ダイハツ・トールカスタムGターボ(FF/CVT)
これぞ日本のファミリーカー 2020.12.07 試乗記 取り回しのしやすいコンパクトなサイズと、広々とした車内空間で人気を博す「ダイハツ・トール」。今やトヨタグループの量販モデルに成長した小型ハイトワゴンの実力はどれほどのものか? パワフルなターボ車で確かめた。街でよく見るのも納得
いまでこそ、コンパクトSUVの「ロッキー」にダイハツの登録車ナンバーワンの座を奪われてしまったが、2019年の販売では最上位にランクされていたトール。同年の登録車販売ランキングを見ると、ライバルの「スズキ・ソリオ」が4万4488台の19位だったのに対し、トールは2万6736台の32位と、だいぶ水をあけられているように見える。しかし、トヨタにOEM供給する「ルーミー」が9万1650台で7位、同「タンク」が7万4518台で11位にランクイン。この3兄弟を合わせると、販売台数は実にソリオの4倍以上となる。さらに数は少ないものの、実はスバルでも「ジャスティ」として販売しており、その姿を街でよく見かけるのも納得がいく。
2020年5月、トヨタの全販売店で全車種併売化がはじまり、トールのマイナーチェンジを機にタンクは販売が終了し、トヨタ版はルーミーに一本化された。今後はルーミーが小型ハイトワゴンの一強として、ますますその存在感を強めていきそうだ……。が、本家はあくまで製造元であるダイハツのトール。今回はそのなかから、押し出しの強いフロントマスクが特徴の「トールカスタム」を引っ張り出すことにした。
ちなみにトールという車名について、プレスリリースには「北欧神話の雷神Thor(トール)から『力強く頼りがいのある相棒』という意味に加え、Tall=『背が高い』と同音で新ジャンルのトールワゴンであることを表現」とあった。どこかで聞いたことがあると思ったら、同じ日に試乗したボルボのヘッドライトが、Thor(トール)が手に持つT字型のハンマーをモチーフにしたものだった。雷神Thor、自動車業界でにわかに人気である。
2つの顔が選べる
軽ハイトワゴンで数々の人気車種を生んできたダイハツが、ちょうどいいサイズのファミリーカーとして、2016年11月に発売したトール。前述のとおり、2020年9月にマイナーチェンジを実施し、運転支援システムの進化や充実を図ったのに加えて、ダイハツの小型車として初めて電動パーキングブレーキを装着したり、ドアロックやスライドドアの使い勝手を向上させたりしている。足踏み式のパーキングブレーキが苦手な私には、電動パーキングブレーキの採用はうれしいかぎりだ。
ラインナップは、すっきりしたフロントマスクが与えられる標準グレードの「トール」と、大きなメッキグリルでその存在感をアピールするトールカスタムを用意。エンジンは1リッター直列3気筒のターボ(最高出力98PS)と自然吸気(同69PS)を設定。FFではターボと自然吸気が選べる一方、4WDは自然吸気エンジンのみとなる。トランスミッションは全車CVTを採用している。
今回の試乗車は高性能な「トールカスタムGターボ」。押し出しの強さが人気のカスタムだが、どちらかといえば私が苦手なタイプで、個人的にはフレンドリーな印象の標準モデルが好みだ。トールとルーミーは標準グレードが選べるが、スバル版のジャスティではカスタム相当のデザインしか選べないのは、ちょっと寂しい気がする。
よく走るし落ち着いている
運転席に陣取ると、インストゥルメントパネルのデザインが意外にすっきりとしているのが好印象。シンプルで見やすいアナログメーターも好みだ。メーターナセルやダッシュボード、ドアトリムにはステッチ風(!?)の加工が施され、上質に見せる演出も悪くない。運転席の座り心地もまずまずで、ホールド性も十分。ステアリングコラムはチルト調整が可能で、これでテレスコピック調整があれば、文句はないのだが。
さっそく発進すると、1リッターターボが低回転から必要十分なトルクを発生させる。1000rpmあたりでもアクセル操作に対する反応がいいため、ゆるい加減速が連続する街なかでも実に扱いやすい。一方、素早い加速が必要な場面では、アクセルペダルを大きく踏み込むと回転が一気に高まる。ノイズや振動は目立つのだが、期待どおりにスピードが伸びるので、高速道路の合流や追い越しなどの場面でもストレスを感じることはないだろう。
全高1735mmと背が高いクルマだけに、乗り心地や揺れが心配だったが、実際に運転してみると、多少タイヤにゴロゴロした感触があるものの、乗り心地そのものはマイルドで、見た目から想像するほどロールやピッチングの動きも大きくない。一般道を走らせるかぎりは満足できる仕上がりである。
使い勝手のよさが魅力
一方、ステアリングの中立付近がややあいまいなこともあって、高速道路を走る場面ではややスタビリティーが不足しているように感じた。利用する場所が街なかメインなら構わないが、頻繁に高速道路を使う人には気になるところかもしれない。
トールのウリである室内の広さは、いい意味であきれるばかりだ。スライドとリクライニングが可能なリアシートは、ややクッションが薄い感じがするが、余裕で足が組めるし、ヘッドスペースも広大。しかも開口が広いスライドドアと低いステップ、そして大型のグリップのおかげで、楽に乗り降りができるのも見逃せないところだ。わが家には80歳を超える母がいるが、ハッチバックの後席でも乗り降りにひと苦労。フロアの高いSUVなど論外で、その点、このトールはよく考えられていて、使い勝手のよさは実に魅力的である。
ラゲッジスペースにはリアシートを使用した状態でも十分な広さが確保され、さらに、リアシートを床下に収納すれば、広くフラットなスペースが現れるのもうれしい点だ。
軽よりも余裕があり、ミニバンよりも手ごろ、そしてSUVよりも乗り降りしやすいトール。日本生まれのファミリーカーは侮れない。
(文=生方 聡/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
ダイハツ・トールカスタムGターボ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3705×1670×1735mm
ホイールベース:2490mm
車重:1110kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:98PS(72kW)/6000rpm
最大トルク:140N・m(14.3kgf・m)/2400-4000rpm
タイヤ:(前)175/55R15 77V/(後)175/55R15 77V(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:16.8km/リッター(WLTCモード)
価格:204万6000円/テスト車=244万4453円
オプション装備:コンフォータブルパック(2万3100円)/パノラマアップグレードパック(4万8400円) ※以下、販売店オプション 9インチプレミアムナビ(24万5652円)/ETC車載器<エントリーモデル>(1万8315円)/カーペットマット<高機能タイプ>(2万8226円)/ドライブレコーダー(3万4760円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:754km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:338.7km
使用燃料:24.5リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:13.8km/リッター(満タン法)/13.5km/リッター(車載燃費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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