メルセデス・ベンツGLB200d(FF/8AT)
新しい風が吹く 2020.09.29 試乗記 メルセデス・ベンツの人気SUV「GLA」と「GLC」の間に追加された、3列7人乗りの「GLB」。精神的支柱の「Gクラス」を想起させる四角い背高ボディーを背負ったニューモデルの仕上がりやいかに? 2リッターディーゼルのFF車「GLB200d」に試乗した。サイズを比べてみる
メルセデス・ベンツが着々とSUVバリエーションを増やしている。同社のみならず多くのブランドが同じことをする。結果、同じような車種がめちゃくちゃ増える。こんなことでいいのか! ……なんかチクリと世相を斬るようなことを書こうと思ったけど、車種が増えても別に消費者に害はなかった。これでいいのだ。消費者は楽しく迷おう。
さてGLBは車名のアルファベットからもわかるとおり、最小のGLAとそれまで2番目に小さかったGLCとの中間に位置する新型車だ。メカニズムの面から分類すると、新型GLAと基本コンポーネンツを共用するエンジン横置きのタイプ(GLC以上はエンジン縦置き)。だがもはや一般的なユーザーにとってエンジンの向きなんて関心の外だろう。もう少しすると自動車の記事は冒頭でエンジンが載っているか否かをお伝えすることになるかもしれない。
同じタイミングで登場したGLAとどう違うかというと、まず全長が200mm長い。この長さはプラス2人の乗車定員のため。GLA(全長4440mm)が2列シート5人乗りなのに対し、GLB(同4640mm)は3列シートの7人乗りなのだ。1835mmの全幅はGLAとほぼ同じ。全高はGLBが1700mmとGLAよりも95mm高い。ちなみにGLCは2列シートの5人乗りなので単純に比較してもあまり意味はないが、全長が4670mmとGLBとほぼ変わらず、全高については1645mmと逆にGLBのほうが背が高い。
GLAよりもやや軽やか!?
スタイリングは売れ線まっしぐら。四角いんだけど各エッジは丸められていて、ゴツかわいい感じ。フェンダーアーチに樹脂パーツを付けることで手軽にマッチョ感が手に入る流行(はや)りのクラッディング処理が施され、骨太な印象を与えている。メルセデスのエンジン横置きシリーズ、いわゆるニュー・ジェネレーション・コンパクト・カーズ(NGCC)の中にあっては、最もグッドルッキングだと思う。
先日試乗した「GLA200d 4MATIC」と同じ、2リッター直4ディーゼルターボエンジンと8段ATの組み合わせが載る。そのGLAの原稿に「最高出力150PS、最大トルク320N・mとおとなしめのスペックだが、一般道から高速道まで実によく走る。(中略)ガソリンかディーゼルかを特に意識することなく使えるエンジンだと思う」と記したが、同じ車台に同じエンジンと変速機を搭載したGLBでも同じことを感じた。
パワートレインの印象は同じだったが、挙動はGLBのほうがやや軽やかに思えた。きっとGLA200d 4MATICが4WDだったのに対しGLB200dはFWDなので、GLBのほうが軽いためだろうと考えたのだが、実際にはGLBの車両重量は1740kgと1730kgのGLAよりも10kg重かった。車体がひとまわり大きく、シート数が多いことでFWDの軽さは相殺されていた。ではなぜ? わからない。GLBのほうが重心が高い分、ひらりひらりと揺れが大きいことを軽やかと感じたのかもしれない。とはいえその差は大きくはなく、個体差か自身のその日の感じ方によるものにすぎない可能性もある。
文字では表しきれない洗練度
メルセデス・ベンツは高いモデルと安いモデルとで先進運転支援システム(ADAS)や予防安全装備に差がないのがうれしい。そのあたりが尊敬されるゆえんだろう。登場のタイミングによっては廉価なモデルの安全装備が、高価なモデルのそれを上回ることもある。安いといっても絶対的には安くないという大前提はあるにせよ、安くないことの理由がわかる。どうしてこんなに高いの? と感じさせるブランドも、減ったがまだある。それに売れ線のメルセデスは手放すときに高く売れるから、事実上は高くないことになる。
アクティブステアリングアシスト(車線中央維持機能)が付いたアクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(アダプティブクルーズコントロール)は、名前が長く仰々しいことを除けば完璧だ。先行車との車間距離を設定どおりに安定して保ってくれるほか、先行車の停止に対応して自車が停止した後、高速道路では30秒以内、一般道では3秒以内に先行車が再発進した場合、スイッチを操作したりアクセルペダルを踏み込んだりしなくても自動的に再発進する。衝突被害軽減ブレーキについても、ステアリングアシストを絡めた最先端の機能が備わる。
文字にすると他のブランドと同じ機能のようになってしまうが、この手のシステムは制御が命。ギクシャクすると信頼がおけないし、同乗者に運転が下手だと思われるのも避けたい。その点、GLBのそれらは先行車追従にせよ車線中央維持の支援にせよ、動きがスムーズで正確。積極的に使おうという気にさせてくれる。GLBに限らず、最新のメルセデスに乗っていると自動運転夜明け前を感じられてワクワクするし、実際に楽ちんだ。昨日今日「ADASを充実させ……」とうたっているブランドの二歩三歩先をゆく。
求められているのはオフローダー風
GLBの特徴である3列目シートは、緊急用あるいは子供用とわかった上で契約すべきだ。例えば高齢者には決して向いていない。アクセスがよくないし、座ってからの足元のスペースも、2列目をそれなりに前へスライドさせてもミニマムだ。もちろんつくったほうもそれは百も承知の上で設定している。いざというときのために“あることが重要”と考える人にとっては、この外寸で定員7人というのは価値となる。3列目を格納した状態でのラゲッジスペースはGLAに対して明確に広い。
GLBはオフローダーではなくオフローダー風。ディーゼル版はFWDしかないので特にそう。だが世の中の多くのユーザーが求めているのはオフローダー風であってオフローダーではない。「軟弱だ」「見た目だけだ」という意見もそりゃいくらかは出るだろうが、無視できる絶対数だし、メルセデスの場合、「うちには『NATOがどうたらこうたら』という書き出しで紹介されるGクラスもありますので」という反論もできる。いちいち反論しないだろうが。
スズキの「ジムニー」をGクラスに見立てるとすればこいつは「ハスラー」だ。ジムニーは神格化されているが、ほとんどの人にとってはハスラーのほうが使い勝手がよい。GLB、2年後には都市部を中心にめちゃくちゃたくさん走ってそう。
(文=塩見 智/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLB200d
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4650×1835×1700mm
ホイールベース:2830mm
車重:1740kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:150PS(110kW)/3400-4400rpm
最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1400-3200rpm
タイヤ:(前)235/55R18 100W/(後)235/55R18 100W(コンチネンタル・エココンタクト6)
燃費:17.5km/リッター(WLTCモード)
価格:512万円/テスト車=538万円
オプション装備:ナビゲーションパッケージ(18万9000円)/メタリックペイント<デジタルホワイト>(7万1000円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:2151km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:333.1km
使用燃料:24.5リッター(軽油)
参考燃費:13.6km/リッター(満タン法)/14.5km/リッター(車載燃費計計測値)

塩見 智
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