BMW 330i Mスポーツ(FR/8AT)/320dスポーツライン(FR/8AT)/M340i xDrive(4WD/8AT)
帰ってきたスポーツセダン 2018.12.14 試乗記 BMWの中核モデル「3シリーズ」がフルモデルチェンジ。ガソリン車、ディーゼル車を織り交ぜポルトガル南部のアルガルヴェで走らせた新型はどれも、「これぞスポーツセダン!」と叫びたくなる仕上がりだった。BMWの決意を感じる
「小さな『5シリーズ』になってはいけない」
ポルトガルはアルガルヴェで催された新型3シリーズ(G20)の国際試乗会。ディナーテーブルを囲んでの和気あいあいとした雰囲気の中、G20の開発責任者が切り出したフレーズがそれだった。
何気ない言葉だけれども、なかなか深い意味がこめられていると思う。いろんな捉え方もできるだろう。5シリーズのキャラクターがあまりに小さな「7シリーズ」であったことへの反動、かもしれないし、ただ単純にそういう見栄えであってはいけないという意味かもしれない。
現行型5シリーズ(G30)に関してはさまざまな評価があった。G20の開発陣がG30をどのように捉えていたのか、具体的に語られることはなかったけれども、新型3シリーズを体験した今となっては逆説的によく分かる。おそらくそれは、「BMW流のスポーツセダンとしては少々モノ足りなかった」ではあるまいか。
そう、結論からいうと、新型3シリーズは近年まれに見るスポーツセダンだった。少なくとも、ダイナミックローンチ試乗会にMスポーツサスペンションを装備する個体しか用意しなかったということは、BMWがブランドとしてスポーツ性への回帰をよりいっそう強めているという証拠だと思われる。確かに、世代的に同じ系統のインテリアデザインを持つ「Z4」や「8シリーズ」も、従来モデルに比べてスポーツ性を激増させていた。
大きくなったボディーに困惑
それにしても、というか、またしても、といったほうがいいだろうか。3シリーズも随分と立派になったものである。
ホイールベースを大幅に延伸(41mm)したため、全長はついに4.7mを超えてきた(4709mm)し、全幅もワイドトラック化(前+43mm、後+21mm)で1827mmにまで達した。全高は旧型とほとんど変わらない(+1mm)、といっても1442mm。感覚的には1990年代後半の5シリーズ(E39)相当のサイズだ。
世界的にみて人類の大きさは上に伸び横に広がっているらしい。広がっている実感こそあれ(笑)、日本人の平均身長はというとここ20年でさほど伸びていないはずだから、むやみな巨大化はやはり迷惑千万。ボディーの横幅増に関していうと、肥満化対策としては効果的だろうけれど、もはや小手先の工夫ではごまかしようもないレベルにまでなってしまった。
今後もうひと回り小さな4ドアモデル(「2シリーズ グランクーペ」?)が中国市場以外にも投入されることを見越してのサイズアップかもしれないが、日本の3シリーズファンにとって大幅サイズアップは悲報でしかない。もしも、その“犠牲”に見合うだけ魅力が増していなかったとしたならば……。しかし、結論からいうと、幅広い車庫を借りなおしてでも乗りたいスポーツセダンになっていた。
内装の質感は5シリーズを超えた!?
一般道でのテストに供されたのは、日本市場にも真っ先に導入予定の「330i Mスポーツ」と、遅れて導入予定の「320dスポーツライン」だった。
ちなみに、来春に世界一斉で予定されている導入(日本での正式発表は2019年1月末の予定)に際しては、330i Mスポーツのほかに、同じ2リッター直4ターボながらパワースペックの低いエンジンを積む「320i」(Mスポーツとノーマルグレード)の日本上陸が予定されており、年央にはディーゼルエンジン搭載グレードとPHEVの「330e」、その後、ハイパワー仕様の「M340i」やツーリングボディーが追加されるという。2019年のDセグメントは3シリーズ一色の年になりそう。
まずは最高出力258ps、最大トルク400Nmの改良型直4ガソリンターボを積む330i Mスポーツに乗り込んだ。19インチのアロイホイールに「ミシュラン・パイロットスポーツ4 S」、MスポーツブレーキやMスポーツディファレンシャルなど、走りへのこだわりが随所に見受けられる仕様である。車高もノーマル足に比べて10mm下がる。
スポーツシートに収まってハンドルを握りしめた。太い。極太だ。指の短い筆者ではちょっともてあます。女性はしんどいだろう。
それにしても、ダッシュボードまわりは随分と豪華になった。5シリーズを超えたかもしれない。特に大きなモニターと、そこからセンターコンソールに至るデザインは8シリーズ以降の世代に共通のもの。見栄え重視でちょっと見づらい操作系もあるのだけれど、それはそれ、慣れの問題ということだろうか。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
70km/hから生きる足
走りだしてまずは「硬い!」と思った。スーパーカーまでが当たりの柔らかな乗り心地になっている昨今、はっきりと硬いと思うことなどまれだ。それこそ“M”の「コンペティション」や「クラブスポーツ」でもない限り、BMWでも硬いと思うことなど最近はなかった。
とにかく50km/hあたりまではゴツゴツと硬い。柔な世の中のクルマに硬い一撃でもくらわせたいのかと思ったほど。これには賛否両論があるだろう。もっとも、Mスポーツサスペンションだから硬いだけかもしれない。このあたりは17インチあたりのタイヤを履いたノーマル足のグレードに乗ってみなければ分からない。
70km/hを超えたあたりから、がぜん、歓声をあげたくなるほど足の動きが素晴らしくなった。硬いボディーや軽い足まわりもさることながら、初採用された新型ダンパーによるところが大きい。
