ホンダCB125R(MR/6MT)
ベテランよ来たれ 2018.10.06 試乗記 オートバイ本来の楽しさを追求して開発された、ホンダのコンパクトスポーツバイク「CB125R」。トラディショナルでありながら新しいという“ネオスポーツカフェ”の走りは、これまでの小排気量モデルとどう違う?ただいま人気のカテゴリー
最近、125ccスポーツバイクの人気が高くなってきている。「維持費が安いから若いライダーたちに人気なんだろう」なんて思ったのだけれど、話を聞くと収入の関係で1台しか所有できない若者たちは、ロングツーリングから普段の街乗りなど総合的に使えるマシンが必要になる。そうなるとどうしても高速道路に乗れる250を選ぶことになるらしい。
それじゃあ誰が125に注目しているのかというと、実はベテランライダーたち。平均年齢が高くなってきて軽いバイクを求める声が少しずつ大きくなってきた。といっても乗り換えるのではなく、普段気軽に走ることができるセカンドバイクを増車するケースが増えてきたのである。
125なら維持費もさほどかからない。そして最近、走っても楽しいマシンが増えてきたことで、このクラスの注目度ががぜん高くなっているわけだ。
そんな中にホンダが送り込んできたブランニューモデルがCB125Rだ。兄貴分の「CB1000R」や「CB250R」と共通のデザインとなっているこのマシンは、細かな部分の作り込みもしっかりしていて、安っぽさがまったくない。
エンジンも元気がいい。始動してスロットルを大きくあけた瞬間、鋭く吹け上がって驚かされるほど。今までの125とはずいぶん感じが違う。
フライホイールマスがとても小さい感じなのだが、だとすれば低回転でギクシャクしたり粘り強さがなくなったりしてしまうはずなのだけれど、そういう乗りにくさは皆無。意識的に低回転で急激にクラッチをつないでもエンストしたりすることもない。
パワーが出てくるのは8000rpmくらいから。排気音が甲高くなって1万0500rpmぐらいまできれいに回る。高回転を常用して走るのは楽しい。これくらいの排気量だと普通に街を走るだけでもエンジンの性能を引き出して走る楽しさを味わうことができるし、回し切った時のフィーリングも単気筒らしからぬ爽快感がある。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
ハンドリングはマニアック
このバイク、超高回転型のツインエンジンを搭載した250スポーツバイクよりも街では使いやすく感じる。250はゆっくり走るか飛ばすかどちらかに限定すればいいのだけれど、普通に走っている状態から加速しようとした時、パワーバンドに入るまでに多少時間がかかって、それがストレスになってしまう。CB125Rは低速トルクもあるしパワーも低いところから盛り上がってくるから、タイムラグなく加速に移ることができるのだ。
メチャクチャにマニアックだなと思ったのがハンドリング。誰が乗っても乗りやすいのだけれど、サスペンションを含めた車体の方向性はとてもスポーティー。ステップ位置もスポーツライディングを意識した高さ。フロントフォークもしっかりしていて、ハードブレーキングしながらコーナーに突っ込んでいっても不安がない。スポーツバイク的に体重移動してステップやステアリングに荷重してやると、クイックに気持ちよく曲がっていく。
17インチタイヤでこの味付けだから、超低速でバイクを何となく倒そうとするような操作をすると、ステアリングがちょっと落ち着かない感じがするのだけれど、少し積極的にコントロールしていくと、どんどん楽しくなる性格だ。
ここまでスポーティーで本格的な125スポーツバイクは、これまでなかった。バイクにうるさいベテランオヤジライダー世代にぜひ乗っていただきたいモデルである。
(文=後藤 武/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2040×820×1055mm
ホイールベース:1345mm
シート高:815mm
重量:127kg
エンジン:124cc 水冷4ストローク単気筒 OHC 2バルブ
最高出力:13ps(9.8kW)/1万rpm
最大トルク:10Nm(1.0kgm)/8000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:53.0km/リッター(国土交通省届出値 定地燃費値)/47.2km/リッター(WMTCモード)
価格:44万8200円

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。