ハーレーダビッドソン・フォーティーエイト(MR/5MT)/スポーツグライド(MR/6MT)/ロードグライドスペシャル(MR/6MT)
新時代の幕が開く 2018.11.12 試乗記 ハーレーダビッドソンがラインナップする33機種(!)もの現行モデルの中から、「フォーティーエイト」「スポーツグライド」「ロードグライドスペシャル」に試乗。サイズもライドフィールも異なる3台の走りに、新時代へ向けたハーレーの挑戦を感じた。バイク界の“異端”
ひと口に「クルマ好き」といっても、日本車好き、ヨーロッパ車好き、アメリカ車好きといった趣味嗜好(しこう)があり、さらにそこから「ドイツ車以外は信頼できない人」「フェラーリこそが神な人」といった具合に細分化されたり、新車派や旧車派といった、別な軸での分類が生まれたりする。
二輪でもそれは似たようなものだが、最初にざっくり分けるなら「ハーレーダビッドソン好き」と「それ以外」というのが妥当だ。「それ以外」の多くの人は、ハーレーダビッドソンとそのオーナーを異教徒のように思っていて、まったく相いれないままバイクライフを送るケースも珍しくない。
考えられる理由は2つばかりある。まずひとつは、それ以外の人にとってバイクに乗ることはスポーツを楽しむこととほぼ同義であり、その象徴としてコーナリング時の、つまり車体をバンクさせた時の一体感にライディングの醍醐味(だいごみ)を見いだしているからだ。
これがハーレーダビッドソンではままならない。構造上、深くバンクさせようとすると車体のあちこちが地面に接地し、パーツとともに気分までもがそがれる。
ハーレーダビッドソンは運動性能で語るべきバイクではない。速さよりも力強さ、軽さよりも重厚さ、俊敏さよりも優雅さ。つまりは情緒に訴える走りを音や手触り、鼓動を通じて表現してきたため、多くのバイクとは本質的に異なるのだ。
そしてもうひとつ。まるで言い掛かりのようだが、モデルごとの見分けがつきにくく、車名が覚えづらいことにもちょっとしたハードルがある。
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ラインナップの中核をなす3つのファミリー
図らずもここまでハーレーダビッドソンとひとくくりに書いてしまっているが、いずれのモデルも長いホイールベースの間に巨大なVツインエンジンを持ち、「ダカダン、ダカダン」という3拍子を奏でながら走ることは共通している。
そのため大体のモデルが同じに見え、「大きなハーレーダビッドソン」と「そうでもないハーレーダビッドソン」程度の区別で済まされがちだ。また、「スポーツグライド」と「ロードグライド」は、語感が似ているのにまったく異なるセグメントだったり、それぞれの車名には、エンジンやフレームの仕様を表すアルファベットが学術名のようについて回ったりと、実にややこしい。例えば「ロードキングスペシャル」と「エフエルエイチアールエックスエス(FLHRXS)」は同じモデルのことを指しているのだが、とてもではないが覚えられる気がしない。
ただし、ハーレーダビッドソンのファミリーやモデルが再編成され、変革期を迎えようとしているのも事実だ。そのあたりの現状を、先ごろ発表された2019年モデルを通して見ていこう。
簡単に整理しておくと、2019年モデルとして日本には33機種が導入されることになっている。それらは「ストリート」「スポーツスター」「ソフテイル」「ツーリング」「トライク」「CVO」という6つのファミリーに振り分けられ、この並びでいえばストリートが車体的にも価格的にも最も軽やかで、CVOに近づくほどいろいろと重みが増していく。
ストリートに属する「ストリート750」(車重233kg/価格86万4000円)がエントリーの役割だとすると、CVOに属する「CVOリミテッド」(車重428kg/価格537万5600円)はフラッグシップに相当する。そこにある195kg、451万1600円の差の中に、他のモデルの大半が収まっている。
2台の両極は一種のツカミのようなもので、主力を担うのはその中間に位置するスポーツスターとソフテイル、ツーリングの各ファミリーである。そして今回、それぞれを代表するモデルに、たっぷりと試乗することができた。
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3つのモデルに宿る、三車三様の魅力
中でも「日常的に乗るならこれ一択」と思わせてくれたモデルが、スポーツスターのフォーティーエイトだ。コンパクトな車体、シンプルな装備、愛嬌(あいきょう)のあるスタイル、軽やかなハンドリングがバランスしており、手の内に収められる感覚が最も高い。そこには“バイクらしさ”のほとんどすべてが詰まっている。
「エボリューション」と呼ばれる1202ccのVツインエンジン自体はそれほど強い印象を残さず、容量わずか7.9リッターのピーナツタンクはガソリンスタンドまでの距離に注意する必要がある。とはいえ、スニーカー感覚で乗り出せる気負いのなさがなによりも魅力的だった。
そこからソフテイルのスポーツグライドに乗り換えるとグッと“旅感”が増す。標準装備のカウルとサドルバッグもさることながら、エンジンがもたらす伸びやかなフィーリングがその源になっている。
