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第30回:スバル・レガシィ

2019.04.17 カーデザイナー明照寺彰の直言 明照寺 彰
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スバル・レガシィ
スバル・レガシィ拡大

シカゴショーで発表された7代目「スバル・レガシィ」(セダン)。「日本では販売されないかも」などと悲しいウワサも流れているが、このクルマがスバルの象徴的存在であることに変わりはない。現役のカーデザイナー明照寺彰が、そのデザインと“セダンの今後”を語る。

2019年のシカゴモーターショーにおける、スバルのプレスカンファレンスの様子。7代目「レガシィ」はこのモーターショーで発表された。
2019年のシカゴモーターショーにおける、スバルのプレスカンファレンスの様子。7代目「レガシィ」はこのモーターショーで発表された。拡大
新型「レガシィ」のサイドビュー。ルーフラインのピークからリアにかけてのフォルムに注目。
新型「レガシィ」のサイドビュー。ルーフラインのピークからリアにかけてのフォルムに注目。拡大
明照寺:「従来モデルの『レガシィ』はカタマリ感のあるデザインをしているんですよね」
永福:「これはこれで、おおらかな感じがしてワタシは好きですね」
明照寺:「従来モデルの『レガシィ』はカタマリ感のあるデザインをしているんですよね」
	永福:「これはこれで、おおらかな感じがしてワタシは好きですね」拡大
先代(右上)と現行型(左下2台)の「トヨタ・カムリ」。同車は2017年のフルモデルチェンジで、スポーティー路線へと一気に舵(かじ)を切った。
先代(右上)と現行型(左下2台)の「トヨタ・カムリ」。同車は2017年のフルモデルチェンジで、スポーティー路線へと一気に舵(かじ)を切った。拡大

よりスマートに、スポーティーに

永福ランプ(以下、永福):新型レガシィ、デザインはかなりいいと思うんですけど、明照寺さん、いかがでしょう。

明照寺彰(以下、明照寺):私はたまたまシカゴショーに行っていたので、現物を見ることができました。ただ屋内でしか見てないので、本当に“第一印象”だけなんです。その範囲で言えば、従来型に比べて伸びやかになりましたね。

永福:今のモデルはおおらかなデザインだったと思いますが。

明照寺:それと比べると、新型はかなりスマートになった印象です。その理由は、特にリアまわりにあります。前型は凝縮感を強調していたので、悪く言うと寸詰まり、よく言えばカタマリ感がありました。それに対して、新型は“抜けた”ようなデザインになっている。Cピラーとショルダーの勢いがリアまでつらぬいていて、それがトランク上部のシルエットにも反映されています。セダンらしい伸びやかさというところを狙っていると思います。

永福:抜けたようなデザインというのは、スポーティーってことですか?

明照寺:そんな感じです。いま、世界的にセダンが売れなくなっていて、各社クーペライクなイメージでなんとか付加価値をつけようと躍起じゃないですか。特に北米では。トヨタの「カムリ」なんか、あんなにスポーティーになるとは思わなかった。

ほった:先代は地味で堅実だったのに、今じゃ「ビューティフル・モンスター」(現行型カムリのキャッチコピー)ですからね。

永福:この間、狭い路地で対向車が来て、「うわ、怖い顔のクルマが来た! しかも幅がヤケに広い!」って思ったら「カムリWS」だったよ。

明照寺:「ホンダ・アコード」や「日産アルティマ」「シボレー・マリブ」あたりにしても、みんなセダンは“ただのセダン”じゃなくて、ちょっとスポーティーな感じにしているので、レガシィも現行型よりスマートに見せようとしたんでしょう。

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現行型レガシィは“いいアメリカ車”だった?

ほった:でもまぁ、カムリなんかに比べると、レガシィはまだ堅実ですよね。

明照寺:他社のクーペライクなセダンに比べれば、レガシィのシルエットはオーソドックスなほうでしょう。ただ、レガシィらしい個性がもうひとつ出ていたらよかったのにと、個人的には感じます。

永福:考えてみたらレガシィのセダンって、誕生当初は明らかにスポーティーな部類でしたもんね。

明照寺:昔はわかりやすいスポーティーさがあったんですけど、今はまあ「ミドルクラスのセダンだよね」ということで、それ以上でもそれ以下でもない。言ってみれば、他社のセダンがどんどんレガシィを追い越していったわけです。それでレガシィの立ち位置がよくわからなくなってきているのでしょう。

永福:セダンが世界的に売れなくなってきているとはいえ、レガシィのセダンは完全に北米市場頼みですよね。そして、日本では売らないかもしれないとか?

