【F1 2019 続報】新しいヒーローの誕生 伝統のモンツァが真っ赤に染まった日

2019.09.09 自動車ニュース bg
F1第14戦イタリアGPを制したフェラーリのシャルル・ルクレール(写真中央)、2位に入ったメルセデスのバルテリ・ボッタス(同左)、3位でレースを終えたメルセデスのルイス・ハミルトン(同右)。(Photo=Ferrari)
F1第14戦イタリアGPを制したフェラーリのシャルル・ルクレール(写真中央)、2位に入ったメルセデスのバルテリ・ボッタス(同左)、3位でレースを終えたメルセデスのルイス・ハミルトン(同右)。(Photo=Ferrari)拡大

2019年9月8日、イタリアのモンツァ・サーキットで行われたF1世界選手権第14戦イタリアGP。伝統のコースで最古参チームのフェラーリが久々の優勝。ポディウムの頂点から真っ赤に染まった大観衆の海原を眺めたのは、新たな時代を切り開こうとしている若きヒーローだった。

序盤からハミルトンの激しい突き上げにあうも、アグレッシブかつディフェンシブな戦いで王者に先を行かせなかったルクレール(写真)。レース後、「マックス・フェルスタッペンに抜かれ初Vを逃したオーストリアGPの教訓を生かした走りだった」と語った。タイヤに苦しんだハミルトンに代わってボッタスが攻め立てるも、ルクレールがトップの座を失うことはなく、ベルギーGPから2戦連続のポール・トゥ・ウィンを達成。フェラーリは2010年のフェルナンド・アロンソ以来となる、通算19回目の地元優勝を遂げた。(Photo=Ferrari)
序盤からハミルトンの激しい突き上げにあうも、アグレッシブかつディフェンシブな戦いで王者に先を行かせなかったルクレール(写真)。レース後、「マックス・フェルスタッペンに抜かれ初Vを逃したオーストリアGPの教訓を生かした走りだった」と語った。タイヤに苦しんだハミルトンに代わってボッタスが攻め立てるも、ルクレールがトップの座を失うことはなく、ベルギーGPから2戦連続のポール・トゥ・ウィンを達成。フェラーリは2010年のフェルナンド・アロンソ以来となる、通算19回目の地元優勝を遂げた。(Photo=Ferrari)拡大
3番グリッドからスタートしたボッタス(写真)は、レース終盤、ハミルトンに代わり2位からルクレールを追ったものの、先頭を行くフェラーリを抜くことはできなかった。「すべてやり尽くした」とはレース後の弁。ドライバーズチャンピオンシップ2位のボッタスは、ポイントリーダーのハミルトンとの差を2点だけ詰めた。(Photo=Mercedes)
3番グリッドからスタートしたボッタス(写真)は、レース終盤、ハミルトンに代わり2位からルクレールを追ったものの、先頭を行くフェラーリを抜くことはできなかった。「すべてやり尽くした」とはレース後の弁。ドライバーズチャンピオンシップ2位のボッタスは、ポイントリーダーのハミルトンとの差を2点だけ詰めた。(Photo=Mercedes)拡大
この週末は細かなミスも目立ったメルセデスのハミルトン(写真)。それでも予選Q3では0.039秒という僅差で2番手につけることができた。イタリアGP3連勝を目指した今回のレースでは、トップのルクレールを僅差で追うも抜けず。その間にタイヤを酷使しすぎたか、3位に落ちてしまう。後続との間隔があいていたため、順位を失わずにタイヤ交換することができ、ファステストラップのボーナス1点を手土産に表彰台に登壇。ランキング2位ボッタスとの差は2点だけ縮まったが、それでもまだ63点ものギャップがある。(Photo=Mercedes)
この週末は細かなミスも目立ったメルセデスのハミルトン(写真)。それでも予選Q3では0.039秒という僅差で2番手につけることができた。イタリアGP3連勝を目指した今回のレースでは、トップのルクレールを僅差で追うも抜けず。その間にタイヤを酷使しすぎたか、3位に落ちてしまう。後続との間隔があいていたため、順位を失わずにタイヤ交換することができ、ファステストラップのボーナス1点を手土産に表彰台に登壇。ランキング2位ボッタスとの差は2点だけ縮まったが、それでもまだ63点ものギャップがある。(Photo=Mercedes)拡大

