ルノー・トゥインゴ ゴルディーニ ルノースポール(FF/5MT)【試乗記】
前向きなレトロ 2011.07.05 試乗記 ルノー・トゥインゴ ゴルディーニ ルノースポール(FF/5MT)……245万円
「ルノー・トゥインゴ」にスポーティな新グレード「ゴルディーニ ルノースポール」が登場。早速その走りを試した。
“ゴルディーニモード”をまとったトゥインゴ
ボディ上を前後に走る2本のストライプ。遠目には単なる白いストライプだが、近づいてよく観察すると、ゴルディーニの「G」が規則的に散りばめられている。某ブランドのシグネチャー柄みたいで、けっこうオシャレである。それ以外にも、シフトノブやシートバックに記された「GORDINI」の文字が、いにしえの「R8ゴルディーニ」のリアエンドのロゴに似ていて、レトロでイイ感じだ。
「ルノー」に「ゴルディーニ」に「ルノースポール」と、このクルマはとても入り組んだ車名を持っている。これを整理するなら、「トゥインゴ」のルノースポールバージョンに、かつて存在したチューナー(メーカーというべきか?)のゴルディーニをほうふつとさせるコスメティックを施したモデルということになるだろうか。実際、トゥインゴのボディサイドに貼られたバッジには「ゴルディーニシリーズ」の文字がある。
アメデ・ゴルディーニが率いた真性ゴルディーニは、ロードカーなら1970年代後半の「ルノー17ゴルディーニ」、レーシングカーなら同じく70年代終わりの「アルピーヌA442B」のエンジン、あるいは同時期のF1エンジンまでで終了したというのが実際のところだろう。そういう意味では、今によみがえった「トゥインゴ ゴルディーニ」は、新生アバルトブランドのクルマたちに近いポジションといえるかもしれない。
回してこそ光るエンジン
エンジンは「トゥインゴ ルノースポール」と同じもの。134psを発生する1.6リッター直4である。トランスミッションも5段のMTで、ギア比はファイナルを含めて変わらない。特にクロース方向に仕向け直されたわけでも、ファイナルが低められたわけでもない。ちなみに、車重はどちらも1120kgで、タイヤサイズも195/40R17である。
両者で大きく違っているのは、サスペンションのセッティングである。ルノースポールには「シャシーカップ」と呼ばれるサーキット走行をも視野に入れた、それなりにハードなセッティングが施されていた。それがゴルディーニでは「シャシースポール」という日常の使い勝手も考慮した、いくぶんソフトな設定となっている。具体的には、サスペンション高を4mm高めて、若干ではあるがストローク長を稼ぎ、さらにサスペンション剛性を「シャシーカップ」と比べて10%落としてある(ソフト方向に振ってある)という。
シフトレバーを1速に入れ、つながるポイントが結構手前にあるクラッチを丁寧につなぎ、いざ走り出す。134psの1.6リッターで車重が1.1トンちょっとなら、低速・中速からそれなりに線の太い加速を期待したいところだが、このエンジンが本当においしいのは4000rpmから上。ステアリングコラムの上にネギ坊主のように生えたタコメーターの、右半分の領域に入ってから、がぜん生き生きし始める。積極的に回して乗ると楽しいタイプのエンジンだ。
これだけよく回るんだから、ギアはやはりもう1段ほしいところ。4速から6速までをクロースさせてトルクバンドを維持しやすいセッティングにしたっていいし、そうではなく、6速をハイギアードにして「燃費ギア」にすれば巡航時のノイズレベルも低まるだろうし(現状だと100km/h時、5速選択で3300rpmも回ってしまう)、燃費だって改善されるだろう。
足まわりはよりしなやかに
一方、「シャシースポール」を採用したことによって、快適性が確実に上がっている。ひとことで言えば、より積極的に動く足まわりになっており、たとえば首都高の継ぎ目のようなきつい不整に出会ってもマイルドにやりすごしてくれるし、スプリングの硬いクルマにありがちな、気がつくとヒョコヒョコと細かな上下動を繰り返しているせわしなさもない。しなやかさが十分に伝わってくるセッティングである。ちょっとしたツーリングなら、まったく問題なくこなせるはずだ。
しかもこの上質感のある乗り心地が、ゴルディーニの名に恥じないクイックで正確なハンドリングと両立されているのがうれしいところだ。操舵(そうだ)の感触はダイレクトで、ステアリングを切り込むとノーズが素早くピッと反応して、タイトなつづら折りをまるで転げ落ちるようなペースで駆け抜けていくことができる。
ワインディングロードを走っていてひとつだけ気になったのは、リアサスペンションの横方向のコンプライアンス(柔軟性)がやや大きいこと。ステアリングを操作してからリアタイアがグッと踏ん張るまで、あるいはS字コーナーで切り返してから姿勢が安定するまでに、微妙にワンテンポの“待ち”が生じるのだ。
もっとも、だからといってそれがゴルディーニ仕様の欠点になるとは思わない。日常的により付き合いやすく、しかもシックスティーズ風のファッション性を兼ね備えたオシャレなルノースポールが出てきたことを、それも限定ではなくカタログモデルとして登場したことを、心から歓迎したい。ルノーは、こういうクルマを作らせると本当に上手である。
(文=竹下元太郎/写真=郡大二郎)

竹下 元太郎
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