ほった:ウワサではそう言われてますね。

永福:北米でどういうセダンが求められているか、皮膚感覚的にはわからないんですけど、日本で見る限り先代はとってもカッコよかったと思うんです。大陸的でステキだなと思っていました。サイズ的には大きすぎて日本ではキツイけど、“いいアメリカ車”という印象でしたね。新型はそれがそのまま正常進化しつつ、目元をインプレッシブにして、口をガッと強そうにしている。それでも全体としてバランスが取れているように見えます。

明照寺:基本的な部分は変わってないですからね。でも、つくり込みはずいぶん違っていますよ。

従来型よりも伸びやかでスポーティーなデザインとなった新型「レガシィ」だが、他のライバル車種と比べると、まだセダンらしいオーソドックスなスタイリングといえる。
従来型よりも伸びやかでスポーティーなデザインとなった新型「レガシィ」だが、他のライバル車種と比べると、まだセダンらしいオーソドックスなスタイリングといえる。拡大
1989年にデビューした初代「レガシィ」。高い動力性能に加え、シャープでスポーティーなスタイリングも大きな魅力だった。
1989年にデビューした初代「レガシィ」。高い動力性能に加え、シャープでスポーティーなスタイリングも大きな魅力だった。拡大
従来型「レガシィB4」のフロントマスク。
従来型「レガシィB4」のフロントマスク。拡大
新型「レガシィ」のフロントマスク。ツリ目のヘッドランプや六角形のフロントグリルなど、基本的な部分は従来モデルから踏襲されている。
新型「レガシィ」のフロントマスク。ツリ目のヘッドランプや六角形のフロントグリルなど、基本的な部分は従来モデルから踏襲されている。拡大

作り手の良心を感じさせるデザインを続けてほしい

明照寺:例えばリアから見たときのたたずまいなんか、かなりつくり込まれて進化していると感じました。まさに正常進化って感じです。「BMW 3シリーズ」と同じで、前型はサイドのキャラクターラインの下側に凹み角がついていましたけど、新型はそれをなくしている。これも時代感かなと思いました。

永福:ボディーサイズは、全長が若干伸びた以外、先代と同じですよね。……これはひょっとしてマイナーチェンジ?

ほった:いやいやいや。一応、プラットフォーム変わってますから。

永福:あ、そうか。SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)だっけ?

ほった:左様でございます。

明照寺:しかし、プラットフォームまで変えたことを考えると、もう少し変化感とか進化感が欲しい気はしますよね。室内は大きく変わっているんですけど。国産セダンでこんなに大きな1枚ものの液晶パネルが付いている例は、他にないでしょう。

永福:確かに、インテリアの写真を見ると少しハッとするな。ただ、エクステリアに関しては、「スバルはこれでいいんじゃないか」と思うんです。

ほった:同感ですね~。

明照寺:確かに、スバルは質実剛健なメーカーですし、そんなに変化感を出さなくてもいいとは思います。ただまあ、繰り返しになりますけど、もうちょっとだけ進化するところがあってもよかったかなと。

ほった:うーん。確かに“代わり映え”って意味ではビミョーかもしれませんが……。ワタクシ個人としては、悪い方向の変化がなかったことにホっとしてます。スバルは機能優先路線を守ってほしいですね。今の時代、明らかにやり過ぎなブランドが多いですから。

