メルセデス・ベンツGLB200d 4MATIC(4WD/8AT)
家族のために 自分のために 2024.10.15 試乗記 メルセデス・ベンツのSUVのなかでも、比較的コンパクト(それでも十分デカいが)な「GLB」。全長4.7mを切る3列シートSUVは、他の兄弟とはどう違うのか? 多人数乗車モデルとしての資質はいかほどか? 改良後のディーゼル+4WDモデルで確かめた。兄や弟とはちょっと違う
試乗車の多くがSUVになって久しい。発売される車種が増えているから当然のことだ。なかでも、最近乗る機会が多くなっているのが3列シートSUVであることに気づいた。6~8人乗車が可能で、ファミリーカーとしても使える。ひところの人気がトーンダウンした感のあるミニバンに代わる存在で、国産・輸入車を問わず選択肢が広がっている。
メルセデス・ベンツも、このタイプのモデルをそろえている。GLBは最もコンパクトなサイズで、エントリークラスという位置づけになるだろう。SUVラインナップのなかでは「GLA」と「GLC」に挟まれているかたちだが、見た目は異彩を放っている。あか抜けた都会派の兄や弟とは違い、ちょっと武骨なワイルド派なのだ。さらに、3列シートを備えることで明確な差別化が図られている。
GLBが登場したのは2020年。GLAが2世代目になったのに合わせて販売が開始された。この2モデルはプラットフォームを共用していて、いずれもエンジンは横置きである。全長と全高はGLBのほうがかなり大きく、ホイールベースも長い。コンパクトと言いながらも、日本の道路状況では神経を使うこともあるサイズになっている。
GLBは、2023年11月に初の大きな改良を受けた(参照)。フロントバンパーやディフューザーなどを新デザインにし、よりSUVらしさを高めたという。試乗車はオプションの「AMGラインパッケージ」を装備していたので、グリルはダイヤモンドパターンのシングルルーバータイプ。ホイールも新デザインの20インチである。
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高い位置のエンジンフード
運転席からの眺めはほかのメルセデス・ベンツ車と変わらない。今ではどのモデルにも統一された意匠が採用されるようになっている。横長のディスプレイがセンターまで広がり、丸型のエアコン吹き出し口が並ぶ。予防安全や運転支援のシステムは最新世代のもので、オプションだが音声操作のインフォテインメントシステム「MBUX」も用意される。
エンジンフードが高い位置にあるので、ボディーの前端を把握するのは難しい。シートはなるべく高い位置に調節したほうがよさそうだ。インテリアは乗用車的であっても、ドライバーはオフローダーのような視点になる。クーペライクなスタイルのSUVとは明らかに異なる視界は、今となっては新鮮に感じられるかもしれない。たくましいマッチョなスタイルが話題となった「ホンダWR-V」は好評らしいので、こういう角張ったフォルムのSUVには一定のニーズがあるのだろう。
ガソリンエンジンを搭載した「GLB180」もあるが、今回乗ったのはディーゼルの「GLB200d 4MATIC」。ガソリンはFF、ディーゼルは4WDという区分けになっている。2リッター直4ターボで、最高出力150PS、最大トルク320N・m。1820kgの車重に対しては妥当な数字だろう。
クルマの外ではディーゼルエンジンらしい音が響いていたが、車内は十分に遮音されている。電気的なサポートは一切なく、1400rpmから最大値に達する豊かなトルクだけで発進する。出来のいい8段ATの恩恵でスムーズに加速していくが、微速でのコントロールは少しばかり大味に感じられる場面もあった。この見た目で繊細すぎるのも違和感があるので、キャラには合っている。
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意外だった山道での走り
高速道路での静粛性や安定性は想像どおりだったが、ちょっと意外だったのは山道での走りだ。ドライブモードを「SPORT」に設定すると、エンジンが野太い音を発してにぎやかになる。音質や音量は電子的変換によるものだろうが、コーナーで減速する際に空ぶかしを入れてシフトダウンするさまは、スポーツカーのようにアグレッシブだ。3列シートSUVでもやるときにはやるぞという意地が感じられる。
狭い道では苦労することもあったが、市街地から高速道路、山道までをカバーする十分な性能を持っている。特筆すべき加速力やハンドリングがあるわけではなくても、3列シートSUVというジャンルでそれは欠点とはならない。普通の生活を支えるための快適性や実用性が求められるのだ。ドライバーズカーの要素はあまり優先度が高くはなく、2列目や3列目に座る乗員の満足度が重要である。
