第583回:【Movie】おじさんよ、熱く語れ!
イタリアの3輪トラック「アペ」のファンイベントに潜入
2018.12.07
マッキナ あらモーダ!
ファンの心に宿る独特の世界観
イタリア版3輪トラック「ピアッジオ・アペ」が2018年に誕生70周年を迎えたことは、本稿第574回の冒頭で記した。
イタリアには、アペのファンクラブ「アペ・クラブ・ディタリア」が2006年から存在する。ヒストリックカーとして珍重するコレクター、そして実用使いのヘビーユーザー、そのいずれもクラブでは歓迎している。そして「歴史を語り、ミーティングで情熱を分かち合う」と目的がうたわれている。
彼らは以前から、イタリア北部パルマ県のサルソマッジョーレ・テルメでファンイベント「ユーロアペ」を開催してきた。ことに、9月21日から23日まで3日間にわたって開催された2018年度は特別だった。
ロケーションはイタリア屈指の温泉保養地で、かつてミス・イタリアの定番開催地だったサルソマッジョーレ・テルメ。さらに、メーカーであるピアッジオが欧州排出ガス基準「ユーロ4」に適合した改良型を初日にメイン会場で発表するなど、70周年にふさわしい、盛りだくさんのプログラムとなった。
参加したのはドイツのクラブからの8台も含め約80台。その多くはより大きなトラックや陸送車に積載しての来場だった。しかし近隣都市からは自走組の姿もあった。さらに、ベルガモ在住の2人組は――法規上、アペは高速道路を走行禁止のため――深夜発で一般道を片道160km走ってやってきた。
会期中は、周辺景勝地へのエクスカーションが毎日催された。距離は毎回往復24~30km程度。だが、ワイン蔵やチーズ工房見学をはさみながら、毎回5時間近くかけて走るという、スローなアペのスローツーリングが実践された。
おっと、前置きはこのくらいにして、アペのユーモラスかつにぎやかな走行シーンをとくとご覧いただこう。登場するアペファンたちの語りが、フェラーリやマセラティの愛好者に勝るとも劣らない独自の世界観に満ちているのにも注目していただきたい。
【パート1】
【パート2】
(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真と動画=Akio Lorenzo OYA、大矢麻里<Mari OYA>/編集=藤沢 勝)
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大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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