フロントでは伸び側を、リアでは縮み側の減衰を、それぞれ長めの追加スリーブで二重構造とした油圧ダンピングシステムによって制御するというもので、ノーマルグレードやMスポーツのすべてに採用されている(Mスポーツの減衰力はノーマル比で20%増し)。
アルガルヴェのワインディングロードは荒れた舗装が多く、カントもけっこうあって、一筋縄ではいかない路面環境にあったが、大きな入力はもちろんのこと、細やかなバンプでもきっちりとダンパーがリフトしてフラットライドをキープするから、安心して踏み込んでいける。そのうえ、ステアリング操作によって前輪を思い通りの位置にもっていける感覚が常にあるから、運転しやすいことこの上ない。なるほど、3シリーズのスポーツセダンへの回帰はこの、思い通りの操縦感覚にあった。
なにより感動したのはエンジンフィールで、もはや4気筒のそれとは思えない。これならストレート6信仰を捨ててもいいと思ったほど、胸のすく加速フィールをみせてくれた。
峠ならガソリン 街乗りはディーゼル
320dにもMスポーツサスペンションがおごられていたが、こちらは18インチの「ミシュラン・パイロットスポーツ4」だった。それゆえだろうか、はっきりとした硬さこそ残るものの、まだしも穏やかな乗り心地をみせる。それでも、好きなところへ前輪をもっていける感覚は健在で、より低い場所を選んでフラットに駆けぬけていくというライドフィールをキープしていた。おそらく、これがG20用Mスポーツサスペンションの乗り味というわけだろう。
シーケンシャルツインターボとなった新開発のFR用ディーゼルエンジンで、ディーゼルであることを感じさせないクリアな回転フィールが特に素晴らしい。それでいて、わずか1750rpmから330iと同じ400Nmものトルクを発生するから、ワインディングロードレベルではもうこれで十二分というパフォーマンスをみせる。ストレート6に負けない、伸びやかな回転フィールの330iも捨て難いが、普段使いには320dを薦めたい。
もう一台、LAショーでデビューする直前だったMパフォーマンスモデル、「M340i xDrive」にも、カムフラージュの覆面プロトタイプであったが、アップダウンも豊かな楽しいアルガルヴェサーキットで試すことができた。
こちらはもはや、“Mモデル要らず”といえるほどのハンドリングマシンで、スポーツ+でDSCをトラクションモードにセットすれば、4WDセダンであることも忘れさせてくれるほど楽しいFR風のスポーツカーになった。スーパーカーで試すことの多いこのサーキットでも、存分に楽しむことができたあたり、ほどよいハイパワー&トルク(374ps、500Nm)の、絶品のスポーツセダンといっていい。
おそらく、次期型「M3」は完全にスーパーカーイーターとなるだろうから、気持ちよく安全に速さとスポーツドライビングを楽しめるグレードは、このMパフォーマンスモデルということになるだろう。
(文=西川 淳/写真=BMW/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
BMW 330i Mスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4709×1827×1442mm
ホイールベース:2851mm
車重:1470kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:258ps(190kW)/5000-6500rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1550-4400rpm
タイヤ:(前)225/40R19 93Y/(後)225/40R19 93Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:6.1-5.8km/100リッター(16.4-17.2km/リッター 欧州複合モード値)
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
BMW 320dスポーツライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4709×1827×1442mm
ホイールベース:2851mm
車重:1450kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:190ps(140kW)/4000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)225/45R18 95Y/(後)225/45R18 95Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:4.7-4.4km/100リッター(21.3-22.7km/リッター 欧州複合モード値)
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
BMW M340i xDrive(プロトタイプ)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:--mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:374ps(275kW)/--rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/--rpm
タイヤ:(前)225/45R19/(後)255/40R19(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:--
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。





















































