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第23回:ホンダNSX(前編)

2019.02.13 カーデザイナー明照寺彰の直言
ホンダNSX
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久々の復活を遂げた和製スーパースポーツ「ホンダNSX」。そのデザインは、現役カーデザイナー明照寺彰の目にどう映ったのか? 数あるクルマのジャンルの中でも、スーパーカーのデザインが最も難しいとされる理由とは?

2代目となる現行型「NSX」の発表は2016年8月。実に11年ぶりの“NSX復活”となった。
2代目となる現行型「NSX」の発表は2016年8月。実に11年ぶりの“NSX復活”となった。拡大
現行型「NSX」のインストゥルメントパネルまわり。当初4色展開だった内装色には、2018年10月の改良でブルー系の「インディゴ」が加わり、現在では全5色のラインナップとなっている。
現行型「NSX」のインストゥルメントパネルまわり。当初4色展開だった内装色には、2018年10月の改良でブルー系の「インディゴ」が加わり、現在では全5色のラインナップとなっている。拡大
1990年9月に発売された、初代「NSX」。広大なガラスエリアを持つキャノピーは、ジェット戦闘機に着想を得たもので、ドライバーに広々とした視界を提供した。
1990年9月に発売された、初代「NSX」。広大なガラスエリアを持つキャノピーは、ジェット戦闘機に着想を得たもので、ドライバーに広々とした視界を提供した。拡大
余談だが、現行型「NSX」のお値段は2370万円である。
ほった:「少し身近な夢も、ずいぶん遠くに行ってしまいましたな……」
余談だが、現行型「NSX」のお値段は2370万円である。
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初代はオリジナリティーがあったのに……

明照寺彰(以下、明照寺):このクルマの一番残念なところは、先代とまったく違うカタチになったことだと思うんですよ。

永福ランプ(以下、永福):あっ! そこですか。

明照寺:もちろん、先代が出たのは30年近く前なので、現代とは何もかも違っています。デザインが変わるのも当たり前の話ですけど。

永福:でも、先代の匂いすらない。

明照寺:私が先代NSXのどこに引かれたかっていうと、オリジナリティーがあったことなんですよ。先代が出てきたときには、私はまだそんなに大きくはなかったけど、クルマ好きだったのでよく覚えてるんです。正直なところ、最初からあまり新鮮味はありませんでした(笑)。

永福:すごい洞察力を持ったチビッコですね(笑)。

明照寺:「すげえなぁ!」っていう感じは全然なかったんですけど、その当時のフェラーリなどに比べて、どこかしら知性を感じたんです。で、話を聞くと、その頃の他のスーパースポーツに比べて、圧倒的に乗りやすいし、視界もいいということで、すごくオリジナリティーがあったと思うんですよね。当時はちょうどF1ブームでもありましたし、本気で憧れました。

永福:新鮮味はなかったけれど、憧れたんですか?

明照寺:憧れましたよ。ホンダが国産初のスーパースポーツを出した。価格も800万円で、子供には買えないけど(笑)、いつか手が届くんじゃないかと思えましたし。

永福:夢は少し身近なほうがいい。

プロポーションが似すぎてませんか?

明照寺:それに対して、新型はこうして見比べると、結構フェラーリのプロポーションに近いんですよ、「458イタリア」のプロポーションに。

永福:そうなんですか! 開発陣は458イタリアを購入して研究したそうですが。

明照寺:フードの位置関係からルーフのシルエット、それに対するタイヤの位置関係とかが非常に近いです。新型NSXは、結構“王道”なんですよ。

永福:グラフィックがまったく違うので、似ている感じはしないけど、プロポーションは458に近いわけですね。

明照寺:先代NSXは、その辺からしてオリジナルだった。あのクルマにしかないような雰囲気があった。

ほった:ガラスエリアがえらい広くて、リアオーバーハングも長かったんですよね。

明照寺:でも新型は、フェラーリに近いカタチで成り立っている。だからこそ差別化したいわけです。結果、ディテールでコテコテにがんばっている。どこかコテコテしたフェラーリみたいな感じがするでしょう?

