ホンダS660ネオクラシック(MR/CVT)
カッコがすべて 2019.03.26 試乗記 「ホンダS660」ベースの着せ替えモデル「S660ネオクラシック」に試乗! コンセプトカーの登場から2年7カ月。ついに市販化されたドレスアップキットで、見た目や走りはどう変わったのか? 元“エスロク”オーナーが、乗って触って確かめた。レトロモダンなたたずまい
S660ネオクラシックに試乗することができました!
といっても、市販化はすでに昨年(2018年)8月に発表されていたのだが、S660ネオクラシックはコンプリートカーではなく、あくまで着せ替え用ボディーキット。ホンダユーテックが運営するオートテラス店の指定3店舗に、自分のS660を持ち込んでキットを組み込んでもらうか、指定3店舗のみで扱うS660の中古車をベースにキットを組み込んだ、認定中古車扱いのコンプリートカーを購入する以外にないという、複雑な存在だ。
つまり、ネオクラシックはあくまで中古車なのだ。中古車の広報車が用意された例はほとんどない(たぶん)。しかし、ネオクラシックは注目度大につきそれが実現し、こうして今回試乗することもできたという次第です。
S660ネオクラシックの元ネタは、ホンダアクセスの社内有志によるデザインスタディー、2016年の東京オートサロンに展示された「S660ネオクラシック コンセプト」だ。
これが非常に評判となって、市販化を熱望する声が集まり、商品化が決定した。
これまた「あくまでデザインスタディー」の商品化なので、メカ的な変更はなく、ボディーを着せ替えただけである。ノーマルS660からの変更点は基本的に見た目だけなので、あらかじめご承知置きください。
で、私は初めておてんとう様の下で実物を見たわけですが、これはイイ! なんつっても顔がカワイイ! それも、中年男が乗っても恥ずかしくない、オッサンもうれしくなるようなかわいさだ。
丸型2灯のヘッドライトは、「ホンダN360」をほうふつとさせるレトロモダン。つまり「N-ONE」の兄弟ってことだけど。目がパッチリ大きくて口が小さい、「顔中目だらけ」な幼体っぽいかわいさで、たぶん誰でも好きになる。
ノーマル車とは別物
リアビューはというと、まず立派なリアピラーが目につく。ノーマルのリアピラーはノッチバック的に短く立っているが、ネオクラシックのソレはなだらかな曲線を描くファストバック風。リアウィンドウは、かなり直立したトンネルバック形状を維持しつつ、ノーマルのリアウィンドウの外側にもう1枚ウィンドウをかぶせる形になっている。
テールエンド部も、ノーマルのヒップアップ感とはまったく異なる、ソフトでレトロな尻下がりイメージ。さらにエンジンフード中央部からリアバンパー下にかけて、ブラックアウト塗装となっていた。これによって、前も後ろもノーマルとはまったく別のカタチに見える。
ノーマルのS660のデザインも非常に素晴らしく、まったく文句はない。実際個人的に購入したほどですが(すでに売却)、ノーマルは伝統的なスーパーカー系で、あえて言えばランボルギーニ風だった。キリッと直線的で攻撃的なルックスと、あの大きさのミスマッチ感がたまらなく魅力的なのだが、ネオクラシックはモーガンとかオースチン・ヒーレー系で、雰囲気がまったく違う。一瞬、ベース車が何であるかわからなくなるほど、別のクルマに見えるところがステキだ。
ただ、さすがにサイドは、全幅の関係もあってほぼノーマルのまま。ここだけは前後のルックスとちょっと雰囲気が違う。特にサイドの「く」の字のキャラクターラインが、レトロな雰囲気に合ってないなぁとは思います。しかし、「く」の字の前端にあるエアアウトレット風の造形をわざわざふさぐという芸の細かさもあり、最大限の努力を感じる。
ちなみに、私がノーマルS660で大変気に入っていた開閉可能なリアウィンドウは、そのまま生きていて、ちゃんと電動で上下するが、その外からもう1枚ウィンドウがかぶさることによって、風が通り抜けることはできなくなっている。ただ、エンジンフードの開閉レバーが、この2枚のリアウィンドウの間にあり、リアウィンドウを下げて操作する必要があるので、機能としては「生きている」(?)格好です。
試しに内側のリアウィンドウを開いて走ってみたら、あまりカイテキではないエンジン音と熱気が室内に入ってきました。
オトナな乗り味
ということで、ノーマルのままのインテリアの室内へと乗り込んで、いよいよ試乗だ。
なにせこれは着せ替えボディーキットだから、中身はそのまんまということで、S660ネオクラシックには特にスペック表もない。たぶん車両重量はそれなりに増えているんだろうなぁと思いつつ発進する(どれくらい重くなっているかは、最後に発表します)。
試乗車のトランスミッションはCVTだったが、加速はスムーズでパワーは十分だった。十分というのは「足りている」くらいの感じで、もちろんパワフルな部類ではないけれど、ノーマルより重さを感じるということはなかった。
乗り心地は、ノーマルに比べるとサスペンションの当たりがソフトで、エレガントに感じる。メカは完全にそのまんまのはずなので、これは車両増加の影響か? ノーマルよりオトナな乗り味と申しましょうか。
