フォルクスワーゲン・ティグアンTDI 4MOTION Rライン ブラックスタイル(4WD/7AT)
魅惑の四駆ディーゼル 2021.01.30 試乗記 フォルクスワーゲンのSUV「ティグアン」の特別仕様車「Rライン ブラックスタイル」に試乗。ディーゼルエンジン+4WDのパワートレインと、こだわりのアイテムでコーディネートされた個性的なエクステリアの仕上がりをチェックした。欲張りな私が選ぶなら
これまでフォルクスワーゲンを十数台乗り継いできたが、SUVを所有したことは一度もない。しかし、フォルクスワーゲンの日本での販売実績を見ると、いまやSUVの比率が4割を占め、コンパクトSUVの「Tクロス」が主力の「ゴルフ」に迫る勢いだ。
SUVがブームということもあり、Tクロスに加えて、クロスオーバーSUVの「Tロック」も販売が好調だが、もしフォルクスワーゲンのSUVを1台買うなら、私は日本に導入されているモデルのなかでは最もサイズの大きなティグアンを選ぶ。理由は単純で、ディーゼルエンジンと4WDの組み合わせが選べるのが、唯一ティグアンだからだ。
2017年1月に日本に導入された現行型のティグアンは、発売当初は1.4リッター直列4気筒ターボのガソリンエンジン+前輪駆動だけの展開だった。SUVといっても、いまや主流はFF仕様で、価格が低く抑えられ、手軽に乗れるのも人気の秘密である。
しかし、「せっかく買うなら4WD」というのが私の本音。さらに可能なら、燃費が良くて走りが力強いディーゼルを選びたい。そんな期待に応えるように、2018年8月に、2リッター直列4気筒ディーゼルターボを積み、「4MOTION」と呼ばれる4WDを採用するティグアンTDI 4MOTIONが追加された。まさに待ち望んだ仕様である。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
150PSの2リッターTDIを搭載
フォルクスワーゲンではディーゼルターボエンジンを「TDI」と呼ぶ。日本でも「パサート」を皮切りに、ティグアン、「ゴルフトゥーラン」、ゴルフ、さらにTロックへとTDI搭載モデルを拡大してきた。
いずれも2リッターのTDIだが、パサートシリーズが最高出力190PS、最大トルク400N・mのハイパワー仕様であるのに対し、他は同150PS、同340N・mと多少控えめな仕様を搭載している。
ティグアンの場合は、この150PS仕様の2.0 TDIエンジンに、デュアルクラッチギアボックスの7段DSGが組み合わされる。4WDの4MOTIONは、FFをベースに必要に応じて電子制御油圧多板クラッチの「ハルデックスカップリング」により後輪にトルクを伝達するタイプ。エンジン負荷が低い場合やアクセルオフの状況ではリアアクスルを駆動系から切り離し、前輪だけを駆動することで燃料消費を抑えるといった配慮もうれしい。
さらにティグアンの場合、走行状況にあわせて「オンロードモード」「スノーモード」「オフロードモード」「オフロードカスタムモード」の4モードが選べる「4MOTIONアクティブコントロールスイッチ」が搭載され、悪路やグリップの低い路面で4WDの効果を最大限に生かす工夫がなされている。
マイナーチェンジ前のお買い得モデル
試乗したのは「ティグアンTDI 4MOTION Rライン ブラックスタイル」という名の特別仕様車。実はドイツ本国では2020年7月にマイナーチェンジモデルが発表されており、日本でも近々新しいモデルが導入されるはずだ。そんな事情もあって、装備が充実した特別仕様車がいくつか販売されており、このブラックスタイルもそのひとつである。
スポーティーなデザインが魅力のRラインをベースに、エクステリアのクロームパーツやアルミホイールなどをブラックペイントに置き換えることで、クールで力強い印象に仕上げたのが特徴だ。
ボディーカラーは、ディープブラックパールエフェクトと有償色オリックスホワイトマザーオブパールエフェクト(6万6000円)の2色が用意され、今回の試乗車は後者。価格はベースモデルの550万9000円に対し、わずか3万1000円高の554万円にとどめられた。Rラインの精悍(せいかん)なイメージをさらに際立たせたRライン ブラックスタイルがこの価格で手に入るのは見逃せないだろう。
今回は試乗会での短時間のドライブだったが、クリーンディーゼルを積むティグアンは、動き出しから力強く、低回転からトルクの厚さを実感できる仕上がりだ。低速では加速時に独特のエンジン音が耳に届くが、40km/hを超えたあたりからはロードノイズに紛れて、ほとんど気にならなくなる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
高速燃費は20km/リッター超え
実用域でのトルクが充実しているこのディーゼルエンジンは、平たんな道は言うまでもなく、山道の登りでも、1730kgのやや重たいボディーを軽々と加速させてくれる。いざという場面では、アクセルペダルを深く踏み込むことで4500rpmあたりまで加速の勢いが続く。もちろん、高速道路の合流や追い越しの場面でもたつくこともない。しかも、4WDの4MOTIONだけに、ホイールスピンや挙動が乱されることなく、安定したまま加速するのがいい。
7速、100km/hのエンジン回転数は1650rpmと低く抑えられ、別の機会にチェックした高速燃費は20km/リッター超えと実に効率的だ。高速の直進安定性も優れ、フラット感もまずまずである。
唯一の弱点が、目地段差を越えたときにショックを伝えてくること。標準モデルなら電子制御ダンパーのDCC(アダプティブシャシーコントロール)を選ぶことができるのだが、この特別仕様車には装着されてないのが惜しいところだ。
その点、後日追加された「Rライン ブラックスタイル ディナウディオパッケージ」なら、DCCが標準装着されるとともに、デンマークのハイエンドオーディオブランドとして有名なディナウディオと共同開発したプレミアムサウンドシステムが採用されるだけに、エキストラを払う価値はありそうだ。
