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第24回:ホンダNSX(後編)

2019.02.20 カーデザイナー明照寺彰の直言
ホンダNSX
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自動車のデザインの中でも、特に難しいとされるスーパースポーツ。久々の復活を遂げた「ホンダNSX」には、具体的にどのような問題点があるのか? 現役デザイナー明照寺彰が、迷走するホンダ&アキュラのデザインに物申す。

永福:「これは?」
ほった:「現行型『NSX』のデザインスケッチだそうです」
永福:「これは?」
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明照寺:「新しい『NSX』には、初代と同じくらいオリジナリティーを感じさせてほしかったんですよ」
ほった:「明照寺さん、ホントに初代NSX好きですよね」
明照寺:「新しい『NSX』には、初代と同じくらいオリジナリティーを感じさせてほしかったんですよ」
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初代「NSX」のサイドビュー。
初代「NSX」のサイドビュー。拡大
こちらは「フェラーリF355GTS」のサイドビュー。ガラスエリアの広さやリアセクションの形状、リアオーバーハングの長さなどに、初代「NSX」との違いが見て取れる。
こちらは「フェラーリF355GTS」のサイドビュー。ガラスエリアの広さやリアセクションの形状、リアオーバーハングの長さなどに、初代「NSX」との違いが見て取れる。拡大

初代NSXは知的? それとも小市民的?

明照寺彰(以下、明照寺):……このように、スーパーカーのデザインは本当に難しい世界なんです。ただ、やっぱりこちらとしては大いに期待してしまう。新型NSXについては、「せっかくつくるなら初代NSXくらいオリジナリティーを感じさせる作品にしてほしかったなぁ」って思っています。

永福:個人的には、初代NSXのデザインにもあんまりオリジナリティーを感じないんですが……。

ほった:うーん、自分は感じますけどね。32の「GT-R」(R32型の「日産スカイラインGT-R」)も好きですが。

永福:GT-Rはオリジナリティーのカタマリでしょ、戦車だもん。でも初代NSXは、「フェラーリをホンダっぽくしました」みたいにしか思わなかった。

明照寺:わかります。それはすごくわかります。ただあの時代は、フェラーリが絶対の解で、そこから全然違う方向には行けなかったと思うんですよ。それでもNSXは、キャノピーがとても大きくて、全幅に対して全長が長い、細長いプロポーションをしてましたよね。その点で、明らかに違いを見せていた。

永福:お尻は伸びてましたよね。

明照寺:実用性を考えて後部トランクをしっかり付けて、この形にしたんだなって、あの時代は納得できました。

ほった:頭良さそうに見えましたね。

永福:知的というより、スーパーカーなのに小市民的に見えたな。

明照寺:私は、ポルシェとフェラーリの中間だって感じましたね。

ホンダ NSX の中古車

クルマの個性がデザインに表れていない

明照寺:初代NSXみたいな細長いフォルム、意外と好きなんですよ。フェラーリでも「モンディアル」とか。

永福:モンディアル、すごくいいですよね。でもあまり人気はない。

明照寺:さらっと見られるでしょう。あまり主張しすぎていない雰囲気なので。

永福:そういうのを好む人って、一定数いるとは思います。そんなに主張しすぎるのは嫌だという。一定数どころかすごく多いのかもしれない。

明照寺:結構いるんじゃないですか?

永福:ただ、そういう人は結局、スーパーカーは買わないんですよ。実用的なモンディアルは人気がなくて、まるで実用性のない「308」や「328」のほうがはるかに売れた。それは今でも変わってない。

ほった:なんだか、話題が今のNSXから何十年も前のフェラーリにそれちゃってますけど。そもそもなんの話でしたっけ?

永福:新型NSXには初代NSXのオリジナリティーが受け継がれていなくてガッカリっていう話だよ。

ほった:そうでしたね。明照寺さん、そのココロは?

明照寺:ええと、新型NSXに乗ってみたら、初代と同じく視界がよくて、結構乗り降りもしやすかったんですよ。

ほった:普通のスーパースポーツと比べたら、車庫入れなんかも全然怖くないですよ。3モーターハイブリッドのハンドリングも、バッテリーを使った無音走行も、他のクルマにはない個性ですよね。