搭載される「ミルウォーキーエイト」は、以前試乗記をお届けした「FXDR 114」と同系のユニットである。ただし、排気量が1745cc(FXDR 114は1868cc)に少し落とされているところがポイントだ。その絶妙なサジ加減が功を奏し、開けやすく穏やかなスロットルレスポンスを実現。せかされることなく粛々と走り続けられるため、結果的に快適なロングランをもたらしてくれていた。
また、カウルとサドルバッグの脱着は簡単で、それを外せば車名の通り一気にスポーツ性が向上。好みや荷物に応じてそのスタイルを使い分けられる、高い万能性を備えている。
ストリートが楽しいフォーティーエイト、そこにゆとりを加えたスポーツグライドの次に印象的だったのが、ツーリングのロードグライドスペシャルだ。ツアラーに特化したこのモデルは、当然高速道路との相性は抜群。エンジンのまろやかさにすべてを委ねて流すことができる。
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乗れば分かる懐の深さ
スペック上では最大トルクは3000rpmで発生することになっているが、そこまで回す必要もない。2000rpmも回っていれば十分に力強く、その領域で体に伝わってくるビートとサウンドは乗り手を飽きさせない。もちろんタイトな一般道では388kgの車重を感じることになるものの、大きくプルバックしたハンドルによってコンパクトなライディングポジションを実現しており、取り回しは意外なほどイージーだった。
ハーレーダビッドソンが鉄馬に例えられ、そのたけだけしさを誇っていたのはひと昔、もしかしたらふた昔前のことなのかもしれない。もちろん、それは今も一部に残されているが、少しでも触れてみればハードルは決して高くなく、従順さを備えていることが分かる。これまで「それ以外」に属していたライダーにも十分に受け入れられる懐の深さがそこにはあった。
ストリートからツーリングまでの4ファミリーは、四輪でいえばC~Fセグメントの基幹車種にあたり、今後はそこにスモールカーやSUV、電動車に相当するモデルが加わることをハーレーダビッドソンは公式に発表している。低くて長くて重いハーレーダビッドソンのみならず、高くて短くて軽いモデルが選べる時代がすぐにそこに来ているというわけだ。
乗り手に優しく、おもてなしすら感じさせる2019年モデルはその前フリのようなものであり、それを嘆く生粋のマニアも少なくないだろう。しかしながら、かつてのハーレーダビッドソンはスクーターも50ccも2ストロークもオフロードバイクもラインナップし、さらにはV4エンジンを試作したこともある。そのかたくななイメージよりもずっと多様性に富んでいるのだ。
ブランドを守り、それでいて新しい時代を切り開くための挑戦をも辞さないハーレーダビッドソン。数年後に振り返った時、2019年モデルにその始まりを見つけることができるに違いない。
(文=伊丹孝裕/写真=ハーレーダビッドソンジャパン/編集=堀田剛資)
【スペック】
ハーレーダビッドソン・フォーティーエイト
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2165×--×--mm
ホイールベース:1495mm
シート高:710mm
重量:252kg
エンジン:1202cc 空冷4ストロークV型2気筒OHV 2バルブ
最高出力:--ps(--kW)/--rpm
最大トルク:96Nm(9.8kgm)/3500rpm
トランスミッション:5段MT
燃費:--km/リッター
価格:149万円
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ハーレーダビッドソン・スポーツグライド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2325×--×--mm
ホイールベース:1625mm
シート高:680mm
重量:317kg
エンジン:1745cc 空冷4ストロークV型2気筒OHV 4バルブ
最高出力:--ps(--kW)/--rpm
最大トルク:145Nm(14.8kgm)/3250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:229万2700円
ハーレーダビッドソン・ロードグライドスペシャル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2430×--×--mm
ホイールベース:1625mm
シート高:695mm
重量:391kg
エンジン:1868cc 空冷4ストロークV型2気筒OHV 4バルブ
最高出力:--ps(--kW)/--rpm
最大トルク:163Nm(16.6kgm)/3000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:328万0800円

伊丹 孝裕
モーターサイクルジャーナリスト。二輪専門誌の編集長を務めた後、フリーランスとして独立。マン島TTレースや鈴鹿8時間耐久レース、パイクスピークヒルクライムなど、世界各地の名だたるレースやモータスポーツに参戦。その経験を生かしたバイクの批評を得意とする。
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