第120回:みごとな惜敗
2019.01.22 カーマニア人間国宝への道328GTS対ランエボVI
R32「スカイラインGT-R」との加速対決で、まさかの4連勝を飾った赤い玉号こと「フェラーリ328GTS」。いったいナゼこんなことになったのか!?
その前にもうちょい報告しますと、この4連戦は、私主催のイベント(大乗フェラーリミーティング)の朝、本番前に行ったものでして、本番では、前座として328GTS対「ランエボVI」(99年製)の加速対決をやりました。
ランエボVIのオーナーは、流し撮り職人兼レーサーの池之平昌信。かつてF1を全戦取材していた時代には、F1関係者の親睦カート大会で、あの皇帝シューマッハ様にベストタイムで勝ったこともある男だ。
愛車に関しても、かつては「ランエボX」の新車を乗り回していたが、リーマンショックの直撃を受けて手放し、現在は激安ド中古ランエボVIを後生大事に乗っている。50代で懐かしの中古車に走るというのは、私同様、カーマニアのシアワセな末路であろうか?
しかし、加速に関しては、ランエボXよりランエボVIのほうが、軽量ゆえに速いはず。R32 GT-Rに圧勝した私も、「これにはさすがに負けるかも」と思っていた。
自然吸気の328の命は、スタート時のアクセルレスポンスだ。相手のターボが利く前に、少しでも前に出ないとイカン。
そう思いながら10km/hくらいでローリングスタート、パイロン通過と同時にアクセル全開!
「クオオオオオオオオオ~~~~ン」
フェラーリの大健闘
轟(とどろ)くフェラーリサウンド。それにかき消され、ランエボサウンドはまったく聞こえない。ほとんどEVと戦ってるみたい。相変わらず音ではフェラーリの圧勝だ。
しかし、勝負のほうは出足からまったく互角! おかしい、ヤツめ、なぜターボラグがないんだぁ!? うおおおおお。
ゴール後の流し撮り職人の告白によれば、一瞬アクセルオンのタイミングが早かったそうです。それにしてもエボVIは、R32より断然ターボのレスポンスがイイ。かなり新しいですからねぇ。これはピンチ!
フェラーリのシフトゲートは、伝統のステンレス削り出し。これで超速シフトをキメるのは至難の業だが、オレはキメた! ダテに20年以上フェラーリに乗ってないゼ!
ところが相手の流し撮り職人は、「生涯最高の中谷シフトが決まりました」(本人談)。中谷シフトとは、レーシングドライバーの中谷明彦選手が『ベストモータリング』等で見せていたウルトラ超速ギアチェンジのことです。そういえば中谷選手はランエボ使いでもありました。
この2速へのシフトアップで、ほんのわずかにランエボVIがリード! 328も粘って差を広げさせない。息詰まる大接戦! そして3速へシフトアップ! その直後にゴール!
結果はほとんど同着! でも30cmくらいの差でフェラーリの負けだった。無念……。
この後、メインイベントとして328GTS対R32 GT-Rの対決があり、朝の4回戦同様、328の圧勝に終わりました。つまりGT-Rには5連勝したってことですね。まさにコテンパンですな、ワッハッハ。
ヨーロッパ仕様は別物
このように、私を含めて誰もが「カッコだけでそんなに速いはずがない」と思っていた86年製のフェラーリ328GTSは、ランエボVIとは30cm差の敗北、R32 GT-Rには5連勝という、想像を絶するパフォーマンスを見せたのです。私を含め、誰もが心の底から驚愕(きょうがく)しました。
いったいナゼ? どうして?
まず前提として、我が赤い玉号は、ヨーロッパ仕様の並行輸入ものだというのがポイントだ。
フェラーリは328時代まで、ヨーロッパ仕様と日本(&米国)仕様では、排ガス対策がまったく異なっていた。
日米向けはでっかい触媒が付いているだけでなく、カムのプロフィールも低速型。高回転域ではかなり苦しそうになる。それは、最初に日本仕様(ブルーの『328GTB』)に乗った私が身をもって知っている。
一方ヨーロッパ仕様は、カムは本来の高速型だし、触媒もない! 違法改造ではなく、最初から触媒レスなのです。それで正々堂々ガス検通って輸入されておりますので。
日本仕様の328しか知らない方は、余計「328がR32 GT-Rに勝てるわけがない」と思うでしょうが、ヨーロッパ仕様の328は別物だと認識していただきとうございますウフフフフ~。
といっても、328に乗ってる人は、ほぼ全員「カッコが命」「このカタチがあればそれでいい」と思っているので、そんなこたぁどうでもいいんですけど。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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