明照寺:だったら外見でも、そういうオリジナリティーを出してほしかったと。

永福:新型NSXのオリジナリティーといえば、超ビジーなディテールだけですからねぇ。

1980年から1993年にかけて販売されたフェラーリの「モンディアル」シリーズ。2+2のシートレイアウトを持つミドシップのスポーツカーだった。写真は最終モデルの「モンディアルt」。
1980年から1993年にかけて販売されたフェラーリの「モンディアル」シリーズ。2+2のシートレイアウトを持つミドシップのスポーツカーだった。写真は最終モデルの「モンディアルt」。拡大
1975年に登場した「フェラーリ308」シリーズ。今日に続くミドシップV8フェラーリの元祖で、1984年まで9年にわたり現役を務めた。
1975年に登場した「フェラーリ308」シリーズ。今日に続くミドシップV8フェラーリの元祖で、1984年まで9年にわたり現役を務めた。拡大
現行型「NSX」のインストゥルメントパネルまわり。広いガラスエリアと厚みを抑えたダッシュボード形状などにより、NSXはドライバーにストレスを感じさせない、広々とした視界を実現している。
現行型「NSX」のインストゥルメントパネルまわり。広いガラスエリアと厚みを抑えたダッシュボード形状などにより、NSXはドライバーにストレスを感じさせない、広々とした視界を実現している。拡大
フロント2基のモーターによるトルクベクタリング機能や、静粛なEV走行モード「クワイエットモード」など、現行型「NSX」には他のスーパースポーツにはない機能が満載されているが……。
明照寺:「中身はすごく個性的なのに、デザインにそれが表れてないんですよね」
フロント2基のモーターによるトルクベクタリング機能や、静粛なEV走行モード「クワイエットモード」など、現行型「NSX」には他のスーパースポーツにはない機能が満載されているが……。
	明照寺:「中身はすごく個性的なのに、デザインにそれが表れてないんですよね」拡大

スーパーカーにメッキを使うな!

明照寺:そうそう。ディテールの話をさせてもらうと、現行型NSXのデザインって、「レジェンド」とかそのあたりのクルマを“ぺしゃっ”とつぶしたような感じですよね。

永福:そう! そのレジェンドのデザインが最悪なんだから、本当に残念としか言いようがない。

明照寺:インテリアもそうなんですよ。こっちもレジェンドあたりのカタチを、上下から圧縮しただけのようなイメージで。アキュラブランドとしての統一を図っているのかもしれないけど、それにしても腑(ふ)に落ちない。

永福:エクステリアのディテールもインテリアも、とにかく感じるのはセンスの欠如です。ただ、今回のマイナーチェンジで、鼻先にあったメッキパーツがボディー同色になったので、それだけでもずいぶんマシになったと思いました。

明照寺:さすがにあのメッキはコテコテすぎたんでしょうね。マイナーチェンジ後のモデルを見ると、多少コテコテが緩和されていて、まぁそれなりには見えるかなあって思いました。

永福:高価なスーパースポーツが「それなりに見える」って程度じゃダメですけど(笑)、本当にあれだけでもずいぶん雰囲気が変わりましたね。

明照寺:そもそも、メッキを使ってるスーパーカーってのは実はないんですよ。

永福:ないですね! マイナーチェンジ前の現行NSXだけ。普通のクルマの文法でつくってしまったのかな。

ホンダのフラッグシップセダン「レジェンド」。海外では、プレミアムブランドであるアキュラのモデルとして、「アキュラRLX」の名で販売されている。
ホンダのフラッグシップセダン「レジェンド」。海外では、プレミアムブランドであるアキュラのモデルとして、「アキュラRLX」の名で販売されている。拡大
北米などでは、ホンダではなくアキュラブランドのモデルとして販売されている「NSX」。こうした取り扱いの違いは、初代NSXの頃から変わらない。
北米などでは、ホンダではなくアキュラブランドのモデルとして販売されている「NSX」。こうした取り扱いの違いは、初代NSXの頃から変わらない。拡大
フロントグリルの上に装着されていたメッキパーツは、2018年10月のマイナーチェンジ(車両の発売は2019年5月)で廃止された。
フロントグリルの上に装着されていたメッキパーツは、2018年10月のマイナーチェンジ(車両の発売は2019年5月)で廃止された。拡大
ほった:「コテコテ感は解消されましたか?」
永福:「……まあ、多少は」
 
ほった:「コテコテ感は解消されましたか?」
	永福:「……まあ、多少は」
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迷走するアキュラのデザイン

ほった:言われてみるとNSXって、普通のクルマの「高級に見せよう」っていう手法がそのまま使われてるというか、他のアキュラ車と同じモチーフが、結構使われてますよね。

明照寺:やっぱり「アキュラのクルマだから」っていうことが強かったんだと思います。

ほった:ホンダのプレミアムブランドのスーパースポーツ、っていう立ち位置は変えられなかったんですかねぇ。ブランドの中でも例外の存在にしちゃえばよかったのに。「シボレー・コルベット」みたいに。

永福:しかも、そのアキュラブランド自体がデザイン的に非常に残念な状態だからねぇ。

明照寺:北米のユーザーはああいうのが好き、といえばそうなのかもしれませんけど、今のアキュラの顔ってすごく“やりっぱなし”というか(笑)、質感が足りないと感じます。レクサスなんかに比べても、「なぜこういう線を使ってるの?」って思う部分が多々ありますね。

永福:アキュラデザインはいま、世界の最下位でしょう。中韓も含め。

ほった:あと、後ろにエンジンを積むクルマなのに、わざわざあんなフロントグリルを強調する必要ってあるんですか?

