第119回:まさかの圧勝
2019.01.15 カーマニア人間国宝への道懐かしの決戦
パンパカパ~~~ン! いよいよ、ミウラさん(学校の先生)のR32「スカイラインGT-R VスペックII」と、赤い玉号こと我が「フェラーリ328GTS」の加速対決です! 続いて328は、流し撮り職人・池之平昌信の「ランエボVI」とも対決します! 50代のカーマニア3名&3台による、懐かしの決戦です!
ちなみに、事前にミウラさんのR32に試乗させてもらった感じでは、「こりゃやっぱり負けるだろうな」と思いました。名機・RB26DETTのツインターボがさく裂すると、体がシートに押し付けられるぅ~。さすがのトルク! か弱い328では太刀打ちできそうにありません。
ただ、さすがに30年近く前の設計だけに、ターボラグはそれなりにあるし、今回は10km/hくらいからのローリングスタートなので、4WDの有利もほとんどナシ。そんなに大差にはならないんじゃ……という期待は持てる。
ちなみにですね、私は10年ほど前、先代のマイ328GTS(愛称:ヨーコ様)で、「ランエボX」との加速対決に勝っております。ヨーコ様はメチャメチャ吹けがいいコでして、阿見飛行場でのゼロヨン(0-400m)計測では、13.609秒をマークしたほどなのですよ。古いフェラーリも捨てたもんじゃないでしょ? 今回もボロ負けはないんじゃないか……なぁ。
ということで、2台の旧車がスタートラインに並んだ。いよいよ決戦!
スターターの合図で両車ゆっくり発進。パイロン通過とともにアクセル全開!
「クオオオオオオオオオオオ~~~」(フェラーリサウンド)
フェラーリの圧勝!
対するGT-Rも「ブイイイイ~ン」とうなったが、フェラーリに比べると無音。しかも、踏んだ瞬間に自然吸気の328がリード! 1速が吹け切る間に1車身ほど前に出た!
運転してる本人(私)が「えっ、マジ?」と思いつつ2速にシフトアップ。ここからGT-Rが怒涛(どとう)の追い上げを見せる……かと思いきや、さらに差は開いていく。ゴール地点では3車身くらいに広がっていた。あまりにも明白すぎる328の圧勝!
「おかしい……」誰もが思った。
私は「ミウラさん、アクセルしっかり踏めてないんだな」と推測したが、この時ミウラさんの脳内が最も「???」だったらしい。
ゴール後、私を含めて周囲から「ちゃんと踏んでないでしょ」「アクセル踏んでください、忖度(そんたく)しないで」とか言われ、「おかしいなぁ。ちゃんと踏んだんですけどねぇ……」と首をひねるミウラさん。
とにかくもう1回やりましょう! ということになって、「わかりました! 次はフライングするしかないな(笑)」と、けなげに応えた中年カーマニアなのだった。
が、加速対決2回目も、結果はほぼ同じだった。
ホントにこれが実力なのか? R32 GT-Rより328GTSの方が速いのか!? 本当のホントに? まさか……。
これはもうドライバーを交代してもらうしかない。じゃないと誰も信じてくれないから!
GT-R大敗の謎
3回目は、手だれの尾上メカがR32をドライブ。しかし2速へのシフトアップ時に、ゆるんでいたシフトノブがクルッと回ってシフトミス、大敗。う~ん、もう1回! これが最後だ!
尾上メカは、ローリング中から軽く半クラを使って回転を上げ、スタートでの遅れを最小限に抑えた! これまでで一番いい勝負だ! それでも328が若干リード! どうにもならないレスポンスの差! ターボのトルクがさく裂しても、ほとんど差が縮まらない!
結局RB26DETTは、328の3.2リッターV8にどうやっても勝てず、フェラーリの4連勝に終わったのでした。
4回やって4回とも328の勝ち。ドライバー交代してもやっぱり328の方が速い。ミウラさんのせいじゃなかったですゴメンナサイ。
それにしても、どうしてこんなことになったのか。
どっちも中古車なので、当然状態は新車時のまんまじゃない。ミウラさんのR32 GT-R VスペックII(ほぼノーマル)は、若干コンディションが落ちているのかもしれない。
ただ、決してダメダメ状態ではありませんでした。それは私と尾上メカのインプレで明らかです(断言)。
対する赤い玉号は、抜群に状態がいいかというと、たぶんそんなでもない。だいたい私は、赤い玉号を速いと思ったことは一度もない。それであの、かつてバケモノにすら感じたR32 GT-Rに勝ってしまったのだ!
ローリングスタートだとか、距離が短いとか、条件的に328に有利だったのは確かだが、それにしてもまさかフェラーリ328GTSがR32 GT-Rに圧勝するなんて、誰ひとりコレッポッチも考えていなかった! なぜ? どーしてこうなったの?
次回はそれを分析してみたいと思います。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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