第563回:摩耗しても高い静粛性をキープ!?
ブリヂストンの旗艦タイヤ「レグノGR-XII」を試す
2019.03.23
エディターから一言
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ブリヂストンが2019年2月1日に販売を開始した、プレミアムタイヤ「REGNO GR-XII(レグノ ジーアールクロスツー)」。さまざまな最新技術を惜しみなく投入したという補修用タイヤのフラッグシップモデルを、特設コースと公道で試してみた。
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フラッグシップモデルが進化
「ポテンザ」とともにブリヂストンの四輪タイヤのツートップをはるレグノ。デビューしたのは1981年のことで、間もなく40周年を迎えるという、まさにブリヂストンを代表するブランドである。
1981年といえば、伝説の洋楽番組『ベストヒットUSA』がスタートした年。ブリヂストンが一社で番組提供していて、流れるCMには印象的なものが多かった。中でもレグノのCMはショーン・コネリーを起用したものなど雰囲気のある内容ばかりで、その印象がいまなおレグノのプレミアムなイメージに結びついているという人は、きっと私だけではないに違いない。
そんなレグノのウリといえば、静粛性と快適性、運動性能の“グレートバランス”。特に静粛性の高さには定評がある。その最新モデルがGR-XIIで、さまざまな新技術により、さらなる静粛性の向上を目指したという。
たとえば、荒れたアスファルト舗装路で気になる低い周波数の“ロードノイズ”に対しては、ベルトの振動を抑える「ノイズ吸収シートII」により車内に伝わるノイズを低減。また、内側のショルダー部にクッション効果を持たせた「3Dノイズカットデザイン」を採用して、トレッド部からサイド部に振動を伝わりにくくしている。
一方、スムーズなアスファルト舗装路で耳につく高い周波数の“パターンノイズ”には、縦溝を空気が通過する際に発生する“気柱管共鳴音”を低減する「ダブルブランチ型消音器」を搭載する「3Dノイズ抑制グルーブ」や、接地時に音が出にくい「サイレントACブロック」により対応。これらにより、従来品の「GR-XI(ジーアールクロスアイ)」と比べて、新品時のロードノイズ、パターンノイズをともに5%低減したという。
摩耗しても静か
そして注目すべきは、GR-XIIが摩耗時でも高い静粛性を維持すること。新品のときは良かったのに、走行を重ねるにつれて性能が低下するというのは、静粛性にかぎらずよくあることだ。実際、従来品のGR-XIでは、新品に比べて6割摩耗したタイヤでは「シャー」という高周波音が目立つようになるというデータがある。
これに対して、GR-XIIでは、「シークレットグルーブ」により、タイヤが消耗してもダブルブランチ型消音器が機能するように改良。6割摩耗したときでも静粛性が低下しにくい構造を実現している。
その効果を確認するため、GR-XIIの新品と6割摩耗したGR-XII、6割摩耗したGR-XI(従来品)を比較的スムーズなアスファルト舗装路で比較することにした。最初に乗ったのがGR-XIIの新品を履くテスト車で、さほど速度が高くないこともあって、ロードノイズ、パターンノイズともにほとんど耳に入ってこない。次に6割摩耗したGR-XIIを履く車両に乗り換えるが、今回のテスト条件では差がほとんど感じられなかった。最後に試した6割摩耗したGR-XIも十分に静かだったが、GR-XIIと比べてしまうと若干ではあるがロードノイズ、パターンノイズともに大きく、GR-XIIの静粛性が際立つ結果になった。
特に電動化車両におすすめ
その後、GR-XIIが装着された「日産フーガ」と「メルセデス・ベンツEクラス」で公道を試乗したが、比較的スムーズな一般道や高速道路では、ロードノイズやパターンノイズがよく抑えられていることを確認。荒れた路面でも、ロードノイズの増加が少ないように思えた。
乗り心地についても、2台のミドルサイズセダンとの組み合わせではスムーズかつマイルドな印象で、目地段差を越えたときのショックも素早く収まっていた。
ハンドリングについては、試乗会場内の駐車場で、「ホンダ・フィット」を使い同じブリヂストンの「エコピアNH100」と比較することができたが、GR-XIIのほうがステアリング操作に対するレスポンスが良好で、よりスポーティーなドライブが楽しめた。
ところで、この日はたまたまPHEVで会場に来たのだが、GR-XIIが装着されたフーガやEクラスから乗り換えると、明らかにロードノイズが大きく、特にモーター走行時のロードノイズが気になってしまった。今後、電動化車両がますます増えるだけに、静粛性に加えて、低転がり性能やウエット性能などを高次元でバランスさせたレグノが活躍する場は広がりそうだ。
(文=生方 聡/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。