/ヴァンテージ(FR/8AT)
蹴り出す快感 2018.10.02 試乗記 公約通り、ほぼ9カ月に1台の割合でニューモデルを市場投入しているアストンマーティン。フラッグシップモデルとして誕生した「DBSスーパーレッジェーラ」の実力を試す場としてふさわしいのは、やはりサーキットである。伝統のネーミングを二段盛り
最近のアストンマーティンの勢いときたら、工場なのか工房なのか見分けがつかなかったニューポートパグネル時代をじかに見ているオヤジ世代にとっては、戸惑いを通り越して心配になるほどだ。
何しろ2015年からの7年間に毎年1台ずつのニューモデルを市場に投入するという。今のところ派手な打ち上げ花火に終わらず、着実に実行されているようでひと安心だが、そんなに鼻息荒く飛ばさなくても、というのが正直な気持ちである。
振り返ってみれば、2005年にデビューした「V8ヴァンテージ」のヒットによって完全に復活したのはつい10年ちょっと前のことにすぎない。“復活”とは言ったが、それ以前の健全な時代はいったいいつのことなのかも定かではない。
100年を超える歴史の中で、何度も瀕死(ひんし)の状態に陥り、その度に生き延びてきたアストンマーティンは、まさに七転び八起きを地で行くようなブランドだ。もはや出る幕はないだろう、と見なされたこともあったが、しっかりしぶとく何度でも立ち上がる不撓不屈(ふとうふくつ)の名門は極めて英国的といえるかもしれない。
フラッグシップモデルに「DBS」と名付け、さらに「スーパーレッジェーラ」をトッピングできるのも、一世を風靡(ふうび)した歴史を持つそんなアストンマーティンなればこそ、である。
オリジナルのDBSは1960年代に発売された高性能モデルだが、初代「ヴァンキッシュ」の後継モデルとして2007年にDBSは一度復活。いっぽうスーパーレッジェーラとはかつてミラノのカロッツェリア・トゥーリングが専売特許にしていたボディー製作法で、“超軽量”を意味する。細い鋼管チューブラーフレームでボディーの骨格を組み立て、その上にアルミパネルをリベットで貼り付ける構造であり、アストンマーティンは1950~60年代の「DB4」「DB5」「DB6」の時代に採用していた。
新型DBSのボンネットにも当時のように斜めにその文字が貼り付けられている。輝かしい歴史を持たない新興メーカーからすれば、ちょっと反則ではないかと文句をつけたいぐらいの遺産の有効活用であり、その名前だけで、もう勝負あったといえるほどの伝統のダブルネームである。
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