永福:いや、言われるまでまったく違うと思ってました(笑)。

明照寺:実は近いんです。だからオリジナリティーが不足してる。例えばマクラーレンも、後発だから苦労したと思うんです。最初はすごくコンサバなものを出したでしょう。

永福:「MP4-12C」は、デカい「ロータス・エリーゼ」みたいでした。

明照寺:その後、ようやく他にはないテイストが出てきた。そのあたり、かなりハードにトライしていると感じます。

永福:確かに、マクラーレンは「720S」のデザインで別次元の何かをつかんだ気がしますね。

「フェラーリ458イタリア」のサイドビュー。
「フェラーリ458イタリア」のサイドビュー。拡大
「ホンダNSX」のサイドビュー。フロントまわりの厚みを除くと、そのフォルムやタイヤの位置関係などはフェラーリとよく似ている。
「ホンダNSX」のサイドビュー。フロントまわりの厚みを除くと、そのフォルムやタイヤの位置関係などはフェラーリとよく似ている。拡大
ちなみに、こちらは「ランボルギーニ・ウラカンLP610-4」。同じミドシップのスーパースポーツだが、ライバルとはまったく異なるフォルムとなっている。
ちなみに、こちらは「ランボルギーニ・ウラカンLP610-4」。同じミドシップのスーパースポーツだが、ライバルとはまったく異なるフォルムとなっている。拡大
2011年に登場した「マクラーレンMP4-12C」。
2011年に登場した「マクラーレンMP4-12C」。拡大
2017年にデビューした「マクラーレン720S」。深海魚を思わせるデザインは、「MP4-12C」とはまったく異なるものだ。
2017年にデビューした「マクラーレン720S」。深海魚を思わせるデザインは、「MP4-12C」とはまったく異なるものだ。拡大

カーデザインの中でも特に難しいジャンル

明照寺:一方で、新型NSXのオリジナリティーは何かというと、どうしても全体像よりディテールに目が行ってしまう。

永福:そのディテールがとても残念なんですよねえ……。

明照寺:まあ、デザイナーにもカテゴリーによって得意不得意があるし、今までの仕事とは違うカテゴリーを担当すると戸惑うことが多いんです。中でもスポーツカーは、長年培ってきたものがどうしても必要になる。正直な話、クルマのデザインの中でも特に難しい分野だと思ってます。

永福:なにせ、リリースされるモデル数自体が少ないですしね。

ほった:腕を磨ける機会がない。

明照寺:自分も今こうやって偉そうに語ってますけど、「じゃぁオマエできるのか?」と言われると厳しいでしょう。この分野でスゴいオリジナリティーを出しつつ魅力的なデザインをつくるというのは、非常に難しいことなんです。

永福:あまりにも難しくて、新型NSXはハードルを越えられなかった。

明照寺:新型NSXとフェラーリとは、確かに違うけれど、遠目で見るとそんなに大差ない。「もうちょっとプロポーションでなんかできなかったのかな?」って思います。

現行型「NSX」を示唆するコンセプトモデルがお披露目されたのは、2012年の北米国際自動車ショーでのこと。デザインの特徴は後の市販モデルとほぼ変わらないが、ボディーサイズは全長×全幅×全高=4330×1895×1160mmと、ずいぶんコンパクトなクルマだった。
現行型「NSX」を示唆するコンセプトモデルがお披露目されたのは、2012年の北米国際自動車ショーでのこと。デザインの特徴は後の市販モデルとほぼ変わらないが、ボディーサイズは全長×全幅×全高=4330×1895×1160mmと、ずいぶんコンパクトなクルマだった。拡大
「アキュラNSXコンセプト」のデザインスケッチ。
「アキュラNSXコンセプト」のデザインスケッチ。拡大
こちらは、現行型「NSX」のエクステリアデザインを取りまとめた米国ホンダのミシェル・クリステンセン氏。クーペライクなSUVの「アキュラZDX」や、4ドアクーペのコンセプトモデル「アキュラ・プレシジョンコンセプト」などにも携わっている。
こちらは、現行型「NSX」のエクステリアデザインを取りまとめた米国ホンダのミシェル・クリステンセン氏。クーペライクなSUVの「アキュラZDX」や、4ドアクーペのコンセプトモデル「アキュラ・プレシジョンコンセプト」などにも携わっている。拡大

