ハスクバーナ・スヴァルトピレン701スタイル(MR/6MT)
刺激強めのカンフル剤 2019.12.27 試乗記 ハスクバーナのクールなネイキッドバイク「スヴァルトピレン701」に、その個性を一段と強めた特別仕様車が登場。興味津々でむちを当てた筆者は、予想以上に元気でユニークな乗り味に驚かされたのだった。放たれた2本の矢
最初に目にしたのは2018年の東京モーターサイクルショー。ときめくことを忘れて久しいわが心眼の曇りを突き破り、「これ乗ってみてぇ」と思わせたのがコイツだった。いや、正確に言うと今回試乗したのとは異なるモデルなので、その辺から整理させていただく。
くだんのショーで国内販売を発表したのは、かの地で白い矢を意味する「ヴィットピレン401」と「701」。そして黒い矢を意味する「スヴァルトピレン401」の3種。モデル名に続く数字は排気量を暗示(実際には373.2㏄と692.7㏄)しており、スヴァルトピレンの701だけ2019年6月に遅れて販売開始。その2カ月後に登場したのが、今回乗った「スヴァルトピレン701スタイル」という特別仕様車。「じゃソイツはどうなの?」とお聞きになりたい気持ちはわかるが、あれこれ調べたら興味深い事実に触れたので、まずはソッチから話をさせて!
聞き慣れない車名を用意したのは、スウェーデン発のハスクバーナ。二輪界ではオフロード方面で有名な老舗ブランドだが、元は1689年に創業した「マスケット」と呼ばれる歩兵銃のメーカーだった。Hの頭文字を包んだ王冠みたいなマークは、照準が付いた銃の先端を表しているそうな。
そのハスクバーナがオートバイ製造に乗り出したのが1903年。オフロードモデルに特化する展開が功を奏する形で世界各地の大会を席巻。その勢いに陰りが出始めると、ハスクバーナは1986年に二輪事業をイタリアのカジバに売却。2003年にカジバ傘下のMVアグスタから一度取り戻すも、2007年にはBMWが買収。それをKTMが2013年に買い取った。そんな紆余(うよ)曲折の末、KTMに拾われたのは幸運だったのか? 何しろこのブランドは、ハスクバーナ同様オフロードモデルで名をはせ、やがてハスクバーナを窮地に追い込んだ相手でもある。それゆえKTMにすれば、似たモデルの発売にはさして意味を感じなかったはずだ。そこで(現状)最後の親が選んだのが、固定観念を打ち抜く白と黒の矢を放つことだったのである。
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「見た目優先」にはワケがある
なぜ初めて見たハスクバーナに「乗ってみてぇ」と思ったのか? それは、奇をてらわない振りを装いつつ斬新なデザインがあちこちにじみ出ていたからだ。だいたい、シュモクザメみたいな張り出しを持つフューエルタンクなんて見たことがない。しかも、心眼と共にくたびれかけた肉体でも十分操れそうな軽やかさにも好感が持てた。この予感は当たるが、その時点では要するに見た目優先。「それの何が悪い?」と言い切れた背景にKTMの自信がうかがえたのも後の話だが。
90年代以降のKTMはデザインコンシャスに舵を切り、1994年には「デューク」を発表しオンロード界にも宣戦布告した。その一役を担ったのが、オーストリア・ザルツブルクに籍を置くインダストリアルデザイン会社のKISKA(キスカ)。同社はKTMの車両デザインだけでなくカタログなどのグラフィックデザインも担当しているが、先のデュークに始まり、今回のハスクバーナにも深く関与しているという。だからこそ手慣れたKTMとは異なる路線を生み出すことができたのだろう。
「で、どうなんだソイツは?」と試乗記を急(せ)く方もいらっしゃるでしょう。701に乗る際のガイドラインになるのは、このモデルのベースが「KTM690」であること(ちなみに401のベースは「KTM390デューク」)。つたないKTMキャリアを頼りにすれば、やはりこの単気筒エンジンは「回してナンボ」で、軽量ボディーとの相性を含み「パンチがある」「元気がいい」。またはお疲れ気味の人生の「刺激的なカンフル剤」と表現してもいい。
ユニークだったのは乗車姿勢。オンロード志向が強いヴィットピレンがいわゆるセパハンを備えているのに対して、フラットトラッカーをイメージしたというスヴァルトピレンは一本バーハンドル。ゆえに上体は起き気味になるが、ステップ位置はいずれも後方なので、スヴァルトピレンのほうが若干の不自然さを感じるかもしれない。操作しにくいというほどではないが。
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KTMに拾われて幸運だった?
それ以上に気になるのは、見た目からして薄いシートの硬さだろうか。あるいはシート高も、『webCG』スタッフは一様に「爪先がギリ」と嘆いていたが、その辺は個人差なので追求しないでおく。
特別仕様のスタイルは、ブロンズ/ブラック/シルバーを取り入れたボディー色がスペシャル。もはや黒い矢ではないけれど、総じてシックなのでツッコミを入れないように。それからハンドルバーエンドのミラー。見た目的にはアリだが、機能的にはナシ。自分なら購入後にすぐ別のものに換えるだろう。
では最後に、ハスクバーナはKTMに拾われて幸運だったのか? という問いに対する答え。もちろんすぐに結論が出る話ではないが、白と黒の矢は販売好調らしく、21世紀に新しいハスクバーナファンをつくれたことには大きな意味がある。さらには、機能だけでなくデザインでも個性を発揮するKTMにおいて、ハスクバーナが新しいキャラクターを得られたとしたらハッピーだ。しかもスヴァルトピレン701スタイルのソリッドメタルをイメージしたボディーカラーが、創業当時のライフルへのオマージュだとしたら、これほど美しい物語はないと思う。
(文=田村十七男/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
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【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1436mm
シート高:835mm
重量:158.5kg(燃料を除く)
エンジン:693cc 水冷4ストローク単気筒 OHC 4バルブ
最高出力:75PS(55kW)/8500rpm
最大トルク:72N・m(7.3kgf・m)/6750rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:144万6300円

田村 十七男
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