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ドゥカティ・ムルティストラーダ1260エンデューロ(MR/6MT)

オンもオフも 意のままに 2018.11.05 試乗記 河野 正士 ドゥカティ最新のアドベンチャーモデル「ムルティストラーダ1260エンデューロ」。電子制御サスペンションのセッティングを煮詰め、トルクフルな新エンジンを積むことで得られた走りの進化を、本国イタリアより報告する。
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バイクが小さく感じられる

ムルティストラーダ1260エンデューロ(以下、MTS1260ED)は、従来モデルと比べてコンパクトになった。そんな印象を受けた。

正確に言えば、それは違う。低くなったハンドル位置に合わせてタンク上面のデザインは変更されたものの、燃料タンク容量はほかのムルティストラーダより10リッターも多い30リッターを維持しているし、乾燥重量は先に発表された「1260S」に比べ13kg重い。スペックだけ見れば、2016年に初めてラインナップされた「1200エンデューロ」と大きな違いはない。しかしMTS1260EDを走らせると、それよりも明らかに小さく感じる。いや、あらゆる車体の動きが手の届く範囲に収まったことで、車体を小さく感じたのだ。

その要因のひとつはエンジンだ。MTS1260EDには、前モデルから64cc排気量がアップした1262ccのL型2気筒が搭載されている。先に発売された1260Sと同型のこのエンジンには、回転数に合わせてシームレスにバルブタイミングを変化させる可変バルブ機構が装備されており、最大トルクこそ以前と変わらないものの、その85%を3500rpmという低い回転域で発生。従来モデルと比較して4000~6000rpmという常用回転域のトルクが大幅に増大した。これにより、アクセル操作に対して車体をしっかり前に押し出してくれることはもちろん、シフトダウンをサボり、ひとつ高いギアを使用していてもギクシャクすることが少なくなった。

ドゥカティのアドベンチャーモデル「ムルティストラーダ」シリーズの中でも、特に高い悪路走破性能と450kmという長い走行可能距離を誇る「1260エンデューロ」。既存の「1200エンデューロ」の後継モデルにあたる。
ドゥカティのアドベンチャーモデル「ムルティストラーダ」シリーズの中でも、特に高い悪路走破性能と450kmという長い走行可能距離を誇る「1260エンデューロ」。既存の「1200エンデューロ」の後継モデルにあたる。拡大
新型の1262cc L型2気筒エンジンは、可変バルブタイミング機構の採用とも相まって、従来型のユニットより低・中回転域でのトルクがアップ。特に5500rpmでは、17%も大きなトルクを発生させるという。
新型の1262cc L型2気筒エンジンは、可変バルブタイミング機構の採用とも相まって、従来型のユニットより低・中回転域でのトルクがアップ。特に5500rpmでは、17%も大きなトルクを発生させるという。拡大
「1260エンデューロ」には、「スポーツ」「ツーリング」「アーバン」「エンデューロ」という4つの走行モードからなるライディングモードセレクターが装備されており、エンジンの出力特性や電子制御サスペンションの設定などを切り替えることができる。
「1260エンデューロ」には、「スポーツ」「ツーリング」「アーバン」「エンデューロ」という4つの走行モードからなるライディングモードセレクターが装備されており、エンジンの出力特性や電子制御サスペンションの設定などを切り替えることができる。拡大

走りを支える電子制御サスペンションの調律

このアクセル操作に対するライダーのイメージと車体の動きが、トルクの増大によってシンクロ率を高めたことは、非常に大きなメリットとなる。それはオフロード領域でも実に有効だった。体重移動とアクセル操作でリアを振り出したいような場面でも、それをたやすく実現してくれるのだ。

もうひとつの要因は車体、正確には電子制御サスペンションのセッティングを含めた足まわりの変更だ。ムルティストラーダには2013年モデルから、走行中にサスペンションのセッティングを路面状況に合わせて随時変化させる、電子制御サスペンションシステムが採用されている。それは「スポーツ」「ツーリング」「アーバン」「エンデューロ」という4つのライディングモードにもリンクしていて、選択されたモードによってサスペンションセッティングも自動でセットされるのである。