コーナリングはS660最大の得意分野。コーナリングフォースの高さは真剣にスーパーカー級なのだが、さすがにそこに関しては、ノーマルより穏やかに感じた。
まずロールが大きい。ちょっとフロントヘビーになってるのかな? と思ったが、フロントだけでなくリアにも荷物(?)を背負ってるはずなので、前後バランスはそんなに変わってないのかもしれない。とにかくステアリングを切り込むと、鼻先に重量物を乗せた感覚がある。
しかし、公道を走る限り、それで操る楽しみが減少したとかいう風でもない。ノーマルより少し深くロールしつつ、ちょっと重くなったノーズを振り回す感覚でキュイッとターンインすれば、それでも公道では高すぎるほどのコーナリングフォースを発揮する。
高速巡行も快適だ。ボディーの動きがノーマルより落ち着いて感じられる。これまた車両重量増加の恩恵だろうか。
注目度の高さも魅力
そして、ネオクラシック最大のご褒美は、注目度の高さだ。止めていればカップルに不思議そうに注視され、高速道路では、ブチ抜いていったチューンド「スカイラインGT-R」(R32型)が、通り過ぎてからフルブレーキング。多分見たことないリアビューにビックリしたんだろう。カーマニアは確実に反応するし、クルマに詳しくない人でも「カワイイ!」と笑顔を見せてくれる。周囲が喜んでくれるのって、本当にうれしいです。
ということで、S660ネオクラシックは、大変高い完成度と注目度をあわせ持つ着せ替えボディーキットだったわけですが、お値段を聞いてビックリした方も多いだろう。
まず、キット価格が129万6000円。組み込み工賃と塗装代が合計で80~90万円。しめて210~220万円のプラスなのだ。S660のベーシックグレードである「β」の新車価格が198万円なので、丸々新車1台分の費用がかかるってことになる。
値段を考えると、購入のハードルはかなり高いが、生産数も限られるだろうから、これくらいでいいのかもしれない。その分、特別感も注目度も長期間維持されるだろうから。
最後に、車両重量の増加ですが、ノーマルに対して何kg増だったでしょう。
答えは0kg! だそうです。え~~~~~~~~っ!? ホントに!?
自分が感じたノーマルとの走りの差はすべて錯覚だったのか? 人間の感覚なんてそんないい加減なもんなのか。
あ、人間のではなく自分のでした。スミマセン。
編集部を通じてホンダアクセスに「本当に重量増加はないんですか?」と尋ねてもらったところ、本当にないそうです。
ただ、重量の変化はないけれど、車体の形状がかなり変わっているので、走りに違いが感じられる可能性はあるとのこと。ネオクラシックはデザイン優先なので、特に空力特性には、目をつぶっている部分はあるそうです。
うーん、そうなのかぁ。空力だけの違いとは思えなかったんだけどなぁ。せめて10kgくらいは重くなってると言ってほしかった……というのが、こちらの勝手な思いなのでした。
とにかく、カタチ良ければすべて良し。
(文=清水草一/写真=阿部昌也/編集=大沢 遼)
テスト車のデータ
ホンダS660ネオクラシック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1180mm
ホイールベース:2285mm
車重:850kg
駆動方式:MR
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:64ps(47kW)/6000rpm
最大トルク:104Nm(10.6kgm)/2600rpm
タイヤ:(前)165/55R15 75V/(後)195/45R16 80W(ヨコハマ・アドバンネオバAD08R)
参考燃費:24.2km/リッター(JC08モード ※数値はベース車のもの)
価格:218万5920円/テスト車=355万7237円(※取付工賃・塗装費用は含まず)
オプション装備:センターディスプレイ<スマートフォン連携ナビ対応オーディオ>(4万2680円) ※以下、販売店オプション S660ネオクラシックキット(129万6000円)/ETC車載器(1万4580円)/ETC車載器取り付けアタッチメント(777円)/フロアカーペットマット<プレミアムタイプ ヒールパッドおよびアルミオーナメント付き/レッド>(1万7280円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1万2762km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:187.3km
使用燃料:13.2リッター
参考燃費:14.2km/リッター(満タン法)/15.9km/リッター(車載燃費計計測値)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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