フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR(FF/7AT)
これぞ集大成 2020.01.14 試乗記 すでに本国ドイツでは新型となる第8世代モデルがデビューする中、日本に上陸したのが「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR」だ。最高出力290PS、最大トルク380N・mの2リッターターボユニットを積んだ、日本仕様の「GTI」では史上最強をうたう限定車の実力やいかに!?![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
レーシングカーのロードゴーイングバージョン
フォルクスワーゲンが誇るホットハッチの定番モデルといえば「ゴルフGTI」だが、そのパフォーマンスをさらに引き上げたスペシャルモデルとして登場したのがゴルフGTI TCRだ。TCRは、いま世界中で盛り上がっているツーリングカーレースのカテゴリーで、フォルクスワーゲンはWTCR(ワールドツーリングカーカップ)をはじめ、各地で行われているTCRシリーズ用にレーシングカーのゴルフGTI TCRを供給してきた。そのロードゴーイングバージョンとして市販されたのが、このクルマなのだ。
その一番の特徴が、よりパワフルなエンジンを搭載すること。ゴルフGTIが最高出力230PSの2リッター直列4気筒ターボを搭載するのに対し、このゴルフGTI TCRは同じ2リッターながら最高出力は60PSアップの290PSに、最大トルクも30N・m増しの380N・mに強化されているのだ。これにデュアルクラッチギアボックスの7段DSGが組み合わされ、前輪を駆動。さらに、「ゴルフGTIパフォーマンス」にも採用される電子制御油圧多板クラッチ式フロントディファレンシャルロックや、人気のアクラポヴィッチ製チタンエキゾーストシステムといった特別なアイテムを搭載。つまり、ゴルフきってのハンドリング性能を誇るゴルフGTIパフォーマンスに、ゴルフの最強グレード「ゴルフR」(4WD)のエンジンを与えたFFスポーツモデルが、このゴルフGTI TCRということになる。
それだけに、その走りは痛快そのもの。低回転から力強さを見せる2.0 TSIエンジンは、アクセルペダルを深く踏み込んでやると、3000rpmを超えたあたりから乾いたエキゾーストノートをともないながら勢いを増し、レッドゾーンの6500rpmまで一気に回転を上げていく。7段DSGのシフトは既存の6段DSGに比べてスムーズさを増しており、ベースモデルよりもむしろ洗練された仕上がりを見せるパワートレインに驚かされた。
一方、ゴルフGTI TCRのハンドリングは、これみよがしのクイックさはないものの、フロントディファレンシャルロックの助けもあってアンダーステアが軽く、コーナリングの早い段階からアクセルペダルを踏み込んでいっても確実にトラクションが得られるのがうれしいところ。エンジンのパワーアップにあわせて、サスペンションはややハードなセッティングだが、アダプティブシャシーコントロール「DCC」のおかげで、街乗りでも十分に受け入れられる快適さを確保しているのも見逃せない。
日本では600台限定販売のゴルフGTI TCR。「ゴルフ7」世代の集大成として、手元に置いておきたい一台である。
(文=生方 聡/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
![]() |
【スペック】
全長×全幅×全高=4275×1800×1465mm/ホイールベース=2635mm/車重=1420kg/駆動方式=FF/エンジン=2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(290PS/5400-6500rpm、380N・m/1950-5300rpm)/トランスミッション=7段AT/燃費=12.7km/リッター(WLTCモード)/価格=509万8000円

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。