というわけで、ここからが本題ということになる。2列目シートは、この手のクルマでは特等席となるのが通常だ。GLBもその点は抜かりなく、おもてなし空間になっている。座り心地は申し分なく、左右別に前後スライドとリクライニングができるのがうれしい。路面からの突き上げはしっかりと遮断されていて、不快に感じることはなかった。カップホルダーやUSBソケットも使いやすい位置に配置されている。
そして、なにより気にかかるのが3列目だ。大きな期待をするのが間違いなのはわかっている。SUVの持つ構造的な理由で、快適な空間をつくり出すことは難しい。どのモデルも基本的には子供用で、大人が乗るならあくまでもエマージェンシーというのが決まりごとになっている。GLBが良心的なのは、「身長169cm以下」という制限が明示されていることだ。遊園地のジェットコースターなどでは身長150cm以下はNGなどと書かれていることがあるが、その逆バージョンである。
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進化し続ける3列目シート
メルセデス・ベンツの誠実な姿勢には敬意を表するが、実際に座ってみるとやはり心地よいとは言いがたい空間だった。制限内の身長でも乗り込むのはひと苦労だし、座面が低いから体育座りを強いられる。クッションは最小限でホールド性が低く、加減速の際には腰の位置がズレてしまいそうだ。長時間の移動は苦行になるに違いない。
と、文句を並べ立ててしまったが、先ほど書いたとおりそれはフェアな態度ではない。以前のことを考えれば、ずいぶん改善されているのは確かなのだ。2018年に試乗した「レクサスRX450hL」はこんなレベルではなかった。3列シートSUVの需要拡大を見てノーマルモデルの室内長を延ばしてつくったという経緯があり、急ごしらえと言われても仕方のない成り立ちだった。無理をしたことで、2列目の乗り心地にも悪影響を与えていたほどである。
この数年で、各メーカーは3列シートSUVの居住性向上に力を注いできたのだろう。進化は著しく、全長5000mmのRX450hLより、4660mmのGLBのほうがはるかにまっとうな3列目を提供している。ミニバンをやめてSUVに注力したマツダは、3列シートSUVでも高い評価を得ているようだ(参照)。BMWやジープも研究の成果を製品に生かすことができるようになってきている。
試乗車はオプションを含めると800万円近い価格になっており、ファミリーカー用途としては簡単には手を出せないだろう。ただ、3列シートSUVは必然的に大型にならざるを得ないので、他社のモデルも結構なプライスタグが付けられている。家族での移動が多いユーザーにとっては、この値段でメルセデス・ベンツのブランドが手に入るGLBは、ベストな選択になるのかもしれない。2ボックスの堂々としたフォルムが好みなら、目移りはしないはずだ。運転していてもまあまあ楽しいし、SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)の名が示すとおり、多目的なクルマなのは確かである。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLB200d 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4660×1845×1670mm
ホイールベース:2830mm
車重:1820kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:150PS(110kW)/3400-4400rpm
最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1400-3200rpm
タイヤ:(前)235/45R20 96W/(後)235/45R20 96W(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:15.8km/リッター(WLTCモード)
価格:694万円/テスト車=762万7000円
オプション装備:ボディーカラー<デジタルホワイト[メタリック]>(9万7000円)/AMGラインパッケージ(59万円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:2432km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:310.8km
使用燃料:22.4リッター(軽油)
参考燃費:13.9km/リッター(満タン法)/14.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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