メルセデスAMG C63 S(FR/9AT)/CLS53 4MATIC+(4WD/9AT)
飾りじゃないのよ 名前は 2018.11.19 試乗記 かたや、パワフルなV8エンジンを搭載するコンパクトセダン「C63 S」。こなた、マイルドハイブリッドシステムが組み込まれたハイパフォーマンスモデル「CLS53 4MATIC+」。タイプが異なるAMGの最新4ドアモデルにサーキットで試乗した。プレミアム感に関わる歴史
かのポルシェを筆頭に、「サーキットが故郷」あるいは「モータースポーツの血統がDNAに組み込まれている」というようなプロモーションを行うブランドは少なくない。
なるほど、実用性プラスアルファという付加価値部分こそが勝負の舞台といっていい、ことさらエクスクルーシブ性が重視されるプレミアムブランドの場合には2ドアクーペやカブリオレの存在、あるいはモータースポーツへの参戦といった「それ自体ではなかなか利益を生み出すには至らない領域」まで積極的に取り組んでいるか否かが、「いかにプレミアムか」を示すひとつの指標と受け取られてしまうのは、あながち見当外れとは言い切れない。
実際、今の世の中で歴史と伝統を売り物にするブランドの過去をさかのぼってみれば、どこかのタイミングでモータースポーツでの栄光のヒストリーが記録されているのが普通である。もちろんそれは、今回の主役であるAMGでも「その通り」といえる。
そもそもAMGの場合、「モータースポーツ用のエンジンを開発するメーカー」というのが起源。その後、自身でチューニングしたメルセデス・ベンツ車でレース活動を行った際の高いポテンシャルが認められ、1993年にはW202型セダンをベースとした「C36 AMG」を初のコンプリートモデルとして完成させたという経緯がある。
特に、2005年にダイムラー・クライスラー(当時)の完全子会社となってからは、そんな親会社とはまさに“一心同体”の関係。それが現在へと至るAMGというブランドの系譜でもあるわけだ。
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タイプの異なるAMGを試す
そんなAMGの最新モデルを用いた、“故郷”というべきサーキットを舞台とする試乗会の案内が舞い込んだ。
幸いにも快晴の下、富士スピードウェイのグランプリコースへと持ち込まれたのは、先日実施された「Cクラス」のマイナーチェンジを機に、セダンシリーズの頂点に立つモデルとしてあらためてラインナップされた最新のAMGモデル。
自身で開発と組み立てを行った強靱(きょうじん)無比なツインターボ付き4リッターV8エンジンに、トルクコンバーターに代えて多板クラッチを用いることでより俊敏でダイレクト感に富んだ変速を可能とした新たな9段ATを組み合わせた、AMG C63 Sである。その仕様変更の比較のために、7段のステップATを採用していた従来型のAMG C63も用意された。
さらに3台目のモデルとしてスタンバイしたのが、AMG CLS53 4MATIC+。こちらの心臓は「電動化を前提として設計された」とアナウンスされる新世代のターボ付き直6ユニットを48V式のスタータージェネレーターや電動式スーパーチャージャーなどさまざまなハイテク補器類と組み合わせるという凝ったもので、やはり9段のステップATと組み合わせて搭載されている。
まずは従来型のC63で軽く肩慣らししてから、新しいC63 Sでピットロードを後にした。アクセルペダルを深く踏み込むと早速、ひと際優れるその動力性能の高さに“違い”を教えられることになった。
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“S”か否かの差が大きい
48Vシステムを用いたマイルドハイブリッドシステムを採用する新たな1.5リッターエンジンが設定されたり、2リッターのディーゼルエンジンに大幅なリファインが加えられたりと、実はパワーユニット関係へのテコ入れも少なくなかったのが、先日実施されたCクラスへのマイナーチェンジのメニュー。しかし63シリーズに搭載される純AMG製のV8ユニットについては、改良の報告はない。それにも関わらずこうして走り始めた瞬間に「パワフルさが違う!」と感じられたのは、先に試乗した従来型がC63で新型はC63 Sであったがゆえだ。
C63の心臓が5500-6250rpmの範囲で発生する最高出力は476ps。一方のC63 Sは同回転域で510psとなり、ピークトルク値も50Nmも上回るものとなっているのだ。
もちろん、日常シーンでは「どちらにしても有り余るパワーの持ち主」であることは疑いない。が、すべてのコーナーでエスケープゾーンがタップリと確保され、それゆえに視界も開ける日本最高峰のサーキットでは、よりゴキゲンでダイナミックな加速感を味わわせてくれるのは、間違いなく新型の“S”が付く方。
ちなみに、そうした印象の差には排気音チューニングの違いも影響を及ぼしている。「排気管内に1つの連続可変エキゾーストフラップを備える」というC63に対して、「3つの連続可変フラップを採用した」というC63 Sの方が、より派手なV8サウンドを奏でるからだ。
そんな両者ではサスペンションやタイヤには差異が報告されていないが、ライントレース性の自在度でもSの方が高く感じられた。これはどうやら、こちらだけに標準採用される「ダイナミックエンジンマウント」が関係していそうだ。マウント部の硬度を電子制御することでエンジンの揺動を抑制するこのデバイスは、タイヤのグリップの限界近くまでを用いるサーキットでのコーナリングでは、安定性向上に少なからぬ役割を果たしてくれるからだ。