そうした一方で、マイナーチェンジ後のティグアンにも興味津々である。ティグアンTDI 4MOTIONを狙っている人にとっては、悩ましい日々がしばらく続きそうである。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ティグアンTDI 4MOTION Rライン ブラックスタイル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4500×1860×1675mm
ホイールベース:2675mm
車重:1730kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150PS(110kW)/3500-4000rpm
最大トルク:340N・m(34.7kgf・m)/1750-3000rpm
タイヤ:(前)255/45R19 100V/(後)255/45R19 100V(ピレリ・スコーピオン ヴェルデ)
燃費:17.2km/リッター(JC08モード)
価格:554万円/テスト車=566万6500円
オプション装備:ボディーカラー<オリックスホワイトマザーオブパールエフェクト>(6万6000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアムクリーン>(6万0500円)
テスト車の年式:2020年型
テスト車の走行距離:3380km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
アウディA6 TDIクワトロ150kW(4WD/7AT)【試乗記】 2026.8.5 歴史的にも車格的にも、アウディの中核に位置している「A6」。その最新モデルが日本に導入された。往年の「100」から数えて9代目となる新型は、いかなる走りを備えているのか? 既存の車種とは一味違う、新時代のアウディのドライブフィールを報告する。
-
ホンダ・スーパーONE(FWD)【試乗記】 2026.8.4 ホンダのスポーツハッチバック電気自動車「スーパーONE」がいよいよ公道を走り始めた。その愛らしいスタイリングと走りの楽しさはすでに各所で報告されているが、多くの方が不安に感じているのは“距離”に関してに違いない。幾度かの経路充電を挟みつつ300km余りをドライブした。
-
MINIクーパーSEポール・スミスエディション(FWD)【試乗記】 2026.8.3 人気のプレミアムコンパクト「MINI」に、特別なデザインが魅力の「ポール・スミスエディション」が登場。著名なファッションブランドがコーディネートしたMINIは、クルマに疎い人も、ブランドに疎い人も魅了する、説得力のある装いの一台に仕上がっていた。
-
トヨタRAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】 2026.8.1 いまやトヨタの最量販モデルへと上り詰めた「RAV4」の6代目モデルが登場。もちろんトヨタにとっては自信作のはずだが、後を追うライバル勢も着々と進化しており、カスタマーのチェックの目は厳しくなるばかりだ。国内向けでは最廉価の「アドベンチャー」でその仕上がりを試した。
-
ビモータKB998リミニ(6MT)【レビュー】 2026.7.31 ビモータのスーパースポーツ「KB998リミニ」にサーキットで試乗! イタリア職人の手によるフレームに、カワサキの強心臓を搭載した一台は、いかなる走りを見せてくれるのか? クローズドコースだからこそ体験できたマシンの真価に迫る。
-
NEW
日本メーカーは猛省せよ! 軽スーパーハイトワゴン初のEV「BYDラッコ」誕生の衝撃
2026.8.7デイリーコラムBYDが新型軽EV「ラッコ」を日本に導入! 軽スーパーハイトワゴンという人気ジャンル初のEVが、日本ではなく中国のメーカーから出てきたことを、私たちはどう考えるべきなのか。コスパの話にとどまらない、BYDラッコの真の衝撃について考えた。 -
NEW
スズキDR-Z4SM(5MT)【レビュー】
2026.8.7試乗記スズキ久々のスーパーモタードである「DR-Z4SM」に試乗! 最新の400cc級デュアルパーパスモデルをベースに、タイヤを17インチ化してオンロードでの機動性を突き詰めた一台は、今どき珍しいほどにアグレッシブで、強烈な個性を放つマシンに仕上がっていた。 -
NEW
おなじみの放談をLIVEで配信! 「あの多田哲哉のクルマQ&A」公開収録のお知らせ
2026.8.6From Our Staff元トヨタの多田哲哉さんが、自動車に関するさまざまな疑問・質問に答える「あの多田哲哉のクルマQ&A」。その貴重な話がLIVEで聞けるようになりました。参加希望者は、ぜひ概要をご覧ください。 -
補助金効果で爆売れ 納車が長期化する「ホンダ・スーパーONE」に代わるおススメのBEVは?
2026.8.6デイリーコラム場合によっては軽規格の電気自動車(BEV)「ホンダN-ONE e:」よりも安く乗れるとネット界隈で話題の「スーパーONE」。ただし、納車に時間かかると肝心の補助金が……。と、そんな人気のスーパーONEに代わるBEVを下町の中古車評論家がご紹介。 -
第973回:静かになりすぎたクルマと「聴かせて、聴かせて隊」に思うこと
2026.8.6マッキナ あらモーダ!最近イタリアでよく見かけるという、道行くスポーツカーやスーパーカーのドライバーに、豪快なエキゾーストサウンドをせがむ若者の姿。彼らの存在は静かになりすぎた四輪車に対するアンチテーゼか? 現地在住の大矢アキオが考察する。 -
BYDシーライオン6(後編)
2026.8.6あの多田哲哉の自動車放談ちまたで話題のBYDは、コストパフォーマンスが高いだけのブランドなのか? プラグインハイブリッドのSUV「シーライオン6」に試乗した多田哲哉さんは、これらのモデルを迎え撃つ日本のメーカーに対して警鐘を鳴らす。



















