4冠の元王者ベッテルの正念場

1週間前のベルギーGPで、GPキャリア34戦目にしてシャルル・ルクレールが初優勝を遂げたことで、フェラーリ内のパワーバランスが大きく変わりかねない状況となった。

ドライバーズサーキットとして名高いスパ・フランコルシャンでポールポジションからスタートしたルクレールは、レース終盤のルイス・ハミルトンからの激しいチャージを振り切り、トップでチェッカードフラッグを受けた。対するチームメイトのセバスチャン・ベッテルは、予選2番手からピットストップ後に首位に立つも、チームからの指示でその座を譲り、メルセデス勢に立ちふさがる防戦の壁としてルクレールの優勝に貢献。ハミルトンに抜かれると2度目のタイヤ交換を行い、結果4位に終わった。

レース後に行われた、フェラーリのクルーが集まっての記念撮影でのこと。代表のマッティア・ビノットらと中央に陣取り、スクーデリア今季初勝利の喜びを分かち合っていたルクレールに対して、ベッテルは最後列に引っ込み、遠慮するかのように控えめに祝っていたのが印象的だった。

ベッテルが最後に勝ち星をあげたのは、1年前のベルギーGP。以来、表彰台の頂点がないばかりか、致命的ともいえるミステイクを6回も連発したことは再三指摘されてきたとおりだ。

短い期間ながら、今季これまでルクレールにも苦い経験があった。第4戦アゼルバイジャンGP予選では単独クラッシュという手痛いミスで出遅れ、また第9戦オーストリアGPではリード中に脇の甘さを突かれマックス・フェルスタッペンに勝利を奪われた。雨の第11戦ドイツGPではスピンしてリタイアということもあり、第2戦バーレーンGPではパワーユニットトラブルで初Vを逃すなど悔しい思いも味わった。

しかしルクレールには、ミスや悪い出来事をしっかりと糧にして前進するという、極めて高い学習能力が備わっていた。来月ようやく22歳になるこの若者はレースごとに成長を続け、速さに加え賢さに磨きをかけながらついにポディウムの頂点に立った。レースで勝ち、予選でも過去6戦でチームメイトを凌駕(りょうが)。彼は今、F1最古参チームであり、大きなプレッシャーにさらされることを運命づけられたフェラーリというチームの、リーダーにならんとしているのだ。

今度の戦いの舞台は、スクーデリアのお膝元イタリア。この週末に5年間のGP開催延長がようやく決まった、平均時速260kmという超ハイスピードコース、モンツァである。直線スピードを武器とするフェラーリでルクレールが連勝を飾るとなれば、32歳の大先輩、ベッテルはいよいよ立場がなくなってしまう状況だった。

4冠を達成した元王者であり、歴代3位の52勝を記録しているベッテル。その1勝目は、11年前のここモンツァで記録された。デビュー2年目、21歳73日の彼は、雨を味方に弱小トロロッソを駆りポール・トゥ・ウィンを達成。当時の最年少ポールシッター&ウィナーというレコードを打ち立てた。