明照寺:いや、でも今レクサスがスーパースポーツをつくればスピンドルグリルは付けるでしょうし、BMWだってキドニーグリルを付けてるわけです。それぐらいグリルって、ブランドアイデンティティー的に重要な要素なんですよ。

永福:そういう重要な部分が、アキュラではたまたまとっても残念な状態で、それが自動的にNSXにも移植されてしまったのが不運だった、ってことになりますかね。

メッキの装飾に、凝った意匠のエアインテーク(中央部のグリルはダミー)、レンズ内にいくつもの“目玉”を突っ込んだ横長のヘッドランプなどなど……。「NSX」にはスーパーカーというより、“普通の高級車”に用いられるデザイン手法が多く見られる。
メッキの装飾に、凝った意匠のエアインテーク(中央部のグリルはダミー)、レンズ内にいくつもの“目玉”を突っ込んだ横長のヘッドランプなどなど……。「NSX」にはスーパーカーというより、“普通の高級車”に用いられるデザイン手法が多く見られる。拡大
2018年9月に発表された、「アキュラILX」の2019年モデル。ヘッドランプの形状や“プレスライン重視”の面形状などに、「NSX」との共通点が見て取れる。
2018年9月に発表された、「アキュラILX」の2019年モデル。ヘッドランプの形状や“プレスライン重視”の面形状などに、「NSX」との共通点が見て取れる。拡大
明照寺:「『BMW i8』にもキドニーグリルは付いているでしょう?」
ほった:「電動カーなんだし、個人的にはなくてもいいと思うんですけどねぇ……」
明照寺:「『BMW i8』にもキドニーグリルは付いているでしょう?」
	ほった:「電動カーなんだし、個人的にはなくてもいいと思うんですけどねぇ……」拡大
今日におけるフェラーリのV8モデル「488GTB」。フロントに大きな開口部はあるが、その形状はシンプルで控えめだ。
今日におけるフェラーリのV8モデル「488GTB」。フロントに大きな開口部はあるが、その形状はシンプルで控えめだ。拡大

クルマ好きの最後の希望

ほった:なんだか、今回はみんな結構辛口ですね。

永福:26年ぶりなんだし、仕方ないよ。そもそも、例えば中国や韓国のメーカーなんてスーパーカー自体つくらないんだから。

ほった:採算が合わないからでしょう。

永福:そんな中で、ホンダのような大衆車メーカーがわざわざスーパーカーをつくるというのは、つまり「カネじゃないよ、志だよ」という孤高の精神じゃないのだろうかと。

明照寺:その通りだと思います。そこは本当にスゴいと思いますよ。「S660」もそうですけど、ホンダって商売にならないようなクルマをたまにつくるじゃないですか。それはやっぱりクルマ好きのためにやっている。本来そんなのつくらなくてもいいはずなのに。ブランドの象徴的なものが欲しいという理由もあるでしょうけど、それにしてもすさまじい開発費をかけて夢を売っているんだから、その姿勢はすばらしいですよ。いまさら気を使うつもりはないですけど、自動車業界を盛り上げていくうえでホンダにはがんばってほしいと思います。

永福:いっぱい出してほしいということで、ボクも応援。現行NSX、ボディーの金型をチェンジしちゃうっていうのは無理ですかね?

明照寺:それはできますよ、お金さえかければ。まあ結局、小手先になっちゃいますけど。

ほった:なんにせよ、これからに期待ということでよろしいでしょうか。

永福:これからがあればねぇー!

(文=永福ランプ<清水草一>)
 

永福:「ああだこうだ言っちゃったけど、そもそも韓国や中国にはこうしたスーパーカー自体がないんだから、ボクらはホンダに感謝しなきゃいけないんだよ」
永福:「ああだこうだ言っちゃったけど、そもそも韓国や中国にはこうしたスーパーカー自体がないんだから、ボクらはホンダに感謝しなきゃいけないんだよ」拡大
軽規格のミドシップスポーツカー「ホンダS660」。
永福:「これぞ軽のスーパーカーだ!」
ほった:「自分もこれくらいスッキリしたデザインのクルマのほうが好きですねえ」
軽規格のミドシップスポーツカー「ホンダS660」。
	永福:「これぞ軽のスーパーカーだ!」
	ほった:「自分もこれくらいスッキリしたデザインのクルマのほうが好きですねえ」拡大
永福:「ホンダは、採算取れてないよねえ」
ほった:「すんごい開発費用かけてるし、専用の組立工場まで用意しちゃいましたからねえ」
永福:「ホンダは、採算取れてないよねえ」
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明照寺 彰

明照寺 彰

さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。

永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。

webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。

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