ジープ・ラングラー ルビコン(4WD/8AT)
サラブレッドは乗り手を選ぶ 2020.04.02 試乗記 シリーズ最強のオフロード性能を誇る、2ドアの本格クロスカントリー「ジープ・ラングラー ルビコン」に公道で試乗。2020年2月に限定台数100台が発売され、あっという間に売り切れたという、その人気の秘密を探ってみた。世界一過酷なルビコントレイル育ち
2018年にフルモデルチェンジを受けたジープ・ラングラーは、オフロードコースでも乗ったし、北海道の雪道と雪上特設コースも経験している。そこで得た印象は、伝統の悪路走破性能にはさらに磨きをかけつつ、オンロードでの乗り心地が大幅に洗練された、というものだった。モデルチェンジ前のジープ・ラングラーはまだ洗っていないリーバイス501ぐらいゴワゴワしたけれど、現行モデルは30回は洗濯機にかけたくらい、しんなりと体になじむ。
ただし、試乗して洗練された印象を受けたのは、3mを超す長いホイールベースを備えた4ドアモデルだった。というのも、ホイールベース2460mmの2ドアモデルは受注生産という位置づけだったから、まだ乗っていなかったのだ。
そしてついに、2ドアモデルに試乗するチャンスがやってきた。2020年2月に、2ドアのボディーとジープブランド最強の四駆システム「ロックトラックフルタイム4×4システム」とを組み合わせた「ルビコン」が100台限定で販売されたのだ。
ルビコンというモデル名は、米国ネバタ州からカリフォルニア州へと続く世界一過酷ともいわれるルビコントレイルに由来する。ジープの各モデルはこの全長22マイルの自然が生んだテストコースで鍛えられ、特に高度な走破性能を獲得したモデルには「TRAIL RATED」のバッジが授けられる。ジープ・ラングラー ルビコンには、もちろんこのバッジが誇らしげに輝いている。
7つのスロットを配したグリルや丸いヘッドランプ、カクっとしたホイールアーチといったデザイン上のアイコンを継承することで、ひと目でジープ・ラングラーだとわかるエクステリアに仕立てている。それでいながら決して古臭く見えないのは、ヘッドランプをLEDにしたり、角張って見えつつも細部のアールを微妙に滑らかにするなどの芸の細かさによるものだろう。
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ワインディングロードでもおもしろい
今回はオンロードでの試乗ということで、ロックトラックフルタイム4×4システムは、後輪駆動の「2H」と「4Hオート」を適宜切り替えた。4Hオートとは後輪駆動をベースにしたフルタイム4WDモードで、前後のトルク配分は状況に応じて0:100〜50:50の間でコントロールされる。
4WDシステムについてもう少し説明を加えると、ジープブランドで最も高いオフロード走破性能を誇るロックトラックフルタイム4×4システムは、後輪駆動、フルタイム4WD、パートタイム4WDを切り替えることができる。パートタイム4WDはさらに、雪道や未舗装路で有効な「4H」と、低速でさらに強力にトラクションを伝える「4L」のふたつのモードが用意される。またタイヤが空転するなどピンチのときには、スイッチ操作で前後のディファレンシャルをロックすることも可能だ。
ただし今回は、パートタイム4WDの出番はなし。まずハンドルを握ったのは、高速コーナーが続く箱根ターンパイクで、これがおもしろかった。
コーナーの入り口でブレーキをかけると、どんなクルマでも前輪に荷重がかかってお辞儀をするような格好になる。悪路を走破するためにサスペンションが大きく伸び縮みするように設計されているジープ・ラングラーはこの傾向が強く、深々とお辞儀をする。で、ブレーキを離すと今度はお辞儀の姿勢から頭を上げて、起立の姿勢になる。ホイールベースが短いこともあって、前後方向の車体の動きが残りやすく、「お辞儀」→「起立」→「お辞儀」→「起立」の動きが、次第に小さくなりながらも残ってしまう。
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ドライビングは知的なゲーム
そうした前後方向の動き、いわゆるピッチングが残ったままコーナリングに入ると、前後方向の動きと横Gが合わさってキモチ悪い。したがってコーナリングが始まる前に、しっかりと速度を落として姿勢を水平に保っておく必要がある。うまくいけば穏やかにコーナーをクリアできる一方で、ピッチングを残してしまうとボヨヨン、ボヨヨンと揺さぶられながらのコーナリングになってしまう。このクルマでフツーに曲がるのにはコツがいる。コツがいるからおもしろい。
