メルセデス・ベンツGLE400d 4MATICクーペ(4WD/9AT)/GLE350de 4MATICクーペ(4WD/9AT)
中身まできちんとクーペ 2019.12.27 試乗記 流麗なルーフラインを特徴とするメルセデス・ベンツのSUV「GLEクーペ」がフルモデルチェンジ。先代のデビューからわずか4年というスパンで登場した2代目は、どのような進化を遂げているのだろうか。銀世界が広がるオーストリア・インスブルックで試乗した。SUVにもスペシャリティーを
21世紀を迎えるに相前後して投入され始めたドイツメーカーのプレミアムSUVモデル。当初は1990年代に相次いで建てられたアメリカ工場の稼働率向上を狙って投入されたモデルが、そもそも火種のあったSUVブームに油を注ぎ、ついには中核を担うほどの販売量に達することになったわけだ。
となると、かつてセダンの派生版としてのクーペがスペシャリティーに位置づけられたように、SUVにもスペシャリティー的なニーズが生まれるのは自明である。かくしてBMWは「X6」、アウディは「Q8」、そしてメルセデスはGLEクーペと、ラグジュアリーモデルが出そろうこととなった。
メルセデスのGLEクーペは2015年に初代がデビュー、新型は2代目となる。初代はニーズの高まりに合わせてW166系「GLE」をベースに取り急ぎしつらえた的な感じが否めなかったが、新型は同じようにW167系のGLEをベースとしながらも、端々にクーペらしい独自のコンセプトを採り入れている。
その最たるところといえば、基準車に対して60mm縮められたホイールベースだろう。担当エンジニアがその理由をはっきりと「クーペらしい運動性能のため」と言うように、走りの質感において、基準車とのより明確な差別化が図られたといえる。
ディーゼルPHVもラインナップ
運転席用とインフォテインメント用、2つの12.3インチの液晶モニターを1つのガラスパネルで連結してダッシュボードの中にインテグレートした内装のしつらえは基本的に基準車に準じており、細かなトリムやオーナメント類で差異化が図られる。後席の着座感は身長181cmの筆者が座ったところで、天井高こそ窮屈ながら、前方足元および頭から肩にかけての側方は相応に余裕がある。シートの分割可倒は40:20:40で、荷物の形状に応じた使い勝手を向上させている。
GLEクーペは基準車のように3列目シートを持たないが、荷室容量は先代より拡大して655リッターに。2列目シートまでフォールダウンすれば1790リッターにまで拡大する。もちろん、開口部や荷室の形状もより使いやすくデザインされた。
搭載されるパワートレインは当面4種類。ひとつはGLEにも採用されているOM656型3リッター(2925cc)直6ディーゼルエンジンで、これを搭載する「400d」は最高出力330PS/最大トルク700N・m、「350d」では同272PS/同600N・mとなる。
また、2リッター(1950cc)直4ディーゼルに136PSのモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド車(PHV)「GLE350de」も環境性能面のトップランナーとしてラインナップに加えられた。日本でも既に「E350de」に搭載されているそのシステム最高出力/トルクは320PS/700N・m。駆動用バッテリーの容量は31.2kWhと小型EV並みで、EVモード時の最高速は160km/h、航続可能距離はNEDC計測値で106kmとなる。このバッテリー容量ゆえPHVながら急速充電が可能で、仮に日本に導入されるとすればCHAdeMO規格対応のコネクターが装備されることになるだろう。
そしてガソリンエンジンモデルが、48Vマイルドハイブリッド搭載の「メルセデスAMG GLE53 4MATIC+クーペ」となる。3リッター直6ユニットの最高出力/トルクは435PS/520N・m。これにエンジン側にじかで組み込まれる22PS/250N・mのスタータージェネレーターが加わり、250km/hの最高速と5.3秒の0-100km/h加速を達成する……と、これらのうち、日本にどのパワートレインが導入されるかは未定。その前提で試乗したのは、400dと350deの2グレードだ。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
GLEよりも確実に機敏
実寸は初代と大差はないものの、デザイン的に幅感が強調される顔になったこともあってか、新型の存在感はともあれでかいという印象だった。ただし、乗り心地については21インチと巨大なタイヤを装着していても低速域から洗練されており、初代からの確実な進歩が感じられる。
今回のコースは雪山へと上っていく山道が多く、車格がゆえに車線内にクルマをとどめておくことに神経を使うこととなった。しかし、GLEクーペの応答性は基準車のGLEより確実に機敏で、コーナーのトレースやライン修正に素直に応えてくれた。なんだかんだいっても、運動性能には寸法や重量などの物理性が最も直撃的に作用する。