練習量が全然違う

永福:スーパースポーツは基本的に、幅が広くて背が低いわけです。で、幅を広げて背を低くするだけで、クルマは絶対的にカッコよくなるはずですよね。無条件に速さを予感させるので。

ほった:確かに。モーターショーのコンセプトカーだって、みんな市販版より背が低くてワイドですもんね。背の高いスーパーカーなんて、想像しただけでも様にならない。

永福:でも、皆がロー&ワイドだからこそ、その中で個性を出すのは逆に一番難しいのかもしれない。

明照寺:非常に難しいですよ。

ほった:力強く断言ですね。

永福:マクラーレンですら、最初は苦しんだんですからね。

明照寺:ホンダだって、長い間スーパースポーツをつくってなかったじゃないですか。それでいきなり「これをやれ」っていうんだから、やっぱりすごく大変だったはずです。

永福:だからこそフェラーリもランボルギーニも、過去の遺産を最大限生かそうとしている。考えてみればアウディはすごいですよね。まったくの後発で、「R8」という明らかに違うカタチをいきなり提案して、成功させたんだから。

明照寺:あれは本当にまれな例ですよ。マクラーレンもそうでしたけど、普通は時間がかかるはずです。ある程度数を出さないとダメだから。

永福:ホンダは、26年間でようやく2つ目のスーパースポーツですからね。

ほった:かといって、こんなクルマ、ポンポン出せるもんでもない(笑)。

永福:でもフェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンは、それこそポンポン出してる。ヘタすりゃ1~3年おきに。練習量が違うんだよね。

(文=永福ランプ<清水草一>)

地を這(は)うような低いスタイリングはスーパースポーツならではのものだが、同時に大きな制約でもある。皆等しくロー&ワイドな中で、他とは違うデザインをつくり出すのは至難の業なのだ。
地を這(は)うような低いスタイリングはスーパースポーツならではのものだが、同時に大きな制約でもある。皆等しくロー&ワイドな中で、他とは違うデザインをつくり出すのは至難の業なのだ。拡大
現行型「NSX」の発売により、ようやく“2作目”のスーパースポーツを輩出することができたホンダだが、10年を超えるブランクの間、ずっと手をこまねいていたわけではない。写真は2007年の北米国際自動車ショーで発表された「アキュラ・アドバンスドスポーツカーコンセプト」。初代のNSXの後継と目されていたモデルで、フロントV10エンジンを搭載したFR車だった。
現行型「NSX」の発売により、ようやく“2作目”のスーパースポーツを輩出することができたホンダだが、10年を超えるブランクの間、ずっと手をこまねいていたわけではない。写真は2007年の北米国際自動車ショーで発表された「アキュラ・アドバンスドスポーツカーコンセプト」。初代のNSXの後継と目されていたモデルで、フロントV10エンジンを搭載したFR車だった。拡大
2006年に登場した初代「アウディR8」。非ウエッジシェイプのボディーフォルムに、水平基調のショルダーライン、サイドビューのアクセントとなる巨大なカーボンサイドブレードなど、そのデザインは他のスーパースポーツとは一線を画すものだった。
2006年に登場した初代「アウディR8」。非ウエッジシェイプのボディーフォルムに、水平基調のショルダーライン、サイドビューのアクセントとなる巨大なカーボンサイドブレードなど、そのデザインは他のスーパースポーツとは一線を画すものだった。拡大
 
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明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。

永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。

webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。

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