インディアンFTR 1200 S(MR/6MT)
気分はアメリカンマッスル 2020.04.04 試乗記 アメリカのバイクカルチャーを象徴するダートトラックレース。そのマシンのスタイルをストリートで見事に再現したのが「インディアンFTR 1200」だ。アメリカの老舗が放つこのニューモデルは、ワイルドなルックスにたがわぬマッチョでスポーティーな走りの持ち主だった。ストリートに飛び出したダートトラッカー
ダートトラックレースはアメリカで昔から人気のモータースポーツだ。競馬場などを利用したダートのオーバルコースで戦うこのレースにおいて、インディアンは1950年代、宿敵ハーレーダビッドソンを相手に数々の勝利を収めてきた。最近ではレース専用マシン「FTR 750」を発表し、無敵に近い強さを誇っている。そんなダートトラックマシン、FTR 750のイメージをもとにつくられたストリートバイクがFTR 1200だ。
FTR 1200は、ダートトラックの荒々しいイメージを実にうまく再現している。フロント:19インチ、リア:18インチのキャストホイールに履かせた専用タイヤは、パターンだけでなくラウンドの形状まで競技用タイヤの雰囲気そのもの。ダートトラックのイメージでバイクを仕上げる時、タイヤとマシンのバランスはとても大事なのだが、FTR 1200はこのあたりをまったく妥協していない。ゼッケンを装着したら、このままレースに出場できるんじゃないかと思うような勇ましいスタイリングだ。
だからといって本当にダートを走るためのマシンなのかといえば、さにあらず。ネイキッドスポーツとしての機能や運動性を上手に盛り込んでいる。エンジンや車体の味付けはスパルタン。シートが高いのはスポーツライディング時の荷重の御しやすさを考えているからだろう。シート自体も硬めで、乗り心地よりも体に伝わってくるインフォメーションを重視している。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
走りはマッチョでスポーティー
エンジンは元気いっぱい。走りだせば低回転域からトルクがあって、Vツイン特有の排気音とともに力強く加速。4500rpmぐらいからはトルクがさらに盛り上がり、ハイパワーツインらしい豪快な走りを見せる。低中速トルクがあるから、高速巡航時もスロットルを開けただけでどこからでもドーンと飛び出していく。まさにアメリカンマッスルカーのバイク版というフィーリングだ。ツインの鼓動感も強いし排気音も勇ましいから、パワーや音、振動なんかも一緒になって気分を盛り上げてくれる。
19インチのホイールに太いダートトラックパターンのタイヤを履いているから、ハンドリングはどうなのかな? と思ったけれど、予想以上に素直で軽快。バイクがバンクしていく時、ステアリングに変な舵角がついてしまうようなこともない。だからといってダルな感じではなく、ライダーが入力の仕方を変えるとマシンがキチンと反応してくれる。19インチ独特の安定感を生かしながら、そこにスポーティーな味付けを加え、うまくまとめている。
こうなるとワインディングロードやサーキットを攻めてみたくなるが、ちょっと気になるのはダートトラックイメージのタイヤが限界領域でどうなのかということ。フロント19インチで、これだけ太いハイグリップタイヤはアフターマーケットで見当たらないから、FTR 1200のユーザーは、サーキットを走るとしてもこのタイヤを使うほかはない。もっとも、ダートトラックが好きな人は、仮に多少よれたり滑ったりしても、「これがダートの乗り方だぜ」と喜びそうな感じもするが。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
期待を裏切らない個性と魅力
サスペンションは初期の動きがスムーズで、市街地や高速道路を走っていても硬さは感じない。今回はストリートでしか乗っていないが、ワイルドなエンジンに対して車体関係はとても完成度が高く、そつなくまとまっている感じを受けた。
個人的に気になったのはスロットルの味付け。FTR 1200は全閉から開け始めの領域を扱いやすくするため、低開度での反応をずいぶん穏やかな味付けとし、途中からレスポンスが鋭くなるよう調律されている。このレスポンスが変化する領域が、逆に使いにくい時があった。しかもクラッチが乾式クラッチのように短いストロークでダイレクトなつながり方をするものだから、回転をあまり上げずに素早くクラッチミートしてダッシュしようとした時は、思ったよりも勢いよく飛び出したり、逆にエンストしそうになったりすることもあった。ただし、これはテスターがこのマシンに慣れていなかったということもある。低回転でトルクのあるビックバイクに乗ると、どうしてもトルクを生かして回転を上げずに発進しようとしてしまうのだ。少し走ってバイクのクセを覚えてしまえば、神経を使うようなことではなくなった。
アメリカンモータースポーツの好きな人は、ほぼ例外なくFTR 1200のスタイルにドハマリするのではないか思う。このエンジンの力強さとフィーリングは、そういう人の期待を裏切らない。個性的かつ魅力的なマシンである。
(文=後藤 武/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2287×850×1297mm
ホイールベース:1524mm
シート高:840mm
重量:231kg
エンジン:1203cc 水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ
最高出力:--PS(--kW)/--rpm
最大トルク:120N・m(12.2kgf・m)/6000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:209万9000円

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。