新旧ヤングスターの世代交代ということになりかねない現状に、元王者はどう応えるか。ベッテルは、キャリア一番の正念場を迎えていたのだが……。

予選でルノーの2台がトップ6に入ったのは2007年以来のこと。パワーセンシティブなモンツァで、長年非力だといわれ続けたルノーのパワーユニットが力強く回り、ダニエル・リカルド(写真)5位、ニコ・ヒュルケンベルグ6位と絶好のグリッドを得た。レースではベッテルの脱落にも助けられ、リカルド4位、ヒュルケンベルグは5位でゴール。2008年日本GP以来となるトップ5内でのダブル入賞を記録し、コンストラクターズチャンピオンシップでトロロッソを抜き5位に浮上した。(Photo=Renault Sport)
予選でルノーの2台がトップ6に入ったのは2007年以来のこと。パワーセンシティブなモンツァで、長年非力だといわれ続けたルノーのパワーユニットが力強く回り、ダニエル・リカルド(写真)5位、ニコ・ヒュルケンベルグ6位と絶好のグリッドを得た。レースではベッテルの脱落にも助けられ、リカルド4位、ヒュルケンベルグは5位でゴール。2008年日本GP以来となるトップ5内でのダブル入賞を記録し、コンストラクターズチャンピオンシップでトロロッソを抜き5位に浮上した。(Photo=Renault Sport)拡大
前戦ベルギーGPでホンダの最新型パワーユニット搭載を見送ったフェルスタッペン(写真)。イタリアGPではその「スペック4」を載せることになり、最後尾からのスタートが事前に決まっていた。マシンやパワーユニットの感触を確かめるべく出走した予選Q1だったが、パワーロスを訴えたことでタイム計測ならず。この事象は、縁石を越えた際に過剰なホイールスピンが発生、オーバーレブを検知したホンダとFIAのモニタリング双方のシステムが働いたためだったことが判明した。19番グリッドからスタートしたレースでは、シケイン状のターン1に進入する集団との衝突を避けようとするも、セルジオ・ペレスのレーシングポイントと接触してしまい、1周を終えてピットインを余儀なくされた。終盤8位まで挽回するものの、またもや前を走るペレスを相手に難儀し、そのままの順位でゴールした。チームメイトのアレクサンダー・アルボンは、8番グリッドから6位フィニッシュ。イタリアでのレッドブルは不発に終わった。(Photo=Red Bull Racing)
前戦ベルギーGPでホンダの最新型パワーユニット搭載を見送ったフェルスタッペン(写真)。イタリアGPではその「スペック4」を載せることになり、最後尾からのスタートが事前に決まっていた。マシンやパワーユニットの感触を確かめるべく出走した予選Q1だったが、パワーロスを訴えたことでタイム計測ならず。この事象は、縁石を越えた際に過剰なホイールスピンが発生、オーバーレブを検知したホンダとFIAのモニタリング双方のシステムが働いたためだったことが判明した。19番グリッドからスタートしたレースでは、シケイン状のターン1に進入する集団との衝突を避けようとするも、セルジオ・ペレスのレーシングポイントと接触してしまい、1周を終えてピットインを余儀なくされた。終盤8位まで挽回するものの、またもや前を走るペレスを相手に難儀し、そのままの順位でゴールした。チームメイトのアレクサンダー・アルボンは、8番グリッドから6位フィニッシュ。イタリアでのレッドブルは不発に終わった。(Photo=Red Bull Racing)拡大

珍事が起きた予選 ポールは2戦連続でルクレール

イタリアGP初日はルクレールが好調で、雨も絡んだ2回のプラクティスいずれでもトップ。翌日の最後のプラクティスではベッテルが奮起し最速と、予想通りフェラーリが地元の大観衆“ティフォシ”の前で好発進を決めた。

全21戦の中で、これだけローダウンフォースで走るサーキットもモンツァをおいてほかになく、予選ではスリップストリームを使っての引っ張り合いが激化。スリップをうまく使うと1周で約0.5~0.7秒速くなるとなれば、各陣営とも目の色が変わるというものだ。不利な先頭を走りたくないがゆえに、各車が理想的なポジションを探し求めた結果、Q3最後のアタックは、アウトラップ中の駆け引きに各ドライバーが没頭するあまり速度が落ち、ほとんどのマシンが時間切れでタイム計測できないという珍事が起きた。

結局、最初のアタックのタイム順となり、ルクレールが2戦連続、4回目のポールポジションを獲得。その後ろには、0.039秒という僅差でハミルトンが2位、バルテリ・ボッタス3位とメルセデス勢が並んだ。ベッテルはトップから0.150秒差の4位。続いてダニエル・リカルド5位、ニコ・ヒュルケンベルグが6位とルノーが好位置を得た。

タイムを出したのは7位につけたマクラーレンのカルロス・サインツJr.まで。残る3台は、1回目のフライングラップ中にアルファ・ロメオのキミ・ライコネンがクラッシュ、赤旗となったこともあり、一度も計時することなくセッションを終えた。レッドブルのアレクサンダー・アルボン8位、レーシングポイントのランス・ストロール9位。マシンを壊したライコネンは10位だったが、マシン修復のためピットレーンからのスタートとなり、彼のチームメイトであるアントニオ・ジョビナッツィが繰り上がった。

なお、ベルギーGPで一部のマシンに投入されたホンダの新型パワーユニット「スペック4」を、今回はマックス・フェルスタッペンのレッドブルとピエール・ガスリーのトロロッソに搭載したことで、ペナルティーによりフェルスタッペンは最後尾19番グリッド、ガスリーは17番グリッドからのスタートとなった。

