第179回:悪い顔の冷酷な権力者はクラウンでやってくる
『1987、ある闘いの真実』
2018.09.07
読んでますカー、観てますカー
あの映画の7年後を描く
4月に当欄で紹介した『タクシー運転手~約束は海を越えて~』は評判がよく、多くの観客を集めたようだ。非イケメン系韓国映画はヒットが難しいとされていたが、意外な健闘である。うれしいことに、早くも続編の『1987、ある闘いの真実』が公開されることになった。いや、監督も登場人物も違うのだから本当は続編ではない。題材となっている韓国の政治と社会に連続性があり、後日譚(たん)のようになっているのだ。
『タクシー運転手』は1980年に起きた光州事件を描いていた。湖南地方の光州で発生した民主化を求めるデモを軍部が弾圧し、多数の死傷者を出した事件である。映画は現地で撮影されたフィルムをドイツ人記者とタクシー運転手が国外に持ち出そうとしたという実話をもとにしていた。事件後の8月に全斗煥が大統領に就任し、10月に新憲法を制定して独裁体制を固める。それから7年後、民主化運動が再び活発化していた時期の話である。
1986年には韓国の経済成長率は12.9%に達し、国民は豊かな消費生活を満喫していた。スポーツ・スクリーン(映画)・セックス産業に民衆の関心を向ける「3S」と呼ばれる一種の愚民化政策が奏功していたともいえる。現在上映中の『SUNNY 強い気持ち・強い愛』の原作『サニー 永遠の仲間たち』の前半部分の時代である。享楽的な生活を送る女子学生たちの背景に、騒然とする街の様子が映し出されていた。
日本ではバブル真っ盛りだった頃だ。日経平均株価が初めて2万円台に乗せ、東京の地価は前年比76%上昇した。後藤久美子が美少女ブームを巻き起こし、朝シャンが常識になる。この年のベストセラーが『ノルウェイの森』『サラダ記念日』だった。自動車業界もノリノリだった時代である。「トヨタ・カローラ」「トヨタ・クラウン」「ホンダ・シビック」「三菱ギャラン」などが続々とフルモデルチェンジし、軽自動車初のDOHCターボを搭載した「スズキ・アルト ワークス」が登場。パイクカーの「日産Be-1」はプレミア価格がつくほどの爆発的人気を博した。

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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