が、そんな話に水を差すような足まわりがこの試乗車には装着されていた。「Eアクティブボディーコントロール」と名付けられたそれは、エアマチック+電子制御ダンパーのサスセットを基に、各ダンパー側に電動油圧式オイルポンプを組み合わせてダンパーストロークを油圧で瞬時に伸縮させることを可能としたものだ。これによって、エアサスの車高調整とは異なる役割、つまり各輪個別のアクティブな姿勢制御が実現することになる。
Eアクティブボディーコントロールの効能
GLEにも用意されるこのオプションがいかなるものかを示す例として、メルセデスは砂漠でスタックした車体をこのダンパーを用いて高速で上下動させることでトラクションを復活させて脱出するというデモムービーを用意していた。普通に使う上でこの足まわりがどのような時に役立つものなのかというと、例えばロール低減の効果について注目してみるといいだろう。さながらバイクのようにコーナー内側にリーンしていると錯覚するかのようなボディーコントロール効果は、結果的にワインディングロードでの乗員のG負荷を減らし、運転疲労を軽減してくれる。また、進行方向にある路面の凹凸などをカメラでスキャンし、車高や減衰を瞬時に合わせる仕組みも備えているから、より完璧なフラットライドも期待できるだろう。
仕組みは違えど同質の効果を持つものに「アウディA8」の「プレディクティブアクティブサス」がある。こちらは84万円のオプションとなるが、GLEクーペの場合も現地のオプション価格から判断すると同等になるようで、現状では日本導入の予定はないという。しかし、クーペならではのスペシャルな面を強調するという意味では、ユニークな技術的選択肢だと思う。インポーターにはいま一度検討を期待したい。
スペシャルという点でいえば、350deのシームレスなパワートレイン制御や思いのほか力強いEVドライブも印象的ではあったが、多くの人にとっての本命はディーゼルらしからぬ上質なフィーリングをかなえた400dということになるはずだ。もしくはまだ見ぬものの、追加は確実だろうAMGの「63」を待つという話もありだろう。なにせせっかくのクーペだ。もし購入を決めたなら、セコい話は抜きにして仕様を決める時からとことんはじけたいものである。
(文=渡辺敏史/写真=ダイムラー/編集=藤沢 勝)
![]() |
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLE400d 4MATICクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4939×2010×1730mm
ホイールベース:2935mm
車重:2295kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:330PS(243kW)/3600-4200rpm
最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/1200-3200rpm
タイヤ:(前)275/45R21 107V M+S/(後)275/45R21 107V M+S(ピレリ・スコーピオン ウインター)
燃費:7.4-6.9リッター/100km(約13.5-14.5km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
![]() |
メルセデス・ベンツGLE350de 4MATICクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4939×2010×1730mm
ホイールベース:2935mm
車重:2690kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:194PS(143kW)/3800rpm
エンジン最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1600-2800rpm
モーター最高出力:136PS(100kW)
モーター最大トルク:440N・m(44.9kgf・m)
システム最高出力:320PS(235kW)
システム最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)
タイヤ:(前)275/45R21 107V M+S/(後)275/45R21 107V M+S(ピレリ・スコーピオン ウインター)
ハイブリッド燃料消費率:1.3-1.1リッター/100km(約76.9-90.9km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。