第186回:冬休みに観たい! クルマ映画DVDの新作3本と旧作1本

2018.12.28 読んでますカー、観てますカー

アニキが弟分を出迎えるオープンカー

3年の刑期を終えたヒョンスが刑務所の門を出ると、黒塗りの高級車がズラリと並んで出迎える。その先に止まっているのが1台の赤いオープンカー。「フォード・マスタング」だ。塀の中で知り合って意気投合したアニキのジェホが待っていた。長い間会えなかった恋人との再会のようなシーンである。そうなのだ。2人は刑務所の中で力を合わせて敵対する勢力との抗争に勝ち抜き、信頼と友情で固く結ばれていた。恋人同士よりも強い絆である。

刑事が犯罪組織に潜入し、ボスに取り入って情報を収集する。組織を壊滅させることが目的だが、兄弟のような関係が育まれていくにつれ本来の使命を忘れてしまう。『名もなき野良犬の輪舞』のストーリーは、これまでに多くの作品で用いられたものだ。手垢(てあか)のついた展開なのに最後まで緊張感は途切れない。警察側も含めて誰が裏切り者なのかがわからず、ヒョンスとジェホの間に本当の友情があるのかどうかも判然としないからだ。

ビョン・ソンヒョン監督は、表層的なリアリティーにはこだわらず、美的な視覚効果を追求する。出所のシーンで刑務所の外に荒野が広がっているのもあり得ないが、2人の劇的な再会を演出するには必要な舞台なのだ。ジェホ役は演技派のソル・ギョング。『1987、ある闘いの真実』にも民主活動家として出ていた。ヒョンスはアイドルグループ「ZE:A」のイム・シワン。凶暴な情念を内に秘めながらひょうひょうとした振る舞いをするヤバい若者を好演している。

『名もなき野良犬の輪舞』DVD
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「フォード・マスタング」
1964年に発売され、豊富なオプションを用意したフルチョイスシステムで人気となった。ポニーカーと呼ばれるジャンルを確立し、日本のスペシャルティーカーにも影響を与えたといわれる。映画に登場するのは現行モデル。
「フォード・マスタング」
	1964年に発売され、豊富なオプションを用意したフルチョイスシステムで人気となった。ポニーカーと呼ばれるジャンルを確立し、日本のスペシャルティーカーにも影響を与えたといわれる。映画に登場するのは現行モデル。拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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