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電動化モデルにしみじみ
いずれにしても、最新のC63シリーズは、富士スピードウェイ名物のホームストレート後端では軽く260km/h超の速度をマークして、V8エンジンと共に歴史を歩んできたAMGの作品ならではの、パワフルかつワイルドな走りの世界を堪能させてくれた。
一方で、日常シーンではまずない、秘めたパフォーマンスをフルに発揮する機会を得て、何ともゴキゲンだったそんなモデルを先に味わった後だと、当然というべきかもしれないが、CLSの53 4MATIC+にはある程度の“場違い感”も禁じ得なかった。
こちらはシングルターボ付きの6気筒でありつつも、前述のように多数の電気的な補器類を採用していたり、4WDシステムの持ち主だったりということもあり、2t超という重量はC63シリーズとは比べるまでもない大幅増。そうしたハンディキャップを背負った上に、「基本的に追い越しは禁止」と指定されたC63シリーズと混走のサーキット試乗会では、どうしても全開領域での走りばかりがメインとならざるを得ず、本来入念にチェックすべき過渡領域での挙動は、今回の短時間のテストドライブでは不本意ながら「ほとんど分からなかった」と報告せざるを得ないことになってしまった。
それでも、最高速は軽々と200km/hを超えたし、全開走行を続けてもある時点でめっきり加速力が鈍ってしまうような事態には陥らず、結果としてAMGの名に恥じない力強い走りを実現し続けてくれた。“電動化モデル”とはいえ、そもそもそもスタータージェネレーターが発する出力はわずか16kWにすぎず、当初からモーター頼みで走行しているわけではない点がプラスに作用したようにも受け取れた。
いずれにしてもこちらのモデルは、むしろ一般道においてどのようにAMGらしい世界観を披露してくれるのかという点に興味が湧くモデルだ。AMGというブランドにも「電動化待ったなし!」を突きつけるのが、今の時代の要請なのである。
(文=河村康彦/写真=メルセデス・ベンツ日本、webCG/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
メルセデスAMG C63 S
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4757×1839×1426mm
ホイールベース:2840mm
車重:--kg
駆動方式:FR
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:510ps(375kW)/5500-6250rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/2000-4500rpm
タイヤ:(前)245/35ZR19 93Y/(後)265/35ZR19 98Y(ダンロップSPORT MAXX RT)
燃費:--km/リッター
価格:1379万円/テスト車=1588万5400円
オプション装備:コンフォートパッケージ(23万3000円)/AMGカーボンパッケージ(66万円)/AMGパフォーマンスパッケージ(90万円)/パノラミックスライディングルーフ<挟み込み防止機能付き>(21万6000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:128km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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メルセデスAMG CLS53 4MATIC+
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5001×1896×1422mm
ホイールベース:2939mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ+スーパーチャージャー
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:435ps(320kW)/6100rpm
エンジン最大トルク:520Nm(53.0kgm)/1800-5800rpm
モーター最高出力:22ps(16kW)
モーター最大トルク:250Nm(25.5kgm)
システム総合出力:--ps(--kW)
タイヤ:(前)245/35ZR20 95Y/(後)275/30ZR20 97Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:--km/リッター
価格:1274万円/テスト車=1274万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:649km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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