No Garage, No Life! | オーナーのこだわりがつまったエンスー派のガレージ
大好きな“エス”と遊ぶ趣味を究めるための空間 2019.12.02 Gear Up! 2020 Winter もともと手先が器用な人なら、自身の手で整備や修理までやりたくなるのは 自然の流れかもしれない。スペースの確保はもちろんのこと、気力の問題もあり、実際にできるかどうかとなると話は別だが、本格的にクルマと向き合っている人もいる。今回紹介するガレージは愛車をいじって遊ぶための空間である。家を建てるには、まず土地が必要だ。広さは約40坪。これだけの面積があれば、十分な大きさの家が建つ。購入した土地に、ある日4tトラックがやって来て、鉄骨などの建築部材が届けば、家族のための家の工事がいよいよ始まる。誰もがそう考えるだろう。奥さまをはじめ家族のみんながそう思う。ところが、その土地はガレージのため、自分のクルマ趣味を究めるガレージのためだったら……。
奥さまの落胆ぶりはいくばくかと想像してしまうが、ともかく「計画どおり」ガレージにしてしまったのが、今回ご登場願った阪本昇次さんである。「ほんとうに最初は家を建てるために土地を買ったんです」と笑う。取りあえずはガレージを作り、家のための土地は後日手に入れたのだという。奥さまと家族の理解なくしては達成しえなかったガレージなのだ。
阪本さんが思い描いたのは、「自分で(クルマを)いじれるガレージ」である。大好きな「ホンダS800」ととことん遊べる場所だ。「板金塗装まで自分でやりたかったくらい」と語る。それゆえにガレージは特別に凝ったところはない。ガレージそのものは、スチール製物置でも知られている某メーカーのキットを組み立てたものだ。しっかりした構造でさびないのが気に入っているという。
どんなガレージにするかは人それぞれである。このところ流行(はや)っている居間とガレージの境目がないような、見てくれを大事にする“ビジュアル系”(?)とは異なり、ここは自分でクルマをメンテする「職人系」。整備工場の雰囲気が漂う。使い勝手を最優先に工具が配され、必要な部品はしかるべき場所に納められている。クルマ2台とそれに応じた各種のスペアパーツを置くことができ、作業に必要なスペースを十分に確保できるガレージだ。ガレージの裏手には部品収納小屋もあり、個人でヒストリックカー趣味を楽しむには十分以上の空間。自宅からは離れているとはいえ、徒歩数分のところに位置しているので、それこそ隠れ家的な色合いもある。
ガレージ本体は息子さんの手を借りながら数カ月でこつこつと組み上げた。「パーツ点数は多かったですが、組み立てはそれほど難しくなかったですよ」と阪本さんは言うが、万人ができることではない。それもそのはず、阪本さんはモノづくりの達人なのだ。
60代男子の多くがそうであるように、子どもの頃からクルマに限らず乗り物が好きだった阪本さんは、小学生の時には鉄道に興味を示し、特に鉄道模型にどっぷりハマる日々。はんだ付けもマスターし、各種キットを製作している。高校、大学へと進学するあたりでは、スクラッチで真ちゅう製模型をつくり上げるほどの腕前で、現在も個性豊かな作品づくりで名高い鉄道模型クラブの中心的な存在だ。
そんな阪本さんだから、鉄道模型趣味のひとつの頂点とでもいうべきジオラマ(鉄道模型の世界ではレイアウトと言う)も所有している。着工から9年目の広大なアメリカ開拓者時代の鉄道を再現するレイアウトのサイズは5×5mほどなので、まさにひと部屋分のスペースだ。レイアウトのある建物の2階には息子さん家族がお住まいとのことだが、1階を占める鉄道模型レイアウトと工作部屋は、ガレージを建てた時のように、本来は家族のためのスペースだったのではないかと失礼ながら勘ぐってしまう。
自動車と鉄道模型の趣味、まさに男のロマンをここまで追い求めたことに感服せざるをえないが、レイアウト&ホビー・ルームを確保するにあたり、どう奥さまを説得したのか、そのあたりの経緯については……残念ながら聞きそびれた。
(文=阪 和明/写真=加藤純也)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

阪 和明
-
Gear up! Selection | シノハラタイヤ株式会社 2019.12.2 クルマのなかで、路面と接している唯一の部分であるタイヤ。操縦性や快適性、安全性など、クルマの走りを支える重要なパーツであるからこそ、交換する際は信頼の置けるタイヤショップで行いたい。そこで、技術力とサービス力に定評のあるタイヤのエキスパート集団、「シノハラタイヤ」を紹介する。
-
Gear up! Selection | TEIN/EnduraPro、EnduraPro PLUS 2019.12.2 最も手早く確実に愛車の乗り味を変えられるのが、ダンパーの交換ではないだろうか。その社外品ダンパーの分野に新たな選択肢が増えた。TEINが生み出した、リーズナブルなプライスにして高品質な一般車用ダンパーEnduraPro、およびEnduraPro PLUSである。
-
Wheel Catalog 2019.12.2 “おしゃれは足元から”という言葉があるが、それはクルマとて同様である。いかなるクルマでもホイールを履き替えるだけで、スタイリッシュにも、スポーティーにも、雰囲気を一変させることができるからだ。ここでは、おなじみのホイールブランドによる最新モデルを紹介する。
-
Gear Up! Style #03 | ル・ガラージュ/ドライビンググローブ 2019.12.2 この冬ル・ガラージュが提案するのは、柔らかいラムスキンで作られたドライビンググローブ。外から見るとすっきり細身のシルエットだが、手のひら側にはステアリングを握る際の補強と蒸れ防止が施され、散歩もドライブもシームレスに楽しめる。
-
Gear Up! Style #02 | コノリー/オーバーオール 2019.12.2 メカニックはもちろん、ドライバー本人も作業時に着るオーバーオール。カウハイドレザーの老舗であるコノリーが手がけた、コットンのレーシング・オーバーオールは、動きやすいうえ、全体的にすっきりしたシルエットで、作業もドライビングもこなせる絶妙な仕上がりだ。
-
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
NEW
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。 -
第926回:フィアット初の電動三輪多目的車 その客を大切にせよ
2025.9.4マッキナ あらモーダ!ステランティスが新しい電動三輪車「フィアット・トリス」を発表。イタリアでデザインされ、モロッコで生産される新しいモビリティーが狙う、マーケットと顧客とは? イタリア在住の大矢アキオが、地中海の向こう側にある成長市場の重要性を語る。 -
ロータス・エメヤR(後編)
2025.9.4あの多田哲哉の自動車放談長年にわたりトヨタで車両開発に取り組んできた多田哲哉さんをして「あまりにも衝撃的な一台」といわしめる「ロータス・エメヤR」。その存在意義について、ベテランエンジニアが熱く語る。