またQ3の事態を受け、不必要に遅く走ったとしてヒュルケンベルグ、サインツJr.、ストロールには警告が出された。

ベルギーGPでのダニール・クビアトに続き、イタリアGPではピエール・ガスリー(写真)にもホンダの新型「スペック4」ユニットが搭載されたことで、ガスリーはペナルティーを受け17番グリッドからスタート。トロロッソのもう1台、クビアトは12番グリッドから入賞を目指した。しかしクビアトのマシンは31周目に白煙をあげてストップ、リタイア。ガスリーは、スピンしたランス・ストロールのマシンを避けようとしてコースオフするなどしながら、入賞圏まであと一歩及ばず11位でレースを終えた。(Photo=Toro Rosso)
ベルギーGPでのダニール・クビアトに続き、イタリアGPではピエール・ガスリー(写真)にもホンダの新型「スペック4」ユニットが搭載されたことで、ガスリーはペナルティーを受け17番グリッドからスタート。トロロッソのもう1台、クビアトは12番グリッドから入賞を目指した。しかしクビアトのマシンは31周目に白煙をあげてストップ、リタイア。ガスリーは、スピンしたランス・ストロールのマシンを避けようとしてコースオフするなどしながら、入賞圏まであと一歩及ばず11位でレースを終えた。(Photo=Toro Rosso)拡大

またしても大失態を演じたベッテル

53周レースのホールショットを奪ったのはルクレール。一瞬ボッタスに並ばれたもののハミルトンが2位を守り、3位ボッタスの後ろには4位ヒュルケンベルグ。ベッテルは5位に落ちてオープニングラップを終えたのだが、翌周すかさずルノーを抜き返すことができた。後方スタートのフェルスタッペンは、シケイン状のターン1進入時に前方の集団を避けようとするも、セルジオ・ペレスのレーシングポイントに接触してしまいコースアウト。1周を終えピットインし、タイヤとともにノーズも交換、再び最後尾からの追い上げとなった。

6周目、あろうことかフェラーリの1台が「アスカリ・シケイン」で単独スピン。4位を走っていたベッテルだった。コースに戻る際、後続のストロールと接触、レーシングポイントをスピンに追い込んでしまい、またそのストロールを避けようとガスリーがグラベルに逃げるなど、一連の混乱が生じた。フロントウイングの修復とタイヤ交換で最後尾まで落ちたベッテルには、10秒加算のペナルティーが言い渡され再起が難しい状況に。結局、ポイント圏外の13位でレースを終えることになる。そしてベッテルの脱落により、先頭を走るルクレールは、1.5秒後ろにメルセデスの2台を従えて孤軍奮闘を強いられることとなった。

20周目に上位グループの先陣を切ってピットに入ったのは2位ハミルトン。ソフトタイヤからミディアムに履き替え、5位でコースに復帰した。翌周トップのルクレールもタイヤ交換に踏み切ったが、こちらはハードを選択し、ハミルトンの目の前で戻った。その後もベルギーGP同様、いやそれ以上に、ルクレールに対するメルセデス勢の激しいチャージが続いたのだった。

