マツダCX-30 XD Lパッケージ(4WD/6AT)/CX-5 XDエクスクルーシブモード(4WD/6AT)/CX-8 XD Lパッケージ(4WD/6AT)
“本物”はひけらかさない 2020.01.18 試乗記 マツダのSUV=都会派のおしゃれSUV。当のマツダがこうしたイメージ戦略を敷いてきた以上、この認識は狙い通りなのだが、これが浸透しすぎてしまい、実はちょっと困っているらしい。クローズドコースでマツダSUVの隠れた(?)オフロード性能を試してみた。SUVに注力するマツダ
考えてみれば、今のマツダはすっかり、SUVに軸足を置くメーカーとなった。
日本におけるマツダのラインナップには「CX-3」「CX-30」「CX-5」「CX-8」というの4つのSUVがそろう。4車種という数字にはさほど驚かないが、マツダの場合、SUV以外の自社製乗用車も「マツダ2」「マツダ3」「マツダ6」「ロードスター」の4つしかない(車体形式のバリエーションを数えると車種はもっと増えるけど)。さらに、海外市場にまで視野を広げると、SUV以外の車種数はほとんど増えない(しいていえばマツダ2のセダンくらい)のに対して、SUVでは「CX-9」と「CX-4」という海外専売商品が2車種も加わる。
少数精鋭型ラインナップの現在のマツダは、かように“SUV占有率”が高いのだ。「SKYACTIV(スカイアクティブ)」をうたうようになって以降のマツダの、グローバルでの最量販車種はCX-5である。それに続く2番目の量販車種は「アクセラ/マツダ3」だったが、今後は新規SUVのCX-30がマツダ3以上の台数を稼ぐ可能性が高い。
彼らのSUVへの力の入れようは、商品ラインナップ数だけでなく技術的にもうがかえる。現在のマツダが使う4WDシステムの「i-ACTIV AWD」は基本構造こそよくある電子制御スタンバイ式だが、超低フリクションと超高反応制御には独自のこだわりがあり、「FFより高効率で低燃費な4WD」を目指して、日々の技術開発を続けている。また、独自の「G-ベクタリングコントロール/G-ベクタリングコントロールプラス(以下、GVCプラス)」は低ミュー路や悪路でのグリップ確保にも効果的な技術だ。
しかし、マツダがここまでやっても、本格的なアウトドア活動を趣味とするユーザーに選ばれがちなのは「トヨタRAV4」や「日産エクストレイル」あるいは「スバル・フォレスター」であって、CX-5ではないのが現実である。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
「オフロードトラクションアシスト」を追加
マツダといえば、かつての「ファミリア4WD」は日本初のフルタイム4WDであり、世界ラリー選手権にも出ていたし、「プロシード/プロシードレバンテ」といった4WDピックアップやクロスカントリー車もつくっていた。それなのに、アウトドアやオフロード筋でのマツダの存在感がここまで希薄なのは、そっち方面へのアピールをあえてしてこなかったマツダ自身のマーケティング活動によるところも大きい。しかも、CX-5を筆頭とするマツダの最新SUVは、どれも泥んこ姿がまったく似合わない都会的デザインを売りとしてきた。
とはいえ、彼らの最新SUVの内容やデキを見れば、それをつくっている技術者たちが、くやしい思いを抱いてきたことも容易に想像できる。あるマツダ開発担当氏に今回聞いたところでは、北米では初代CX-5が開発想定外の過酷な悪路に持ち込まれたあげく、スタックした動画をネットで公開されて「やっぱりCX-5の悪路性能はいまひとつ」という不本意な評価を定着させられた例もあったとか。
そんなイメージを少しでも変えたい……というのが、昨今のマツダの強い思いらしい。
事実、2019年10月発売のCX-30の4WDシステムに同社初の「オフロードトラクションアシスト(OTA)」機構が追加されたかと思ったら、CX-8とCX-5でも商品改良時に同機構が追加となった。さらにCX-5では「タフスポーツスタイル」なるアウトドア色を強めたアクセサリーパッケージも新たに用意された。
OTAそのものは特別な技術ではなく、ハードウエア構成はそれ以前と変わらない。OTAは横滑り防止装置(やGVCプラス)にも使われている四輪独立ブレーキ制御を応用したもので、悪路などでタイヤが空転してしまった場合に、そのタイヤにのみブレーキをかけてグリップしているタイヤにエンジントルクを導くシステムである。……とここまででお分かりの向きも多いように、OTAは現在の国内外のSUVで本当によく見かける技術の一種である。
難コースでも苦もなく走れる
というわけで、今回の試乗会はCX-30とCX-5、CX-8で、山梨県「富士ヶ嶺オフロード」内にそれぞれ用意された専用コースを走破するという内容だった。コース自体は本格的だが、非日常的な専用コースを比較対象となるクルマもなく短時間お試し走行するだけだったので、悪路素人である筆者の感想は「なるほどマツダのSUVも見た目に似合わず(?)よく走るなあ」といった程度のものだったことを正直に告白しておく。