泥濘(でいねい)地をぐいぐい進んだりガレ場をよじ登ったりできることがジープ・ラングラーのアイデンティティーだから、もちろん箱根ターンパイクの中高速コーナーで軽やかに身を翻すことを目的につくられているわけではない。事実、コーナーの入り口ではそんなに曲がるのは好きじゃないというそぶりを見せる。
ところが、である。いざターンインを開始すると、ホイールベースが短いせいか、意外と素直に向きを変えるのだ。曲がるのは好きじゃないけれど苦手でもない、というなかなかに複雑な性格なのだ。
こういう性格と上手に付き合い、ピッチングを制御しながらターンパイクを行くのは、知的なゲームみたいでおもしろい。これが若葉マークからお年寄りまでが乗る実用車だったら問題もあるだろうけれど、マニアとか好事家と呼ばれる人々のためのクルマだから、おもしろいという表現でいいと思う。いまやフェラーリやランボルギーニだってコツ要らずでコーナリングできるのに、ジープ・ラングラーってやつはなかなかのクセ者だ。ある意味で、「ランボルギーニ・ウラカンEVO」よりも乗り手を選ぶ。
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高速巡航に退屈という言葉は無縁
ダウンサイジング+ターボが主流のいまとなっては希少となった3.6リッターのV型6気筒エンジンも、味がある。モーターのように回るわけではなく、回転を上げるごとにパワーとトルクが一段ずつ積み上がるような印象である。
これは決して古臭いというわけではなく、泥濘地やガレ場をほふく前進するような走り方には、シュンと回るスマートさよりも、じわじわとトルクを絞り出すようなエンジン特性が向いているのだろう。筆者はロングホイールベース版で雪道やオフロードを走った経験があり、こうしたエンジン特性が悪条件下で頼りになると実感している。
そして、このクルマの主戦場であるオフロードを走った経験があるかないかで、評価が分かれるだろうと思ったのは帰路の東名高速だった。はっきり言って、乗り心地はそんなに快適じゃないです。前述したピッチングがかなり大きいし、ホイールベースが短いので直進安定性もそれほど高くなくてちょろちょろと進路を乱される。さらには悪いことにこの日は春の嵐が吹き荒れていて、横風にあおられるとフラフラする。
ジープ・ラングラーは外観こそラギッドであるけれどインテリアはモダンで、インフォテインメントのインターフェイスもタッチパネル式だ。けれども、クルマの挙動が安定しないから、タッチパネルを上手に操作できない。思わず苦笑してしまう。
といった具合に、横風が強い日の高速巡航に退屈という言葉は無縁で、なかなかにスリリングだ。だから万人におすすめできるかといえば、そんなことはない。オールラウンダーではなく、ホームランを50本打つけど足が遅いスラッガーとか、めちゃくちゃ点は取るのに守備はしないストライカーみたいな、稀有(けう)な個性の持ち主なのだ。
(文=サトータケシ/写真=神村 聖/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ジープ・ラングラー ルビコン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4320×1895×1840mm
ホイールベース:2460mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:284PS(209kW)/6400rpm
最大トルク:347N・m(35.4kgf・m)/4100rpm
タイヤ:(前)LT255/75R17 111/108Q/(後)LT255/75R17 111/108Q(BFグッドリッチ・マッドテレインT/A KM2)
燃費:9.0km/リッター(JC08モード)
価格:589万円/テスト車=589万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:2423km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:313.2km
使用燃料:43.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:7.2km/リッター(満タン法)/7.6km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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