プジョー508アリュール(FF/6AT)/508SWグリフ(FF/6AT)【試乗記】
スカッと、軽快 2011.07.07 試乗記 プジョー508アリュール(FF/6AT)/508SWグリフ(FF/6AT)……374万円/443万円
プジョーのニューモデル「508」シリーズが、セダンとワゴンそろって上陸。その仕上がり具合や、いかに?
新たな名前で虎視眈々
「プジョー508」は、「407」の後継モデルである。407の前は「406」だった。プジョーは数字車名をモデルチェンジで継承しないからわかりにくいが、一連の中型プジョーのラインである。マニュアルで乗れた最後の中型プジョーセダン、「406スポーツ」はいま思い出してもホロリとするほどいいフランス車だったなあ。
2005年6月の国内発売から約5年間で販売された407は5000台。日本での商いは大きくないが、全世界では86万台を記録している。508はさらにステップアップをもくろむ戦略車種で、生産のホームベースはフランスのレンヌ工場だが、あらたに中国の武漢工場でもセダンをつくり始めた。
「シトロエンC5」と共通のプラットフォーム(車台)に構築されるボディは、セダンとSW(ワゴン)の2種類。ホイールベースは407より9cm延び、全長も大きくなって、SWでは4.8mを超えた。
最大のチェンジはエンジンの刷新で、いまや日本仕様プジョーの共通パワーユニットともいうべき1.6リッター4気筒ターボがこの中型プジョーにも搭載された。407時代は2.2リッター4気筒と3リッターV6の2本立てで、日本での販売比率は3リッターが6割近くを占めていたというから、時代にかなったエンジンのダウンサイジングを果たしたことになる。
試乗したのは、セダンの標準モデル「Allure(アリュール)」と、SWの上級モデル「Griffe(グリフ)」である。
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納得の“小さな心臓”
セダンの運転席に乗り込むと、まず目が行ったのが計器盤だった。大小5つのくっきりしたアナログメーターが目の前に並んでいる。普通のセダンで、いまどきこんなにメーターが目立つクルマも珍しい。508のグループ内ガチンコ・ライバルは「シトロエンC5」だが、セダンの標準モデルにもC5にはないパドルシフトが装備される。
「207」から使われている156psの1.6リッター4気筒ターボで果たして“走る”のか? と心配する人もいるだろうが、問題ない。八ヶ岳へ向かう上りのワインディングロードを走り始めても、動力性能はむしろ軽快に感じられた。508より100kg重いC5でも十分なのだから当然だ。「207GT」に積まれれば、スポーツユニットとしてイイ仕事をする一方、1.5〜1.6t超のこのクラスでも、そこそこスポーティな高級エンジンとして振る舞う。コンピューターのマップ変更などで、モデルごとにフィットさせているのだろうが、実にフレキシビリティに富む好感4気筒である。
変速機は第二世代のアイシン製6段AT。PSAグループのクルマにアイシン製ATが導入された当初は、加速時にアクセルを緩めてもなかなかシフトアップしなかったり、減速時に律儀に1段ずつシフトダウンしたりなど、フランス流ATの“流儀”をかたくなに守っていたものだが、今やすっかり洗練され、日本のATユーザーにも違和感を覚えさせることはないはずだ。
朝から容赦なく振り回されているはずの試乗車でも、平均燃費は10km/リッターを超えていた。新エンジンの搭載で、407時代より燃費のいいクルマになったのは間違いないだろう。
ワゴンのほうがよりお得!?
次に乗ったのは、SWの上級グレード「グリフ」。ホイールが16から17インチになり、シートがファブリックからレザーに変わるのが「アリュール」との主な差だ。
508のフロントサスペンションは、新開発のマクファーソン・ストラットである。柔らかな“猫足”というのではなく、むしろハードコーナリングでもロールしないスポーティさが光る。そんな基本キャラクターは407時代と変わらない。フロントが吸いつくように路面を捉える感じも、407譲りである。ひとことで言うと、スカッとした足まわりだ。ただ、路面の凸凹を前輪が踏んだ際、ステアリングホイールに伝わるショックがやや大きめなのは気になった。
セダンでも後席を倒してトランクと貫通させれば、かなり使いでのある荷室がつくれるが、SWを見てしまうと、やはり餅は餅屋である。リアエンドにかけてボディをギュッと絞ったスタイリッシュ・ワゴンでも、荷室の広さや使い勝手は上々だ。フロアにタイヤハウスの“蹴り”もまったくない。SW自慢の「パノラミックガラスルーフ」は安いほうのアリュールにも付いてくる。
407はセダンのほうがカッコイイと思ったが、508はSWのほうがきれいで、まとまっている。ちなみにセダンとの価格差、つまり“ワゴン代”は約20〜23万円。渋滞していても後席から空が楽しめる巨大なガラス屋根だけでほとんど元がとれてしまいそうだ。
というわけで、新しい中型プジョーはわけてもワゴンの魅力が急上昇したと思う。
(文=下野康史/写真=峰昌宏)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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