フォルクスワーゲンTロックR(4WD/7AT)
実用的な「R」 2023.02.01 試乗記 フォルクスワーゲン(VW)のクロスオーバーSUV「Tロック」にハイパフォーマンスバージョン「R」が追加された。最高出力300PSのエンジンを積むだけあって速さは格別だが、速いだけではないのがこのクルマならではの特徴だ。高価ではあるものの、確かにそれだけの価値がある。ゴルフの援軍?
昨2022年の輸入車登録台数ランキングのトップはMINIだった(1万9207台/7年連続)。2位は「メルセデス・ベンツCクラス」(1万4111台)、3位に「VWゴルフ」が9241台で続く。かつてのゴルフが長く王座に君臨していたこと(年間3万台以上を記録したこともある)を考えるとちょっと寂しいが、その代わりにトップ10には同じVWの「Tクロス」(5位:6570台)と「ポロ」(6位:6368台)、そしてTロック(8位:5123台)が入っている。ちなみに10位は4807台の「Gクラス」(!)、もちろんどのブランドも生産供給に問題を抱えているのだろうが、それでも近ごろのトレンドがうかがえる
VWのクロスオーバーSUV、Tロックが国内発売されたのは2020年の7月だったから、2022年秋のマイナーチェンジはちょっと早すぎると思う向きもあるだろうが、実は日本導入が遅れただけで、もともと本国での発売は2017年だったから、そこから数えるとだいたい予定どおりのマイナーチェンジである。グローバルでは4年間で販売台数100万台以上を記録している人気モデルで、国内の輸入SUVマーケットでも上記のように健闘している。Tクロスと合わせるともはやゴルフ以上の大黒柱と言っていいかもしれない。
Tロックにも「R」
高めのシートに腰を下ろすと自然に背筋が伸びるアップライトな姿勢でステアリングホイールを握るドライビングポジションになる。これぞワーゲン、と安心する。パンと張ったシートクッションと体重をかけてもビクともしないバックレスト、そして奇をてらわない形状のダッシュボード越しの視界も良好。Tロックは一応スタイリッシュなクーペSUVというジャンルのクルマだが、スタイル優先のあげくに使い勝手に影響を及ぼすようなことはない。さらにマイナーチェンジを受けた最新型は、従来型の弱点を手当てしてきた。これまでのTロックはダッシュボードをはじめとする内装のハードプラスチック材が目立って、いかにも簡素というかビジネスライクだった。機能第一と割り切る見方もあるが、世間のもうちょっと何とか、という声に応えて、新型ではステッチ(風)が入ったソフトな素材に改められ、さらにセンタータッチディスプレイも8から9.2インチに大型化、ステアリングホイールも最新世代に変更されている。
それに加えてもうひとつ大きなトピックが高性能モデルのRが追加されたことだ。ご存じRといえばVW自慢のハイパフォーマンスモデルで、当然電子制御4WDシステムの4MOTIONを搭載する。TロックR用2リッター4気筒直噴ターボエンジンは300PS/5300-6500rpm、400N・m/2000-5200rpmを発生、ギアボックスは湿式7段DSGである。基本的に同じユニットを搭載する兄貴分の「ティグアンR」(320PS/420N・m)より若干チューンは低いが、よりコンパクトなTロックにとって十分以上であることは言うまでもない。実際0-100km/h加速は4.9秒(欧州仕様参考値)とティグアンRと同じタイムを主張する。
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むしろ上質
スタンダードの1.5リッターTSI(150PS)に比べて2倍の最高出力を誇るからにはパワフルなことは当然ながら、「R」という勇ましいロゴを頂いていても単に荒々しい高性能モデルではないことがTロックRの特徴である。踏めばもちろん豪快に加速するけれど、右足をほんの少し押すだけで足りる街なかでも、パワートレインは滑らかでスムーズで非常に扱いやすい。しかも乗り心地が他のモデルよりも明らかに上質で洗練されている。派手目の外観や19インチタイヤを横目に見つつ、どうせ硬いんだろうなあ、と覚悟して走りだすとちょっとびっくりするほど滑らかだ。
4WDのRだけはリアサスペンションが4リンクに変更されているが(標準型はトレーリングアーム)、19インチタイヤを標準装備するにもかかわらず、Rのほうがしっとり落ち着いてフラットであり、ラフなバイブレーションも抑えられている。Rは電子制御ダンパーの「DCC」に加えて、R専用のスポーツサスペンションを装備するが(車高は標準モデルより20mm低い)、ほかにもパワーアップに対応する補強が加えられているせいなのか、硬派なスポーツモデルというよりむしろ上質である。
ベストTロックだが……
例によってドライビングプロファイル機能でエコ/コンフォート/ノーマル/レース/カスタムの各モードを選択できるのに加えて(ステアリングホイールのスポークにはワンタッチでレ―スモードを呼び出すRボタンも付く)、センターコンソールには4MOTIONアクティブコントロールのダイヤルが備わり、スノー/オンロード/オフロード/オフロードカスタムの各4WDモードを選ぶこともできる。TロックRの4MOTIONシステムは、ゴルフやティグアンのRに採用されている「Rパフォーマンストルクベクタリング」(左右のリアアクスルにそれぞれ電子制御カップリングを備え、左右後輪間のトルク配分も制御する)ではなく、前後アクスル間の配分だけを制御するものだが、不都合は感じない。スパッと切れ込んでグイグイ曲がっていく自在感はないが、故意にパワーをかけてもリニアで安定しており、むしろ挙動が予想しやすい。
TロックRには専用のナッパレザーシートやカーナビを含めたインフォテインメントシステムの「ディスカバープロ」などほぼあらゆるものが標準装備されるが、とはいえ627.7万円(年明けに1万1000円値上げされた)の車両価格は、ベーシックグレードたる「TSIアクティブ」の394.3万円に比べてはるかに高価だ。このクラスでいくら何でも、と気持ちがなえるが、走るほどにこの洗練度とパワフルさなら仕方ないかな、と気持ちが変わってくる。Rのロゴがボディー各所にくどいほどちりばめられている点など、値段の割にちょっと子供っぽいと敬遠する前に、一度実際に確かめてほしい。乗ればしっかり大人びた洗練度に納得してもらえるはずである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲンTロックR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4245×1825×1570mm
ホイールベース:2590mm
車重:1540kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:300PS(221kW)/5300-6500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2000-5200rpm
タイヤ:(前)235/40R19 96Y/(後)235/40R19 96Y(ハンコック・ヴェンタスS1 evo2)
燃費:--km/リッター
価格:627万7000円/テスト車=638万5500円
オプション装備:ボディーカラー<ラピスブルーメタリック>(7万円) ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(3万8500円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2566km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:314.0km
使用燃料:32.3リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.7km/リッター(満タン法)/9.8km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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