第592回:旅に出たくなるのがスバル
歴代「レガシィ」でグランドツーリングを体感(後編)
2019.10.04
エディターから一言
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平成とともに誕生し、世代を重ねてきた「レガシィ」。その進化の過程で培ったグランドツアラーという資質を受け継ぐ「レヴォーグ」。長野まで両モデルを走らせ、初代レガシィと最新レヴォーグの間に過ぎた歳月をあらためて考えてみた。
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26年前のGTタイプS2
東京から“日本一の星空の村”として知られる長野県阿智村までのグランドツーリングで初日に乗ったレガシィの「ツーリングワゴンGTタイプS2」は、BBS製アルミホイールや専用サスペンションなどを備えたグレード。1992年に追加発売されたモデルだというが(平成5年式という)、残念ながら詳しくは覚えていない。現代の基準からすればさすがにボディーはいささかゆるい感じがするが、200PSを生み出すはずの2リッターフラット4ターボは十分に実用的で高速道路でも山道でもまったく不満を感じなかった。
ご存じのように、スバルはレガシィ発売の翌年1990年からレガシィをベースにしたグループAラリーカーでWRC(世界ラリー選手権)に本格参戦を始め、93年のニュージーランドで初優勝を遂げる。ちょうどその頃は自動車雑誌『カーグラフィック』のラリー担当として、年間数戦は現地で取材していたので、STI初代社長の久世さんや3代目レガシィの主管を務め、その後やはりSTI社長になった桂田さんには大変お世話になった記憶がある。
桂田さんは欧州ラウンドに出張する際は、いつもライバルメーカーのクルマに乗っており、ラリーのことだけでなく「ウチのと比べるとあそこが優れている」などとクルマ全般について率直な意見を語ってくれたものだ。
前述したようにレガシィは最初から海外志向というか、世界で評価されることを目指していたが、世界に追いつけ追い越せという当時のムードは、そんな挑戦的な先人たちの熱意が作り出したものだったように思う。
あの当時は後にワールドチャンピオンとなるコリン・マクレーもリチャード・バーンズもまだ若手で、プロドライブの本拠地(英国)を取材した時にはリチャードが専属運転手としてわれわれの取材に付き合ってくれた。スバルのマニュファクチュアラーズタイトル3連覇に貢献したそのふたりとも、30代の若さであっけなく亡くなってしまった。
一世風靡のビルシュタイン付きGT-B
2日目に乗ったBG型ツーリングワゴン「GT-B」(これも4段AT)は、2代目の途中のマイナーチェンジで追加され(1996年)、当時一世を風靡(ふうび)したモデルだった。ビルシュタイン製倒立式ダンパーを装備した証しのエンブレムと黄色のチューブが目印で、2ステージターボに進化していたフラット4ターボはMT車で当時の自主規制枠いっぱいの280PS、4段ATモデルでも260PSを生み出した。
試乗車は1997年式というから20年以上も前のモデルながら、きちんと整備されていたおかげで、現代の車両に比べてターボのレスポンスが若干鈍いことを除けば、私は今でも問題なく日常使用できると感じた。
その後レガシィは3代目(1998年)でセダンを「B4」として独立させ、2003年発売の4代目ではついに全幅が1730mmとなって、いわゆる3ナンバーサイズに大型化。米国市場で人気を博するのと歩調を合わせるように成長したおかげで2014年の6代目ではツーリングワゴンが姿を消したが、その代わりに2014年に4代目ワゴンと同等のボディーサイズを備えたレヴォーグが登場する。
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30年前からぶれないコンセプト
初代と2代目のレガシィから乗り換えた最新モデルのレヴォーグは、1.6リッター仕様でさえ当たり前だが見違えるようで、かっちりフラットな乗り心地も正確なステアリングフィールも、さらにはシャープで頼もしいスロットルレスポンスも過ぎた歳月を感じさせるものだった。
何よりもツーリングアシスト付きの最新版アイサイトVer.3が装備されていることが心強かったが、高いスタビリティーを生かして快適に遠くまで走れるという4WDワゴンの基本性能はレガシィが誕生した30年前から少しもぶれていないといえるだろう。これでクルージング時の燃費がもう少し良ければ言うことなし、なのだが、これはスバルが次のレヴォーグで解決しなければならない課題だろう。
「GT」はパワフルであることを指すのではなく、快適に安心して遠くまで走る性能である、というスバルの主張はまったくその通りである。妙な疲労感を覚えることなく遠くまで一気に走れてこそGT、それが本当の自動車である。
(文=高平高輝/写真=花村英典、スバル/編集=櫻井健一)

高平 高輝
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