メルセデス・ベンツGLB250 4MATIC(4WD/8AT)/GLB200d 4MATIC(4WD/8AT)
見た目以上の本格派 2019.12.10 試乗記 メルセデス・ベンツの新型SUV「GLB」は、「GLA」と「GLC」の間に位置づけられるモデル。都会派といわれるGLAやGLCに対してこちらはオフロード志向を強めたエクステリアが目を引くが、その出来栄えは? 日本導入が見込まれるガソリン/ディーゼル車に試乗し、実力を確かめた。ルックスは本格オフローダー
メルセデスの新しいSUVであるGLBは、「Aクラス」を皮切りに採用されるMFAプラットフォームを用いた、同社にとって8番目のFF系ラインナップとなる。間もなく2代目の発表がうわさされるGLAと同じSUVカテゴリーではありながら、キャラクターは都会的なクロスオーバーテイストのそれとは異なり、悪環境をものともしないクロスカントリー的なテイストでまとめられ、すみ分けを意識的に明確化しているようだ。
ちなみにプロポーションは先に登場した「GLS」にも相通じるところがあるが、ボディーサイズは全長×全幅×全高=4634×1834×1659mm(GLB250 4MATIC)と極めて現実的なものだ。ホイールベースは2829mmとメルセデスのFF系としては最も長い。これによってGLBは、大きな荷室空間をアイデアフルに用いることのできる5シーター仕様だけでなく、3列目のシートを配した7シーター仕様も成立させている。
GLBの商品企画担当者によれば、7人乗りのニーズは日本のみならず、このグローバルモデルの主戦場となる中・米でも期待されるそうだ。理由は日本と同じく核家族化・高齢化に伴う3世代の短距離移動や、子供だけでなくその友達も一緒に送迎……などという用途が増えていることだ。
となれば、同価格帯でより大きな7人乗りSUVの選択肢もかの国ならばあるわけだが、担当者いわく、湾岸の都市部では環境負荷を低減させるべく自分たちの生活をミニマライズしようという新たな価値観も生まれており、そこにミートするユーティリティーがGLBにはあるという。ちなみにGLBの3列目シートに座る乗員の推奨身長は168cm以下。もちろんそれ以上でも座れなくはなく、法的に問題はないが、社内の衝突試験での結果をもとにした上限値として公表している。
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細かな気配りを感じる装備
内装は造形的に「Bクラス」との共通項が多く見受けられるが、トリムやアクセントなどで個性を演出している。ラゲッジルームは570~1805リッターの容量を確保。2列目シートはオプションで140mmの前後スライドやリクライニング、40:20:40の3分割可倒機構など多彩な機能をもつ仕様へと変更が可能で、大人4人がゆったりとくつろげるスペースを容易に作り出すことができる。
3列目シートは天地高も足元空間もタイトでやはり子供向けの感は否めないが、シート本体は床面に一体格納できて荷室の機能性は限りなく5人乗りと同等レベルが確保されるなど、使い勝手はしっかりと考えられている。また、全列にカップホルダーやUSBポートなどが配されるなど、装備面においては細かなところまで気が配られている印象だ。
搭載されるエンジンは新世代の2リッター直4ガソリン&ディーゼルが主体となる。日本仕様の詳細およびラインナップは未定だが、ディーゼルは最高出力150PSの「GLB200d 4MATIC」が、ガソリンは同224PSの「GLB250 4MATIC」、そして同306PSを発生するAMGモデルの「GLB35 4MATIC」あたりの導入可能性が高そうだ。
ドライブトレインは一部グレードにFFもあるが、基本的には最大50%の駆動力を後輪側に配分するオンデマンド4WDが主軸。トランスミッションは全グレードで8段DCTが採用される。
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大径タイヤを履きこなす
試乗はオンロードでガソリンモデル、オフロードでディーゼルモデルというローテーションとなり、まずはGLB250 4MATICに乗る。仕様は「エディション1」に相当するもので装備は満載。そして235/45R20という大径タイヤを履くも、感心させられたのは乗り心地の良さだ。
最新のAクラス等と同じ「MFA(モジュラー・フロントドライブ・アーキテクチャー)2」プラットフォームではあるものの、高負荷・高荷重に対応して足まわりの精度感や操舵軸など“建て付けもの”の剛性感を見直しているという点も効いているのだろう、バネ下がぶざまに震えることもなく芯を食った転がりぶりでCセグメント級以上の上質さを感じさせる。これは後に乗った21インチ(!)のGLB35 4MATICでも変わらぬ印象だった。
静粛性の高さも相当なもので、ライド感は総じてコンフォート。あえてラギッドを狙ったであろう外観のイメージとは裏腹な洗練ぶりというのが、正直な印象だ。
ただし、さすがに車格もあってかエンジンの低中回転域の力感はGLB250 4MATICでも余裕しゃくしゃくとはいかない。常に人や荷物をのせるという使い方なら“大きな不満を抱かないくらい”の動力性能だと、見込んでおいた方がいいだろう。
視界がよく取り回しも良好
オフロードで試乗したグレードはGLB200d 4MATIC。標準設定となる18インチにウインタータイヤの組み合わせで悪路に向かうが、ここでさらに驚かされたのは走破性の高さだ。最低地上高は200mmを確保、アプローチ&デパーチャーのアングルも織り込まれたデザインとはいえ、長いホイールベースをものともせず、モーグルや山越えのセクションを擦過や軋(きし)みの音ひとつも立てずにモリモリとクリアするさまはあまたのファッションSUVと完全に一線を画している。
試乗車にはオプションのオフロードエンジニアパッケージが装着されていたため、前後駆動配分は50:50をベースとしているほか、スロットル開度や変速およびESPのマネジメントが悪路前提に最適化されてはいた。が、その走破力は電子デバイスによってのみもたらされるものではない。
乗降時にドアオープニングトリムやドアシルの下部でパンツの裾を汚さないように下端まで覆われたドア形状を見てもわかる通り、GLBは一般的なユーザーが望む以上にSUVとしての配慮が感じられる。もちろん悪路耐性を備えることは骨格設計の時点から織り込まれており、この点で言えば、しっかりと立てられたAピラーや低く取られたショルダーラインによってフロントまわりの視界がすっきりと抜けているあたりは、市街地での取り回しやすさにも大きく影響してくるはずだ。
欧州での認証スケジュールのズレもあって、GLBの投入は2020年の半ば以降がもくろまれている。その価格帯は気になるところだが、4WDをお飾りにしないSUVとして、貴重な存在となるだろう。
(文=渡辺敏史/写真=ダイムラー/編集=櫻井健一)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLB250 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4634×1834×1659mm
ホイールベース:2829mm
車重:1670kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:224PS(165kW)/5500-6100rpm
最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/1800-4000rpm
タイヤ:(前)215/65R17/(後)215/65R17
燃費:7.2-7.4リッター/100km(約13.5-13.8km/リッター、NEDC複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2019年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
メルセデス・ベンツGLB200d 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4634×1834×1659mm
ホイールベース:2829mm
車重:1735kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:150PS(110kW)/3400-4400rpm
最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1400-3200rpm
タイヤ:(前)215/65R17/(後)215/65R17
燃費:5.2-5.5リッター/100km(約18.1-19.2km/リッター、NEDC複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2019年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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