フォルクスワーゲンTロックTDIスポーツ(FF/7AT)
保守本流の味付け 2020.07.17 試乗記 フォルクスワーゲン(VW)のニューモデル「T-Roc(Tロック)」がいよいよ日本上陸。「ティグアン」「T-Cross(Tクロス)」に続く国内3車種目のコンパクトSUVは、果たしてどんな個性を備えているのだろうか。リアウィンドウの傾斜に全力投球
Tロックは最新の懐かしいVWだ。現代的な機能や装備が盛り込まれつつ、VWの伝統的な乗り味を味わうことができる。遅ればせながらSUV攻勢を展開中の同社の最新モデルで、一見先に出たTクロスとそんなに変わらないようにも見えるが、サイズも違えば、動力性能も違う。価格も結構違う。国産車にも輸入車にもライバルが多数存在する400万円前後のSUVの中で存在感を示すことができるのか。街乗り中心で試乗した。
欧州では2017年に発売されたTロックが今ごろになって日本導入された。海外でしばらく販売していたモデルを日本でも売り始めるという意味では「日産キックス」と同じパターンだ。各社さまざまな理由があるのだろうが、SUVの持ち玉がいくらあってもいいのは確か。あるのなら導入したほうがいい。
VWというのは“国民車”を意味する社名からもわかる通り、基本的に大真面目なブランドで、どちらかというとカッコつけが苦手だ。ジウジアーロの「ゴルフ」をはじめ端正なモデルは多いが、おっさんのカジュアルフライデーよろしくはりきってオシャレを試みたものの……というモデルも結構ある。その点、Tロックはカッコつけがうまくいっていると思う。特にリアスタイル。ガーニッシュなどでお茶を濁さず、水平なライン以外の要素を減らし、あとはリアウィンドウの角度に命をかけた感じだ。フロントマスクでは、左右ヘッドランプの下に独立したDリング状のデイタイムランニングライト(ターンシグナルにもなる)が配置されるのが面白い。遠くからでもTロックと識別可能だ。
ゴルフファンにはたまらない
サイズは全長×全幅×全高=4240×1825×1590mm、ホイールベース2590mm。同じMQBプラットフォームを使ってつくり分けているTクロスは、同4115×1760×1580mmに同2550mmとひとまわり小さい。どちらも旧式の機械式駐車場では物理的に無理か妙に慎重で頭の固い担当者に断られる全高なのが惜しい。日常的に駐車するマンションがそうだというなら他のクルマを検討するほかないが、最近はSUVも入庫可能な新世代の機械式も増えてきたので、そこがネックになる人はそんなにいないかもしれない。
全長、全幅、全高の違いの通りにTロックのほうが室内空間はやや広々としている印象。ただし後席利用時のラゲッジスペース容量はTクロスの455リッターに対し、Tロックのそれは445リッターと逆転現象が起きている。この理由はスタイリングを見れば一目瞭然で、Tロックはリアウィンドウの角度が寝ている分、容量が少ない。ラゲッジは二重底になっていて、浅いほうにするとかなり浅いが、深いほうにするとスーツケースなどを積載するのに便利な形状となる。加えてTロックにはゴルフバッグを真横にして積載できる。このクラスのSUVでこれが可能なモデルはほとんどなく、ゴルフをする人は歓喜するはずだ。しない人にも何かと有効な左右幅だと思う。実はTクロスでもスライド可能なリアシートを一番前へやればギリギリ積載可能。この辺りにVWの国産車メーカーに近い生真面目さがあらわれている。
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実直な2リッターディーゼルエンジン
運転席に乗り込むと、ああVWだなぁと感じる。表皮がパンと張っていて、剛性感が高く、自然に背筋を伸ばした姿勢をとらせるシート。ステアリングポストの剛性感も高い。ここがしっかりしているとクルマとしてのランクが2階級特進となる。ドイツ車らしいドイツ車だ。ミラー類の視認性の高さを含め視界も良好。シートとステアリングホイールの調整しろが十分で、しっくりくるドライビングポジションをすぐに得られた。無味乾燥なブラック基調のインテリアのようでいて、よく見るとシートには粒々のシルバーアクセントがちりばめられ、赤いステッチもあしらわれている。助手席正面と左右ドア内張りの加飾パネルは鈍く輝く光沢のガンメタルグレー。地味派手なインテリアだが、ちぐはぐな感じはしない。
パワートレインは、VW、アウディの各モデルに搭載される2リッター直4ディーゼルターボエンジンと7段のデュアルクラッチトランスミッションの組み合わせのみ。最高出力150PS/3500-4000rpm、最大トルク340N・m/1750-3000rpmと数値上は控えめなスペック。黒子に徹して実直に仕事をし続けるエンジンだ。ディーゼルということもあって官能的でセクシーというわけにいかないのは理解できるのだが、もう少しディーゼルならではのパンチが欲しい。回していくとパワーを得られるのだが、踏んですぐにドーンみたいなのはない。ドライビングプロファイルを「エコ」「ノーマル」「スポーツ」「カスタム」の4種類から選ぶことができ、スポーツにすると“パンチが欲しい”問題はおおむね解決する。同じエンジンを積むVWのもっと高価なモデルと比べると、ディーゼルらしい音が車内に入ってくる。振動は気にならない程度に抑えられている。
ドイツ車らしいドイツ車
乗り心地について、低速では「そこまで丁寧かつ正確に路面の凹凸を拾わなくていいから」と感じないでもないが、その代わり中高速でのビシッと決まったフラットな挙動が心地よい。基本的にダンピングが強めのメリハリある足まわりで、ワインディングロードよりも長時間の高速巡航を得意とするタイプだ。この辺りも昔ながらのドイツ車っぽい。
全車速追従機能付きACCは通常モードでワイパーを動かす程度の雨量でも安心して走行することができた。歩行者検知機能付きの衝突被害軽減ブレーキ、レーンキープアシスト、ブラインドスポットディテクション、リアトラフィックアラートなど、ひと通りの先進安全装備が標準装着される。またVWが低価格帯のモデルにまでいち早く持ち込んだ、さまざまな表示方法が可能なフルデジタルのメーターも備わる。
試乗したTロックTDIスポーツは車両本体価格が419万9000円。400万円超えと聞くと条件反射で高く感じるが、最新ADASの内容やインフォテインメント性能、ディーゼルエンジンであることなどを考慮すると、内容に対して割高というわけではない。同クラスのライバル車で同じような仕様にしようとすると、この程度にはなってくるはずだ。このカテゴリーは百花繚乱(りょうらん)なので、ほかを差し置いてTロックをイチ推しするつもりはないが、ドイツ車らしいドイツ車が好きだという人には有力な選択肢となるだろう。
(文=塩見 智/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲンTロックTDIスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4240×1825×1590mm
ホイールベース:2590mm
車重:1430kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150PS(110kW)/3500-4000rpm
最大トルク:340N・m(34.7kgf・m)/1750-3000rpm
タイヤ:(前)215/50R18 92W/(後)215/50R18 92W(ファルケン・アゼニスFK453CC)
燃費:18.6km/リッター(WLTCモード)
価格:419万9000円/テスト車=423万5300円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(3万6300円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:856km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:191.1km
使用燃料:14.8リッター(軽油)
参考燃費:12.8km/リッター(満タン法)/13.1km/リッター(車載燃費計計測値)

塩見 智
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