2015年に発表されたムルティストラーダ1200エンデューロでは、このシステムはそのままに、前後サスペンションのストローク量を他のモデルより30mm拡大し、大柄な車体ながら高いオフロード走破性を実現した。しかしオンロード走行時にはそれがデメリットに転じる部分があり、また当然のようにシート高も高かった。

それに対しMTS1260EDは、1200から前後ストローク量を15mm減らし、それによってシート高は10mm低くなった。ストローク量を減らしたことのデメリットは、電子制御のサスペンションセッティングを煮詰めることで補っているのだという。

ホイールトラベルは従来モデルより15mm小さい185mm。悪路におけるハンドリングを改善するため、ザックス製のステアリングダンパーが装備されている。
ホイールトラベルは従来モデルより15mm小さい185mm。悪路におけるハンドリングを改善するため、ザックス製のステアリングダンパーが装備されている。拡大
「1260エンデューロ」には、「ドゥカティ・セミアクティブ・スカイフックサスペンション(DSS)」と呼ばれる電子制御サスペンションが装備される。
「1260エンデューロ」には、「ドゥカティ・セミアクティブ・スカイフックサスペンション(DSS)」と呼ばれる電子制御サスペンションが装備される。拡大
シートの高さは従来モデルより10mm低い860mm。オプションで840mmのローシートや880mmのハイシートも用意されている。
シートの高さは従来モデルより10mm低い860mm。オプションで840mmのローシートや880mmのハイシートも用意されている。拡大
今回の試乗はイタリア・フィレンツェ近郊の丘陵地帯で行われた。
今回の試乗はイタリア・フィレンツェ近郊の丘陵地帯で行われた。拡大
最新のエンデューロモデルらしくライディングをサポートする機能も充実。ウイリーコントロールやコーナリングABSなどに加え、坂道発進をアシストするビークルホールドコントロールも装備される。
最新のエンデューロモデルらしくライディングをサポートする機能も充実。ウイリーコントロールやコーナリングABSなどに加え、坂道発進をアシストするビークルホールドコントロールも装備される。拡大
2018年10月に詳細が発表されたばかりの「ムルティストラーダ1260エンデューロ」。日本への導入時期などは未定となっている。
2018年10月に詳細が発表されたばかりの「ムルティストラーダ1260エンデューロ」。日本への導入時期などは未定となっている。拡大

改善されたオンロードでの扱いやすさ

今回の試乗では、ワインディングロードや荒れた林道、整地されたオフロードコースなど、さまざまな路面コンディションを走ったが、いずれの場所でもサスペンションのストローク量減少に対するデメリットはまったく感じなかった。それよりもストローク量を抑え、その動きを抑制することで、加減速時やコーナリングで車体を左右に傾ける際のダイレクト感が高まった。これもエンジンの反応同様、ライダーのイメージとのシンクロ率が高まったことで、車体が小さく感じたことの要因といえる。

またハンドルバーの角度やハンドルポストの変更、さらにはステップにセットする振動抑制ラバーの厚みを変えることなどで、ライディングポジションも大きく変わった。欧米人に比べ体格が小さな日本人にとっては、それも車体を意のままに操るための重要なポイントである。

こういった変化から、MTS1260EDは高いオフロード性能を維持しながらオンロードでの扱いやすさを高め、兄弟モデルである1260Sに近づいたように感じる。国内での販売時期や価格については未定だが、早く日本の道でMTS1260EDを試してみたいものである。

(文=河野正士/写真=ドゥカティ/編集=堀田剛資)

ドゥカティ・ムルティストラーダ1260エンデューロ
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ドゥカティ・ムルティストラーダ1260エンデューロ(MR/6MT)【レビュー】の画像拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1592mm
シート高:860mm
重量:254kg
エンジン:1262cc 水冷4ストロークL型2気筒DOHC 4バルブ
最高出力:158ps(116.4kW)/9500rpm
最大トルク:128Nm(13.0kgm)/7500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:--円

河野 正士

河野 正士

フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。

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