第1回:これぞオートバイのカッコよさ
大排気量のクラシックモデルに高ぶる
2019.04.20
JAIA輸入二輪車試乗会2019
昔ながらの“単車らしい”デザインをまとう、クラシカルなオートバイ。とはいえブランドや仕立てが変われば、その乗り味もまったく異なるものになる。今回ピックアップした伊・米・英の3台では、どんな走りが楽しめるのか?
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見ても乗っても個性の塊
モト・グッツィV9ボバースポーツ……131万7600円
進行方向に向かってピースするようにV型2気筒エンジンを積むモト・グッツィ。90度Vツインからの動力は、ぜいたくにもシャフトを通じて後輪に伝えられる。
現行ラインナップの排気量は大きく分けて2種類。ナナハン(744cc)を積むのが「V7 III」、853ccが「V9」(と新しい「V85TT」)で、それぞれが細かい派生車種をラインナップする。
フラッグシップたる「V9ローマー」を“ちょいワル”のマッチョ系に仕上げたのが、「V9ボバー」だ。フェンダーをカットし、前後ホイールを16インチに小径化する一方、ファットタイヤを履いて、男らしさを強調。バーハンドルも、フラットな形状に変更されている。「スポーツ」は、V9ボバーの特別仕様モデルで、シングルシート、オーリンズ製サス、カットされたスリップオンアルミマフラーで、その名の通りスポーティーに装う。
シート高は785mm。足つきがいい。やや腕を伸ばして、イタリアンマッチョな気分(!?)でキーを回すと、ズロン! Vツインに火が入ると同時にボディーが左右に揺すられる。「うーん、この瞬間がモト・グッツィだね」と、にわかライダー(←ワタシのことです)はニヤけるわけです。
空冷Vツインは、2バルブのOHVユニット。55psの最高出力と62Nmの最大トルクを発生する。ハイメカ&ハイスペックな国産バイクを見慣れた目には、「そんなものなの?」と思わせるアウトプットですが、スロットルをひねったとたん、そんな疑念はフッ飛びます。いきなりブッ太いトルクがドンとバイクを押し出して、油断していたライダーをその場に置き去りにするような加速を見せる。なにしろ最大トルクの発生回転数が3000rpmなので、軽く流しているつもりでもドンドン速度が乗っていく。V9ボバー、普通に速いよ。
ステアリングを切ったとたんグラッとくる、極初期ロールの速さも楽しい。もちろん、すぐに通常のロールになるので、独特のリズムを持って適度なスポーツ走行を堪能できる。見ても、乗っても、V9ボバースポーツは、個性の塊。惜しむらくは、イタリアンプレイボーイを気取ろうとしてもタンデムできないこと、かな。
(文=青木禎之/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)
飛ばさなくても楽しい、という性能
ハーレーダビッドソン・ダイナ ローライダー……212万8000円
たとえバイクに詳しくなくても、「ローライダー」という車名を聞いたことがあるという人は多いだろう。大型ツアラーの力強さと「スポーツスター」の俊敏さを兼ね備え、ぐっと低く身構えたワイルドなルックスのローライダーは、数多いハーレーのモデルの中でも1、2を争う人気モデルだ。
ただし今回試乗したローライダーは現行型ではない。2017年モデルの「FXDLローライダー」である。実はローライダーは2018年モデルから大きな変更を受けている。端的に言えば、2本のリアサスペンションを持つ「ダイナ」ファミリーから、1本サス(モノサス)の「ソフテイル」ファミリーになったのだ。
そのモデルチェンジについて詳細を書くには紙幅が足りないが(ウェブだけど)、今回はあえて伝統の2本サスを持つ「ダイナ ローライダー」に乗ってみた。ちなみにこのJAIA試乗会には、現行の2019年モデルとの比較のために用意された車両だ。
ローライダーのゆえんたる、高さ700mmの低いシートにまたがりステップに足を乗せると、いわゆる“う〇こ座り”的な姿勢を取ることになる。このライディングポジションがなんとも“ワイルド感”をあおるのである。プルバックしたハンドルに手を添えれば、気分はイージー・ライダー。
1690ccの「ツインカム103」エンジンは、「ドッ、ドドッ、ドッ、ドドッ」という生き物のような鼓動を感じさせながら、豊かなトルクを紡ぎ出す。実はハーレーは、そのイメージから想像するよりずっと速い。特にハーレーの中でもスポーティーなモデルに位置付けられるダイナ ローライダーは、峠道でもダイナミックな走りを楽しむことができる。
だが今回試乗して、やはりハーレーの魅力は「飛ばさなくても楽しい」ことなのだと感じた。ポジションも、エンジンの鼓動も、100km/h以下で走ったときが一番気持ちいいようにできているのだ。それって実はストリートバイクとして一番大事な「性能」なんじゃないかと、この日あまたのモデルに乗った後で、あらためそう思ったのだった。
(文=河西啓介/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)
見た目と中身は違います
トライアンフ・スクランブラー1200XC……203万1900円
このところ躍進目覚ましいトライアンフ・モーターサイクルズ。2019年は日本市場において「毎月1台以上のニューモデルを投入する」と公言し、それを続けている。
この「スクランブラー1200」は3月に発売されたばかりの新型。車名の通りオン/オフロードの走行性能を“スクランブル”させたデュアルパーパスモデルで、スタンダードの「XC」と、さらにオフロード性能を高めた「XE」をラインナップしている。エンジンはどちらも「ボンネビル」シリーズに積まれる1200cc水冷直列2気筒だ。
トライアンフの強みは、ボンネビルシリーズのような過去のヘリテイジを生かした“ネオクラシック”モデルと、「スピードトリプル」や「デイトナ675」のような最新スポーツモデル、この2つのラインナップが見事に共存していることだ。
だが、実は1200スクランブラーは、そのどちらにも当てはまらない。というのも、見た目はクラシック路線だが、中身はデジタルデバイスをフル装備した本気のアドベンチャーモデルなのだ。
エンジンをかけると、2本出しのアップマフラーからパンパンッ! とはじけるような排気音が響く。トルク重視でチューニングされた1200ccツインエンジンはちょっと驚くほど元気で、走りだしてすぐこれがレトロな“雰囲気モノ”ではないことが分かる。
フロント21インチのスポークホイール、SHOWA製の倒立フロントフォーク、オーリンズ製のリアサスペンション、この日の短い試乗で試すことはできなかったが、その車体構成を見るだけで、トライアンフが本気でこのバイクを作り込んできたということが分かる。単眼のアナログ計器風でありながら、実はフルカラーのTFTディスプレイにあらゆる表示が可能なメーターも、クラシックなデザインと最新技術を融合したスクランブラーのコンセプトを表している。
見かけはレトロ、中身は最新かつ高性能。それってプロダクトとしてひとつの“理想型”である。クルマで言えばBMW傘下に入ってからの「MINI」みたいなものだろうか。
200万円を超える価格は、最初に聞いたときは正直、「ちょっと高いかな……」と思ったが、それはトライアンフ“第3のラインナップ”についての自信の表れなのかもしれない、と思うと納得できる気もしてくるのだった。
(文=河西啓介/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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