コンストラクターズランキングで7位につけているレーシングポイントの予選は、2台で明暗が分かれることに。ペレスはQ1走行中にメルセデスのパワーユニットにトラブルが起き17位。もう一方のストロール(写真)は今季初めてQ3まで駒を進め、9番グリッドという好位置を得た。ストロールはスタート直後に7位に上がるも、単独スピンしたセバスチャン・ベッテルに当てられてしまいスピン。全くのもらい事故だったが、コースに危険なマナーで戻ったことでドライブスルーペナルティーを受け、結果12位でゴール。ペレスはといえば、最後までフェルスタッペンを抑え込み7位入賞。レースでは逆のかたちで明暗が分かれた。(Photo=Racing Point)
コンストラクターズランキングで7位につけているレーシングポイントの予選は、2台で明暗が分かれることに。ペレスはQ1走行中にメルセデスのパワーユニットにトラブルが起き17位。もう一方のストロール(写真)は今季初めてQ3まで駒を進め、9番グリッドという好位置を得た。ストロールはスタート直後に7位に上がるも、単独スピンしたセバスチャン・ベッテルに当てられてしまいスピン。全くのもらい事故だったが、コースに危険なマナーで戻ったことでドライブスルーペナルティーを受け、結果12位でゴール。ペレスはといえば、最後までフェルスタッペンを抑え込み7位入賞。レースでは逆のかたちで明暗が分かれた。(Photo=Racing Point)拡大
「マシンはとても良くてハッピーだったし、走りにも満足しているよ」とは、予選後のベッテル(写真)の弁。Q3最初のアタックは集団の先頭となり単独走行を余儀なくされ、スリップストリームが使えず4番手。結局そのポジションのままグリッドが確定したのだが、「レースでは多くのチャンスがあるから」と、日曜日への希望を語っていた。しかし決勝では、またしても悪癖のドライビングミスが……。4位走行中に単独スピンという失態を演じ、コースに危険な戻り方をしてストロールと接触。これで10秒のペナルティーを科せられるはめに。チームメイトのルクレールが華々しい連勝を飾る影で、フェラーリの熱狂的なファンの前で13位という醜態をさらしてしまった。速さに加え、うまさも身につけつつあるルクレールに、豊富な経験に裏付けされたベテランの技で対抗したいベッテルだが、4冠の元王者の復権はなるのか。(Photo=Ferrari)
「マシンはとても良くてハッピーだったし、走りにも満足しているよ」とは、予選後のベッテル(写真)の弁。Q3最初のアタックは集団の先頭となり単独走行を余儀なくされ、スリップストリームが使えず4番手。結局そのポジションのままグリッドが確定したのだが、「レースでは多くのチャンスがあるから」と、日曜日への希望を語っていた。しかし決勝では、またしても悪癖のドライビングミスが……。4位走行中に単独スピンという失態を演じ、コースに危険な戻り方をしてストロールと接触。これで10秒のペナルティーを科せられるはめに。チームメイトのルクレールが華々しい連勝を飾る影で、フェラーリの熱狂的なファンの前で13位という醜態をさらしてしまった。速さに加え、うまさも身につけつつあるルクレールに、豊富な経験に裏付けされたベテランの技で対抗したいベッテルだが、4冠の元王者の復権はなるのか。(Photo=Ferrari)拡大

メルセデスの猛攻をはねのけルクレール2連勝

1位ルクレールと2位ハミルトンによる僅差の攻防、その最大の見せ場は23周目に訪れた。第2シケインでハミルトンがルクレールの真横に並びかけたが、ルクレールは自らのラインを頑として譲らず、ハミルトンはダートに片方のタイヤをのせてコースをショートカットせざるを得なくなった。このアクションに対し、ルクレールには警告を意味する黒白の旗が出されたのだが、当の本人は「何が悪いんだ?」と全く意に介さない様子だった。

0.3~0.5秒というほんのわずかなギャップでプレッシャーをかけ続けるハミルトン。ルクレールがタイヤをロックアップさせ、一瞬コース脇にはみ出てしまったのは36周目のことだったが、順位は変わらなかった。

なかなか抜けないことに焦りを募らせていたハミルトンのタイヤは、いつの間にか消耗が進んでいた。そんなハミルトンに飛んだピットからの指示は、「ルクレールのミスを誘うんだ」。しかし42周目、そのハミルトンがミスを犯してしまう。コースを外れシケインをショートカットしている最中に、2位の座をボッタスに明け渡してしまったのだ。タイヤにブリスターが発生したハミルトンは、50周目に2度目のタイヤ交換を行い、ファステストラップを更新して3位でチェッカードフラッグを受けることとなった。

首位ルクレールの次なる敵はボッタス。もう1台のメルセデスは、1.5秒あったタイム差を削り0.6秒差まで迫ったものの、周回遅れを抜く際にオーバーシュートしてしまいギャップは再び1秒台に。それでも諦めなかったボッタスが、最終的に0.8秒差まで追い詰めるもゲームオーバーとなり、赤いマシンが最初にチェッカードフラッグをくぐり抜けたのだった。

今年で69回目を迎えたモンツァでのイタリアGP。レース後にスタンドからコースに観客がなだれ込み、おなじみのお祭り騒ぎが繰り広げられたのだが、今回は例年以上の盛り上がりを見せていた。それもそのはず、フェラーリが地元モンツァで勝ったのは、2010年のフェルナンド・アロンソ以来のこと。マラネロ在籍5年目のベッテルですら成し遂げたことがなかった快挙を、デビュー2年目のルクレールがやってのけたのだ。

赤い海原を前にポディウムの頂点に立ったルクレール。イタリアは、新しいヒーローの誕生に狂喜乱舞した。

これでヨーロッパラウンドが終了し、シーズンは3分の1の7戦を残すのみとなった。次戦シンガポールGP決勝は、9月22日に行われる。

(文=bg)

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