ただ、モーグル路面に挑んだCX-8では、OTAの効果も明確だった。CX-8は4輪とも独立サスペンション(=リジッド式より伸び側のストロークが短い)なので、深いコブでは容易に3輪走行になってしまう。ただ、そこからがOTAの出番で、宙に浮いたタイヤが空転しかけると、次の瞬間にそこにグッとブレーキがかかって、こんな難路面も軽くクリアした。
こうした場面でOTAのような機構がないと、空転したタイヤにばかりエンジントルクが流れて接地したタイヤに駆動力が伝わらず、にっちもさっちもいかなくなる可能性が高い。また、本当に滑りやすい路面では、通常のトラクションコントロールだけだとエンジントルクが絞られるばかりで、これまた前に進まなくなるケースが多い。その点、OTAは空転輪のブレーキを作動させると同時に、わずかなスリップはあえてスルーしてエンジントルクをかけてくれるので、今回のようなコースでもきっちりと走ってくれるのだ。
このほかにもCX-5での急坂のぼりやCX-30での林道走行などのコースが用意されたが、マツダのSUVはそのすべてを標準装着のサマータイヤのまま、シレッとこなしてしまった。
考えてみればもともと優秀な4WDシステムに加えて、CX-8で200mm、CX-5で210mmという最低地上高はSUVでも屈指のレベルである。まるで乗用車風情の顔をしているCX-30のそれですら175mmあり、昨今のクロスオーバー系としては本格派の部類に入る。また、CX-30ではオンロードでの試乗もできたが、リアのトーションビームサスペンションと4WDの組み合わせとしては、旧来のCX-3よりアシさばきも明らかにしなやかだった。これは新世代プラットフォームの美点だろう。
(文=佐野弘宗/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
マツダCX-30 XD Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4395×1795×1540mm
ホイールベース:2655mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:116PS(85kW)/4000rpm
最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)/1600-2600rpm
タイヤ:(前)215/55R18 95H/(後)215/55R18 95H(トーヨー・プロクセスR56)
燃費:18.4km/リッター(WLTCモード)
価格:337万1500円/テスト車=337万1500円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:2560km
テスト形態:ロード&オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km /リッター
マツダCX-5 XDエクスクルーシブモード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4545×1840×1690mm
ホイールベース:2700mm
車重:1700kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:190PS(140kW)/4500rpm
最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(トーヨー・プロクセスR46)
燃費:16.8km/リッター(WLTCモード)
価格:393万6600円/テスト車=393万6600円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:854km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
マツダCX-8 XD Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4900×1840×1730mm
ホイールベース:2930mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:190PS(140kW)/4500rpm
最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(トーヨー・プロクセスR46)
燃費:15.8km/リッター(WLTCモード)
