ランボルギーニ・ウラカンEVO RWD(MR/7AT)
お見事な手腕 2020.08.12 試乗記 「ランボルギーニ・ウラカンEVO」に追加設定された後輪駆動モデル「RWD」に試乗。フロントの駆動機構や後輪操舵システムを取り外し軽量化された、イタリアンスーパーカーの伝統ともいえるミドシップ+後輪駆動の走りやいかに?まるでポルシェのようだ
ランボルギーニ復活の立役者「ガヤルド」が登場したのは2003年だから、振り返ればもうずいぶんと昔の話だが、確か試乗会はローマ近郊のヴァレルンガサーキットで行われた。
最初のモデルはパワーユニットもウラカンと同じV10ながら排気量は5リッターで500PS、ビスカスカップリングを採用した4WDだった。その際に、アウディ傘下に入ったから4WDにする必要があったのか、と水を向けたところ、エンジニアが「4WD化による重量増加は最大でも70kg程度で燃費への影響も数パーセントにとどまる。それを考慮しても、ハンドリングや高速域でのスタビリティーなどメリットのほうが大きい」と理路整然と説明してくれたのを覚えている。
その時は、ほうほう、なるほどと納得させられたのだが、後の展開はご存じの通り。エンジンはどんどんパワーアップしていくいっぽうで、軽量化を追求した「スーパーレジェーラ」などという硬派な軽量限定モデルどころか後輪駆動モデルも投入。縦横無尽にラインナップを拡充していった。何だよ、結局全部出すんじゃないか、とあの時の彼に言い返したいぐらいだが、おかげでガヤルドはランボルギーニ史上最高のヒット作となった。
その後はその繰り返し。ウラカンにモデルチェンジしてからも同様に、新型に切り替えて基本性能を大きく引き上げた後は、スパイダーや後輪駆動モデルを送り出して着々とポートフォリオを強固なものとするのが戦略だ。
自分たちのプログラム通りに着々と、それこそ某日本車メーカーよりはるかに堅実に事業計画を推し進めている。まるでポルシェを見ているようだ。こういう時代なんだなあ、と感慨ひとしおである。
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計画通りのRWD
ガヤルドの後を受けて2014年にデビューしたウラカンのいわば最終進化形が、2019年に発表されたその名もズバリのEVOである。熱き血潮のマルチシリンダーユニットをたぎらせる直線番長。そんなかつてのランボルギーニ像は、最新のウラカンEVOにはまったく当てはまらない。今では貴重な自然吸気V10ユニットを回した時の爆発力はもちろん変わらないが、常用域での高い洗練度が現代のランボルギーニの特徴である。
ウラカンは、ランボルギーニ最大のヒット作だったガヤルドの2倍のペース(ざっと年間2500台)で売れているらしいが、実際2019年秋にはガヤルドの半分の5年でガヤルドの総生産台数(1万4022台)を超え、最も成功したスーパースポーツカーの座を確実にしている。
それはやはり飛び抜けた限界性能だけではなく、日常使用での扱いやすさを備えていることが受け入れられているからだろう。ハレとケの両方の世界でドライバーを納得させる性能を併せ持っているのだ。そしてウラカンEVOに進化した後は、既定路線通りに後輪駆動モデルが追加された。その名はこれまた真正面からウラカンEVO RWDである。ちなみに既にRWDの「スパイダー」も登場しているから、これで一通り出そろったことになる。
リアミドに搭載されるウラカンEVOの5.2リッターV10エンジンは、最高出力640PS(470kW)/8000rpmと最大トルク600N・m(61.2kgf・m)/6500rpmを発生するが(ウラカンの最高性能モデル「ペルフォルマンテ」と同じ)、RWDは同じ回転数から最高出力610PS(449kW)と最大トルク560N・m(57.1kgf・m)と若干抑えられている。
ただし漫然と走っている限りでは後輪駆動なのかどうか定かではないし、公道でフルスロットルを試してその違いを指摘することも難しい。何しろ8500rpmまで回るし、どちらもとんでもなく速いからだ。0-100km/h加速は2.9秒のEVOに対してEVO RWDは3.3秒と多少の差があるが、それは4WDによる蹴り出しの違いだろう。最高速はどちらも325km/hを主張する。
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飛ばすほどに安定する
例によって一般道でおとなしく走る分には静かで従順といっていい。エンジンを始動する時だけはグワッと一度大きくほえるが、オートモードならばスルリと動き出して、せいぜい2500rpmぐらいで粛々とシフトアップしていく。
いっぽうで踏めば普通の高性能ターボユニットなら打ち止めとなる6000rpmぐらいから、もう一段ロケットエンジンに点火するように、背中のすぐ後ろで喉も裂けよとばかりにほえるごう音とともに8500rpmのリミットめがけて突き抜けるように回るのがウラカンの真骨頂である。
フラッグシップの「アヴェンタドール」が依然として変速時にわずかなタイムラグと明確なシフトショックを伴うのに対して、ウラカンの7段DCTは実に洗練されており、オートでもマニュアルでもシームレスで滑らかかつ電光石火の変速が可能だ。さらにスーパースポーツカーらしい外観とは裏腹に、一時停止からの合流の際などの斜め後方視界を除けば、この種のスポーツカーとしては視界がいいことも街中や狭い一般道で扱いやすい理由だ。
前後のスポイラーのデザイン処理はEVOとEVO RWDで多少異なるが、ペルフォルマンテのような可変エアロダイナミクス付きの大仰なリアウイングなどを持たないのは同様。それでも空力特性が格段に向上(合計ダウンフォースはスタンダードモデルの7倍という)しているのもマイナーチェンジ版たるEVOの特徴という。無論一般道ではそれをきっちり確認するには至らないが、速度が増すほどにスタビリティーが向上する感覚は共通している。
