メルセデス・ベンツS400d 4MATIC(4WD/9AT)
Sならこれを買いなさい 2018.12.05 試乗記 メルセデス・ベンツのフラッグシップサルーン「Sクラス」に、ディーゼルのストレート6を搭載する「S400d」が登場。快音を発するトルキーなエンジンと絶妙の足まわりが実現するその走りは、古典的なクルマ好きをもうならせる味わいに満ちていた。直6は“新たな模範解答”
昨2017年夏に実施されたSクラスのマイナーチェンジのメダマはいくつかあるが、筋金入りのクルマ好きである皆さんにとっては、やはり主力エンジン3種が完全刷新されたことが一番だろう。
その新エンジンとは、日本を含むアジアや北米で売れ筋の上級(最上級は12気筒だけど)のV8ガソリンと、必要十分以上の性能と(V8よりは)手ごろな価格の6気筒がガソリンとディーゼルで2種……という計3種だ。
いずれもSクラスとしては従来と別系統の完全な新型エンジンである。V8は「AMG GT」由来の4リッター直噴ツインターボで、6気筒については、すでにご存じの向きも多いと思うが、まさかの“直6”への回帰だ。メルセデスは1990年代後半に「前後に長すぎるエンジンは衝突安全に不利だから」との理由から、それまでの直6を一気にV6へと切り替えていたから、彼らとしてはじつに約20年ぶりの直6である。
現在のエンジン技術では動弁系の可変機構や燃料直噴システムなどヘッドまわりは複雑化するばかりで、同時に過給機や排気触媒などの周辺補機類も増加&大型化の一途だ。シリンダーが2列配置となるV型エンジンではそんな複雑なヘッドが2分割されて、吸排気系など2組ずつ必要になる補機類も多い。
いっぽうで、最新の技術進化によって気筒間の壁を飛躍的に薄くできるようになったし、メルセデスの新しい直6は前端の補機ベルトを排してさらにエンジン全長を抑えている。事実、この直6の全長はひと昔前の5気筒程度だそうだ。しかも、この20年の間に車体の衝突安全技術も進化している。
このように前提条件が変われば、模範解答も変わるのが科学技術の世界である。今回の直6復活もメルセデスの変節というより、欧州当局を中心とした内燃機関を追い込む規制強化の波が、それだけすさまじいということだろう。
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