明照寺:それはありますね。私もスバルには、作り手の良心を感じるようなデザインを続けてほしいと思ってます。

永福:良心、大事ですよね! 野心より良心(笑)! このご時勢に、サイズをほぼ据え置いたのも良心のような気もするし。

ボディーサイズは全長×全幅×全高=4840×1840×1500mmと、全長がやや伸びた以外は従来モデルと共通。ホイールベースも2750mmと同じだが、プラットフォームは一新されている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4840×1840×1500mmと、全長がやや伸びた以外は従来モデルと共通。ホイールベースも2750mmと同じだが、プラットフォームは一新されている。拡大
新型「レガシィ」のリアビュー。
明照寺:「ボディーサイドのキャラクターラインにも注目してください。従来型にはあった、ラインの下の凹みがなくなっているでしょう」
永福:「ホントだ」
新型「レガシィ」のリアビュー。
	明照寺:「ボディーサイドのキャラクターラインにも注目してください。従来型にはあった、ラインの下の凹みがなくなっているでしょう」
	永福:「ホントだ」拡大
従来モデルとの連続性を感じさせるエクステリアに対し、インテリアのデザインは一新された。
従来モデルとの連続性を感じさせるエクステリアに対し、インテリアのデザインは一新された。拡大
インストゥルメントパネルの中央に備わる、縦型の巨大なタッチスクリーン。機能面ではもちろん、デザイン面でも新型「レガシィ」の特徴となっている。
インストゥルメントパネルの中央に備わる、縦型の巨大なタッチスクリーン。機能面ではもちろん、デザイン面でも新型「レガシィ」の特徴となっている。拡大
新型「レガシィ」のフロントマスクのどアップ。グリルは常識的な大きさで、スゴ味や迫力よりは、バランスのよさやまとまり感を尊重した意匠といえる。
新型「レガシィ」のフロントマスクのどアップ。グリルは常識的な大きさで、スゴ味や迫力よりは、バランスのよさやまとまり感を尊重した意匠といえる。拡大

セダンに乗って貴族になろう

明照寺:セダン全体の話になっちゃいますけど、私はあまのじゃくなんで、そろそろセダンがカッコいい存在になるんじゃないかと思ってるんですよ。ダサいって言われているセダンが、逆にカッコよくなるんじゃないかなぁと。

永福:セダンの売れ行きが伸びるっていうんじゃなくて、カッコいい存在になるんですね?

明照寺:そうです。SUVとかミニバンばっかりになると、セダン自体がとても特殊なカタチになるじゃないですか。実は自分も次のクルマをセダンにしようと検討中です(笑)。

永福:セダンの数がこのまま減り続けていくと、どんどん貴族感が高まってくる気はしますね。

明照寺:フォーマル感ですね。この間、ネットニュースで「20代にいまセダンが人気」という記事を読んだんですよ。単にセダンは中古車が安いからっていう理由だったんですけど(笑)、ちょっと色めき立ちました。

永福:ファッションとして、あえてセダンに乗る。それが貴族的っていうのは絶対アリですよ! 自分もいま、BMW 3シリーズのセダンに乗ってますけど、ツーリングと迷った末、中古車相場が安かったのでセダンにしたんです。でも貴族感ビンビンです(笑)。

ほった:仮にこのレガシィが日本に導入されたら、レア度高いでしょうしねぇ。

永福:セダンに乗って貴族になろう、だね。

(文=永福ランプ<清水草一>)

2019年のシカゴモーターショーにて、カメラの集中砲火を浴びる新型「レガシィ」。
2019年のシカゴモーターショーにて、カメラの集中砲火を浴びる新型「レガシィ」。拡大
ライバルがクーペ的なデザインへと移行する中にあって、依然としてセダンらしさを保ち続ける「レガシィ」。セダンというジャンル自体が少数派となって久しい昨今、その存在はより貴重なものとなっている。
ライバルがクーペ的なデザインへと移行する中にあって、依然としてセダンらしさを保ち続ける「レガシィ」。セダンというジャンル自体が少数派となって久しい昨今、その存在はより貴重なものとなっている。拡大
ほった:「セダンのこのフォーマルさは、SUVやミニバンには出せない魅力ですよね~」
永福:「まさに貴族の乗り物だねえ」
ほった:「セダンのこのフォーマルさは、SUVやミニバンには出せない魅力ですよね~」
	永福:「まさに貴族の乗り物だねえ」拡大
 
第30回:スバル・レガシィの画像拡大
明照寺 彰

明照寺 彰

さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。

永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。

webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。

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