新型「フェアレディZ」は絶対アリ! これからのスポーツカーが“懐古主義”であるべき理由
2020.09.30 デイリーコラム写真を見て感じた「イイね!」
「フェアレディZ プロトタイプ」が横浜で世界初公開! 日本のみならず世界中のZファンが熱狂! 公開翌日、そのデザインについてフェイスブックで肯定的な感想を書いたところ、700以上の「いいね!」をもらって感動! ……ただ、200近くいただいたコメントを読むと、賛否相半ばしていた。それも肯定派は「いまひとつだけどアリかな?」的なものが多く、否定派は「顔がNHKのどーもくん!」とか、「初代のオマージュなのにロングノーズじゃない!」といった真っ向全否定派が多数を占めていた。
個人的には、写真を見た瞬間「イイね!」と思ったんだけどなぁ。どれくらいイイかというと、現行「マツダ・ロードスター」の写真を見た時が100だとすると、70くらいです。どっちも、初代のヘリテージを尊重しつつ、モタンかつシンプルに仕上げている点は同じ。ただ、ロードスターには初代を上回るエモーションがあったのに対して、Zにはそこまでのものはない。でもかなりイイ!
初代への回帰については、もろ手を挙げて賛成だ。もうスポーツカーのデザインは、新しさは“香り”程度で十分。それより過去の栄光への回帰が圧倒的に重要ではないだろうか? なぜなら、全世界で、スピードへの熱狂が過去のものになりつつあるから! よって現代のスポーツカーは、過去の熱狂を回顧させるデザインである必要がある。そう考えているのです。
往年の“熱”を思い出させる懐古主義路線
なかでも1000万円以下の、「スーパー」と付かないスポーツカーほど、その傾向が強い。スーパーが付くヤツを買う人は、いろんな意味でパワフルなので、進取の気性もそれだけ強いけれど、一般のスポーツカーファンは、私を含めそれほどパワフルじゃないし、年齢層もかえって高い(たぶん)。その分、昔のアイドルの復活をより強く望んでいる! ロードスターやアルピーヌや「マスタング」や「カマロ」のデザインはその表れだ! と思うのです。
だから、初代Zを強くほうふつとさせるプロトの写真を見た瞬間、湾岸を300km/hで走る“悪魔のZ”が脳裏に浮かび(マンガですけど)、なにか熱のようなものが体内から湧き出てきた。「これだったら夜の湾岸を走りたくなる!」と。300km/h出しませんけど。
その熱の前には、細部はどうでもいい! 顔がNHKのどーもくんだっていい! たぶん実物を見れば、そういう問題じゃないはずだ。初代みたいなロングノーズじゃないという指摘はその通りだけど、これでもフロントオーバーハングを伸ばして、現行型の“34Z”よりはかなりロングノーズにしている! プラットフォームが流用(たぶん)であることを考えれば、これくらいが限界だろ! 日産は頑張った! 日産は死んでなかった! 「スカイライン400R」のエンジン(たぶん)+6MTってのも文句ナシだぜ! そんなコーフンを覚えたのです。
お天道さまの下でどう見えるか?
私は27歳の時、“32Z”にコーフンして新車で買っているのですが、その時のコーフンとはまるで違う。32へのコーフンは、「こんなにグラマラスな国産スポーツカーが出るのかぁ!」という進取の気性に富んだもので、「『ポルシェ928』みたいだ。これは和製アグネス・ラムだ!」と思ったのです。当時、5ナンバーベースの初代Zなんて、消えたアイドルくらいに思ってました。
しかし、いま32Zを見ると、なんだか鈍くてキレがない。32Zのチーフデザイナーは、その後長くお付き合いし、自動車デザインのイロハを教えていただいた故・前澤義雄氏でしたが、氏自ら「あれ(32のデザイン)は狙い通りにいかなかった」と、多くを語らなかった。前澤さんはよく「自動車デザインで一番重要なのは、時間的耐久性だ」と言ってたけれど、32Zはそれが少しだけ足りなかったかもしれない。逆に初代Zのデザインの時間的耐久性はケタ外れだった。半世紀後の今、それを思い知っております。
で、遅まきながら横浜のニッサンパビリオンへ行き、実物を見てきました。
期待が大きすぎたせいか、第一印象は「ありゃ?」というものでした。顔がどーもくんに似てることは気にならないけど、全体のフォルムがいまひとつグッとこない。初代Zを思わせる滑らかに流れ落ちるルーフラインが、どこか全体にマッチしていない。このラインを描くなら、やっぱりもうちょっとロングノーズじゃないとイカンかったか……。
いや、それでも悪くないデザインだ。「悪くない」は前澤さんの口癖だったけど、このZも悪くない! 現行「トヨタ・スープラ」はウネウネした曲面がくどすぎて、いまさらながらの和製アグネス・ラムだけど、これなら欲しい! これで湾岸を走って、古き良きスピード熱狂時代(悪しき、でしょうか)を懐かしみたい!
あとはこれを自然光の下、街で偶然見かけてどう感じるかだ。前澤さんも言ってました。「クルマとオンナは自然光の下で見ろ」と。
(文=清水草一/写真=日産自動車、webCG/編集=堀田剛資)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今 2026.7.20 トヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。
-
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く 2026.7.17 アルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。
-
九州・熊本で開催 「Lamborghini Summer Days 2026」で極上なる猛牛の世界観を知る 2026.7.16 ランボルギーニが1泊2日の無料招待制イベント「Lamborghini Summer Days 2026」を、九州・熊本で開催。上天草の自然とともに最新モデルの走りと独自の世界観を味わう特別なツアーの詳細を報告する。
-
スライドドアはいつから? 「日産エルグランド」登場前夜の国産ミニバン史 2026.7.14 間もなく「日産エルグランド」の新型が発売される。これに限らずわが国は多くのブランドが多くのモデルをラインナップするミニバン王国なわけだが、そもそも国産ミニバンはどのようなかたちで始まり、どのような進化を遂げてきたのだろうか。多人数乗車モデルの歴史を解説する。
-
みんなで乗れるアメリカンSUBARU 3列シートSUV「アセント」はどれだけ大きいのか? 2026.7.13 アメリカで生産されているスバルの3列シートSUV「アセント」が、日本でも2026年後半から販売される見込みだ。一体どんな魅力の詰まったクルマなのか、発売を前にその特徴を予習しておこう。
-
NEW
電気自動車の人工的な走行音はどうあるべきか?
2026.7.21あの多田哲哉のクルマQ&AEVの走行時に車内で聞こえてくる人工的な“音”は、本来、どうあるべきなのか? やはり、疑似エンジン音が最適なのか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんの考えを聞いてみた。 -
NEW
アストンマーティン・ヴァンテージS(FR/8AT)【試乗記】
2026.7.21試乗記アストンマーティンの擁するFRスポーツ「ヴァンテージ」が、より高性能な「ヴァンテージS」に進化。よりたくましいエンジンを獲得し、卓越したコーナリング性能に磨きをかけつつ、“優しさ”も身につけた最新モデルの走りを報告する。 -
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。








