価格:467万0600円/テスト車=467万0600円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:2654km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
マツダ・ロードスターPS/ロードスターS/ロードスターRF VS【試乗記】 2026.9.15 デビュー以来、不断の進化を続ける「マツダ・ロードスター」。2026年の改良は、“走り”の特別仕様車「PS」の設定が話題だが、試乗すると、ほかにも多くの変化が見てとれた。日本を代表するライトウェイトオープンスポーツの、最新モデルの仕上がりを報告する。
-
スズキ・ジムニー ノマドFC(4WD/5MT)【試乗記】 2026.9.14 「スズキ・ジムニー ノマド」でロングドライブ。本格クロカンとして悪路での走りに定評あるジムニーの5ドア・ロングボディー版は、カジュアルなSUVとしても使えるのか。多くの人が多くの時間を過ごすであろうオンロードにおける日常的シーンで、その実力を確かめた。
-
BMW X3 20 xDriveオリジナル(4WD/8AT)/X3 20d xDriveオリジナル(4WD/8AT)【試乗記】 2026.9.12 「BMW X3」に新たなエントリーグレードの「オリジナル」が登場。装備の厳選によって価格抑制を図ったとのことだが、人気のディーゼルエンジン搭載車では、なんと基準車から100万円近く引き下げたというから見逃せない。安かろう悪かろうのはずはないと思いつつも、その仕上がりをチェックした。
-
日産キックスG(FF)【試乗記】 2026.9.9 日産が満を持して投入したコンパクトSUVの新型「キックス」。Cセグメントに迫るサイズとなったこのモデルは、競合ひしめくマーケットで存在感を示せるのか? 上級グレード「G」の試乗を通し、ライバルに対するアドバンテージを探った。
-
マツダCX-5 L(FF/6AT)【試乗記】 2026.9.8 マツダの最量販SUV「CX-5」の最新モデルに試乗。計画外のフルモデルチェンジによって誕生した3代目は、走りや操作系などに、従来のマツダにはない新しい試みが見られる一台となっていた。失敗の許されない基幹モデルの仕上がりを報告する。
-
NEW
BYDラッコ300プレミアム(FWD)【試乗記】
2026.9.16試乗記中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。価格の安さや装備の充実度はすでに報じられているとおりだが、やはり自動車の仕上がりは実際に動かしてみなければ分からない。高速道路やワインディングロードでの印象をリポートする。 -
NEW
新型「パジェロ」も該当 タイ生産にはどんなメリットがあるのか?
2026.9.16デイリーコラム国内メーカーが取り扱うタイ生産車のラインナップが増えている。話題の新型「三菱パジェロ」も同様だ。東南アジアに限ったとしてもさまざまな国が存在するなかで、多くのメーカーがタイを拠点とするのはなぜなのか。そのメリットを解説する。 -
NEW
第128回:日本のカーデザインに足りないもの・欠けているもの(前編) ―厳しい制約が鍛えた独創の美と創造性―
2026.9.16カーデザイン曼荼羅日本の地に自動車産業が芽生えて幾星霜。今やすっかり自動車大国となったわが国だが、ことカーデザインの質については、世界的に見てどれほどのレベルにあるのだろうか? 日本車の“美”がさらに進化していくうえで必要なものを、カーデザインの識者と考えた。 -
マツダ・ロードスターPS/ロードスターS/ロードスターRF VS【試乗記】
2026.9.15試乗記デビュー以来、不断の進化を続ける「マツダ・ロードスター」。2026年の改良は、“走り”の特別仕様車「PS」の設定が話題だが、試乗すると、ほかにも多くの変化が見てとれた。日本を代表するライトウェイトオープンスポーツの、最新モデルの仕上がりを報告する。 -
自動パーキングシステムの駐車作業は、人間が行うよりも速く正確になりうるか?
2026.9.15あの多田哲哉のクルマQ&A一部のクルマに採用されている自動駐車システムは、便利そうだが駐車に時間がかかる印象がある。それも、いつかは人間が駐車するより速く正確になるだろうか? 元トヨタの多田哲哉さんに見解を聞いた。 -
第344回:アンパンマンよりばいきんまん
2026.9.14カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。メルセデス・ベンツの新型「CLAシューティングブレーク」が気になってしかたがない。理由はその特徴的なフロントフェイス。左右の目玉(ヘッドランプ)がつながったデザインがたまらない。果たして実車の印象は?





















