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比べればよりオーソドックス
進化したウラカンEVOにおける最大のトピックは、後輪操舵システムやトラクションコントロール、トルクベクタリングと4WDシステムなどを統合制御するLDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータの略)なる車両コントロールシステムだろう。
各種センサーからのデータをフィードフォワード制御(20ミリ秒ごとに先読みするという)してスリップアングルやトラクションを最適制御するというもので、今やフェラーリなども同様のシステムを備えている。後輪駆動であることを除いた最大の違いは、RWDではその後輪操舵システムが省かれること。またLDVIに代わってP-TCS(パフォーマンス・トラクションコントロールシステム)なる制御装置がドライバーをサポートする。
もっとも、それにしては車重の違いは意外に大きくなく、相変わらず乾燥重量で発表する車重はEVO=1422kgに対してEVO RWD=1389kgと30kg程度にとどまっている(RWDの車検証値は1600kg)。
統合制御システムのうちの何がどう作用しているかは定かではないが、とにかく面白いように曲がるのがEVOの特徴。スパッと切れ味鋭くというよりも、ステアリングホイールを握る手に力を入れたと同時にコーナーの狙ったポイントに引き寄せられるかのようだ。その切れ味に初めは面食らう人もいるはずだが、自分の神経がそのままウラカンEVOの車体につながっているような感覚は他に例を見ない。
それに対してRWDはもっとオーソドックスというか、前輪の接地感を意識して操舵する必要があるが、こちらも切れ味抜群なことは言うまでもない。自由自在の万能感が味わえるEVOよりも手練(だ)れ向けといえるだろう。
もっとも、ドリフト向きと位置づけられるスポーツモードでもパワーオンで後輪のグリップを失わせることはできず(ブレーキング時や完全オフにすれば別だが)、そんなことをしていると人には言えない速度になってしまうから、心ゆくまで試すにはやはりサーキットに持ち込むしかないだろう。ちなみに乗り心地も決してスパルタンではない。それどころか今回取材に同行した新型「トヨタ・ヤリス」より掛け値なしにフラットで快適だった。そういう時代なのである。
(文=高平高輝/写真=郡大二郎/編集=櫻井健一/撮影協力=河口湖ステラシアター)
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テスト車のデータ
ランボルギーニ・ウラカンEVO RWD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4520×1933×1165mm
ホイールベース:2620mm
車重:1389kg(乾燥重量)
駆動方式:RWD
エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:610PS(449kW)/8000rpm
最大トルク:560N・m(57.1kgf・m)/6500rpm
タイヤ:(前)245/30ZR20 90Y/(後)305/30ZR20 103Y(ピレリPゼロ)
燃費:13.8リッター/100km(約7.3km/リッター、欧州複合モード)
価格:2653万9635円/テスト車=3297万8705円
オプション装備:ブルーエレオス<メタリックボディーカラー>(111万4630円)/オレンジブレーキキャリパー(15万0590円)/トランスペアレントエンジンボンネット&フォージドコンポジットエンジンベイ(67万7820円)/スタイルパッケージ<ボディーカラー>(22万5940円)/Narvi 20インチ鍛造アルミホイール<シルバー>(75万3060円)/タイヤ空気圧モニター<周波数315MHzハイレベルバージョン>(11万8140円)/テクノパッケージ<マグネットレオロジックライドサスペンション>(26万6310円)/ダイナミックパワーステアリング(25万6080円)/スモールフォージドコンポジットパッケージ(37万6640円)/フロアマット<レザーパイピング+ステッチ>(7万5350円)/オプショナルステッチ<ステアリングホイール>(3万0140円)/コントラストステッチ(10万5490円)/スポーツシート(78万0600円)/EVOトリム<スポルティーボレザービコローレ>(40万6780円)/ルーフライニング+ピラー<レザー>(15万0590円)/刺しゅう入りヘッドレスト(11万9570円)/スマートフォンインターフェイス&コネクト(40万6780円)/リアビューカメラ(24万1010円)/クルーズコントロールシステム(10万5490円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:3464km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:363.2km
使用燃料:55.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.5km/リッター(満タン法)/6.9km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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